041 身近なようで実は全然遠かったぁ

文字数 1,690文字

「アタシだって知らな~い」

「ここで、そんな風に出ちまうのかよ女子が! ……やっぱヴォロプも思いっきり真っ只中の女子だったんだなっ、それもタチが悪すぎだよなぁ」

「何が言いたいのかわからないわ~。ただアタシが帰り着くまでに、心配で族母長たちも騙されたことを怒る気力が失せるだろうし、また行けなんて言わないはずだし」

「……それ、地獄へ殞ちるパターンだぞ。オレが実体験者だしっ」

「知らないけど~。視察へ出るべき適任者はほかにいるもの。そうなれば、二人で今年のレギナを名告れて嬉しいわ。だから悪いんだけど、アタシを探し始めてるデウツクランの衛士たちも、テルミの敵になっちゃうかも」

「ガチかよっ……てか、わかり難い敵よりはマシだけどな」

「ちなみにデウツクランは、貴族と民衆の代表による寡頭合議制の共和国だから王様はいないわよ。王制だったら、家柄だけで上級の衛士や騎士になってるフォ~が、アタシの捜索責任者を命じられる場合が多いから、テルミも楽だったのにね~」

「……楽なんて、端から頭にないけどな」

「とりあえず、乱暴されるわけじゃないから大丈夫よ。何せボムバーナ相手だもの、見つかっても、戻って欲しいと美味しいエサや話を並べ立てて、つかず離れずで、平に平にお願いされ続けるだけだろうしぃ」

「けど、そのウザ苦しい状態を引きずって帰れば、失敗を激怒られちまうわけだろ? まぁ、こっちも大丈夫だ、追う気が失せる程度に痛めつけてやるまでだしな」

「頼もしいわねぇ……けどテルミこそ、その満満な自信はどこからきちゃうわけ? 見た目から厳正に判断しちゃうと、アタシの方がテルミより強いんじゃないかしらぁ」

 嬉嬉としたヴォロプの口調に、照壬は無論カチンときたものの、その(あて)やかな後ろつきを見なおさざるを得ず、口調に見合うだけのフィジカル・ストレングスも推し量れてくる。 
 
「……そりゃ助かるな、ますます自信が満ち満ちてきちまう。何せオレの任務は、あくまでヴェロプを無事に送り届けることだから」

「……何が言いたいのかしらぁ?」

「いざとなっても担いで逃げられないから、難儀さに先が思いやられていたんだけど、オレより強いなら守るくらい楽勝だな。もはや、スーパー銭湯の広大な湯船で、個人メドレーの練習でもする気持でいてくれ」

「メドレーってメイ奴隷のこと? スーパーはスーパーマンのスーパーを言ってるわけ?」

「おぉっ、スーパーマンは大当たり~。スーパーは

、程度が超えてる意味だ。てか、それもディスロケーターがこの世界に入れた言葉なのか?」

「オォッ、テルミも大当たり~」

「けどメイドレイって、もしやメイドと奴隷の合成語かよ? 奴隷にメイドの格好をさせるみたいな? それを言ったのは間違いなくゲスヲタだ、それ、そう昔のことじゃないだろ?」

「どっちもディスロケーターが言い出したんだと思うけど、詳しくは知らないわ。てか、話がスーパー逸れちゃってるぅ。アタシはテルミの自信の根拠を聞いてたんだけど~」

までオレの口癖が感染(うつ)っちまってるぞ。けどそっか、それでツリーマンとも言ったわけだな? じゃぁリザードマンやマーマンや、シャーマンも通じるのかな?」

「……通じるけど、それが何なの?」

「そうなると起源や年代的な整合性がとれない気がする……てか、人魚族はそもそもいなかったよな。シャーマンも、シャムだけでインチキ(まじな)い師の意味があったと思うし……」

「……会話から自問自答でスーパ~逸れていくのも、ブツブツ口に出すのもやめてちょうだいっ。溢れる疑問が纏まろうと、そんなことまで答えられないからアタシ」

 呆れ様で口舌つヴォロプをなおざりにしてしまうほど、照壬も、この世界の成り立ちに関わりそうな何かがひらめきかけていた。
 だが、それを、たぐり寄せようとすればするだけ遠退いていく──。

「……ムリだ~、オレの知識量では疑問がブッ散らかるだけで、ここが身近に溢れて知ったつもりでいたような異世界とは、やっぱ違うとしか判断できないっ。……せめて『ファンタジー事典』と『幻想動物図鑑』だけでも、図書館でもっとガチ読みしとくんだったなぁ……」
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登場人物紹介

名前:照壬慧斗(てるみ・けいと) 祖父に躾‐育てられたお祖父ちゃんコ 一見至ってフツウの高一だがオトナびていると言うより発想からして老けているカンジ なので、どうせなるようにかなりゃしないからと人間関係や社会に対して漠然とした恐れがなく、自分が納得できる道のみをマジメに地道にやれるだけ進み続けるタイプの自己中傾向 しかしながら目立たないので浮きもしない、だが浮いたヤカラの邪魔が入ると途端にとんでもなく脱線してしまう危うさにも気づけずにきた大甘ちゃん……

名前:ヴォロプテュロス=フワム・ケールブロム(愛称:ヴォロプ) 本年度のレギナ・ルテ・ヴヴ

当世界きっての鬼ヤバ存在の一つである大量破壊人間‐ボムバーナ ロマリア国の西部ヴヴ・トゥプルス火山の南麓に位置するフワム半島出身 

半島自体が村で、村の子供が義務的に完全習得しなければならない必須教育を主席修了した女子をレギナ・ルテ・ヴヴと呼び、その年の村の顔役として各国に招かれる言わばこの世界のミスコンクイーンみたいなモノ



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