059 青いイナズマが悪を攻める↯ゲッチュ.
文字数 1,955文字
ヴォロプが照察したとおり、ヴォロプの出る幕もなくだしぬき、電光石火でケリをつけてしまいたい照壬だった。
けれども、ノキオ面をしっかり顔に馴じませてカプトのフードも被り、人とバレないよう両手に泥を塗った上で、лсДに青い銃弾を装填している間にもヴォロプが追い着いて来てしまう。
また、それを認識した時点で照壬は追い越されるばかりか、手もなくヴォロプは悪党たちの進路に立ちはだかっていた。
「……ガチか~。ったく、何でこんな時だけ女子を出さないかなぁ……」
ヴォロプが進行を止めたのは大型の荷車だった。まさしくトラックサイズ。
その上に、直方体をしたコンテナよりは小さい木箱が幾つも積まれていて、一つの面には扉があり、ヴォロプが先ほど視認した反射光の輝きは、そこに付く小窓に嵌められた鉄格子だとも見て取れる。
かてて加えて、その頑丈さのみが取り得といった木箱檻と、それらを積んだ四輪の荷車を、鎖につながれムチ打たれながら牽かされていたのが、それまでは自らがその檻に押し込められていた誘拐被害者たちだったものだから、ヴォロプも照壬もほぼ同時点でブチギレていた。
「……信じらんない! ただじゃ済まないと思いなさいよぉっ」
「何だぁおまえ、俺たちが何者だかわかってんのかぁ? まさかと思うが、自分から商品になりに来たってか~」
ヴォロプは掴みとった鬘を脇の草蔭へとたたきつけ、腹の底から怒号を上げる。
「何言ってんの、このドフォ~どもっ。もうこのアタシを忘れたわけ!」
「げ! おまえ、あのボムバーナかっ……な、何なんだその頭?」
「やかましいの! おまえたちに怒髪天を衝きすぎてぬけちゃったとでも言えば納得するわけっ? この酬 いはアタシのムチで受けてもらうからっ」
ヴォロプは革鞭もたたきつけるように振るって、ビッチン! と地面を鳴らす。
照壬も、ブチギレているだけに冷酷さを抑制できない。
一見冷静に赤い銃弾へと装填しなおしたあとは「ヒャヒャヒャ~ッ」と、自分でもわけのわからぬ奇声を発して草中から注目を集め、荷車の前端に腰掛けている分、被害者たちより頭一つぬき出した悪人の片耳を狙って銃弾を発射──。
銃弾は、二人並んで座る右側の悪党の右耳たぶを吹き飛ばして炸裂し、左側の悪党寄りに逸れてから、そのスグ後ろに積まれた空の木箱檻二つを粉砕した。
その、ガガーン! という大音響は、荷車の後部で居眠りをしていた三人目を跳ね起こさせる。
目を丸くした上に白黒させた三人目が、前へと顔を覗かせたところを、空かさず照壬は、そいつの右耳にも真鍮弾を見舞い──耳介を貫き大穴を開けてやった。
「しゃがんでみんな! 助けに来たの、大丈夫だから言うこと聞いてっ」
ヴォロプの呼びかけに、ただちに従ったのは人素族の女子二人のみ。
あとの、人虎族と人犬族二人、人牛族二人の女子たちは、ムチ打たれて、重い荷車を牽引し続ける内に、我をほとんど忘れてしまっているようなニブい反応を茫茫と見せていた。
それを察した照壬は、さらに真鍮弾を装填しながら草を掻き分け荷車へ狙い寄り、前部の左側で立ち上がろうとする悪党の右脹脛を、掠めるように撃って転げ落とす。
右側の悪党には、剣としてлсДを振るう。先端を渾身でブチかまし、その左臑をたたき砕いてやる。
「わ、わぁ~またツリーマン! こんなトコまで追って来やがったのかぁ」
ノキオ面をしっかりと目に入れ、新たな驚駭に戦慄して荷車から飛び下り、逃げを決め込んだ三人目を、照壬はその前方へлсДを投げつけ、地面に刺し立てて制した。
三人目は立ち止まらざるを得ないと同時に、手ぶらである自分と目の前のлсДが武器になることを、照壬の思惑どおりに覚知する。
が当然、どれだけ必死に抜こうとしたところで、照壬の手から離れたлсДはビクとも動きはしない。
そこへ、視界を揺らさぬ小股走りで急迫した照壬は、腰の木剣で、抜き様の一撃を三人目の悪党の右側頭部へたたき込む。
木剣は振りぬかずに、打ちつけて止めたため、頭蓋内で脳が充分に揺れ動き、脳震盪での卒倒が一丁あがり。
照壬はлсДを抜きとるだけではなしに、返す刀で容赦なく、逃げられないよう悪党の右臑の骨までたたき折っておき、息吐く間もなく二刀流の押っとり刀で荷車前方へと引き返す。
脹脛を撃っておいた悪党は、ちょうどヴォロプが制圧し終えていたために、照壬はそのまま最初に臑骨を折った悪党へ、決定打を喰らわせに馳せ向かう。
その悪党は、左脚の痛みに堪えながら、台車前部に手放していた叱り杖に手を伸ばそうとしていた。
これまで、荷車を牽かせていた女子たちを御 するために振るっていたその棒状の鞭を、ヴォロプにまで打ちつけられたが最後、何が起こってしまうかなど予想もつかない。
けれども、ノキオ面をしっかり顔に馴じませてカプトのフードも被り、人とバレないよう両手に泥を塗った上で、лсДに青い銃弾を装填している間にもヴォロプが追い着いて来てしまう。
また、それを認識した時点で照壬は追い越されるばかりか、手もなくヴォロプは悪党たちの進路に立ちはだかっていた。
「……ガチか~。ったく、何でこんな時だけ女子を出さないかなぁ……」
ヴォロプが進行を止めたのは大型の荷車だった。まさしくトラックサイズ。
その上に、直方体をしたコンテナよりは小さい木箱が幾つも積まれていて、一つの面には扉があり、ヴォロプが先ほど視認した反射光の輝きは、そこに付く小窓に嵌められた鉄格子だとも見て取れる。
かてて加えて、その頑丈さのみが取り得といった木箱檻と、それらを積んだ四輪の荷車を、鎖につながれムチ打たれながら牽かされていたのが、それまでは自らがその檻に押し込められていた誘拐被害者たちだったものだから、ヴォロプも照壬もほぼ同時点でブチギレていた。
「……信じらんない! ただじゃ済まないと思いなさいよぉっ」
「何だぁおまえ、俺たちが何者だかわかってんのかぁ? まさかと思うが、自分から商品になりに来たってか~」
ヴォロプは掴みとった鬘を脇の草蔭へとたたきつけ、腹の底から怒号を上げる。
「何言ってんの、このドフォ~どもっ。もうこのアタシを忘れたわけ!」
「げ! おまえ、あのボムバーナかっ……な、何なんだその頭?」
「やかましいの! おまえたちに怒髪天を衝きすぎてぬけちゃったとでも言えば納得するわけっ? この
ヴォロプは革鞭もたたきつけるように振るって、ビッチン! と地面を鳴らす。
照壬も、ブチギレているだけに冷酷さを抑制できない。
一見冷静に赤い銃弾へと装填しなおしたあとは「ヒャヒャヒャ~ッ」と、自分でもわけのわからぬ奇声を発して草中から注目を集め、荷車の前端に腰掛けている分、被害者たちより頭一つぬき出した悪人の片耳を狙って銃弾を発射──。
銃弾は、二人並んで座る右側の悪党の右耳たぶを吹き飛ばして炸裂し、左側の悪党寄りに逸れてから、そのスグ後ろに積まれた空の木箱檻二つを粉砕した。
その、ガガーン! という大音響は、荷車の後部で居眠りをしていた三人目を跳ね起こさせる。
目を丸くした上に白黒させた三人目が、前へと顔を覗かせたところを、空かさず照壬は、そいつの右耳にも真鍮弾を見舞い──耳介を貫き大穴を開けてやった。
「しゃがんでみんな! 助けに来たの、大丈夫だから言うこと聞いてっ」
ヴォロプの呼びかけに、ただちに従ったのは人素族の女子二人のみ。
あとの、人虎族と人犬族二人、人牛族二人の女子たちは、ムチ打たれて、重い荷車を牽引し続ける内に、我をほとんど忘れてしまっているようなニブい反応を茫茫と見せていた。
それを察した照壬は、さらに真鍮弾を装填しながら草を掻き分け荷車へ狙い寄り、前部の左側で立ち上がろうとする悪党の右脹脛を、掠めるように撃って転げ落とす。
右側の悪党には、剣としてлсДを振るう。先端を渾身でブチかまし、その左臑をたたき砕いてやる。
「わ、わぁ~またツリーマン! こんなトコまで追って来やがったのかぁ」
ノキオ面をしっかりと目に入れ、新たな驚駭に戦慄して荷車から飛び下り、逃げを決め込んだ三人目を、照壬はその前方へлсДを投げつけ、地面に刺し立てて制した。
三人目は立ち止まらざるを得ないと同時に、手ぶらである自分と目の前のлсДが武器になることを、照壬の思惑どおりに覚知する。
が当然、どれだけ必死に抜こうとしたところで、照壬の手から離れたлсДはビクとも動きはしない。
そこへ、視界を揺らさぬ小股走りで急迫した照壬は、腰の木剣で、抜き様の一撃を三人目の悪党の右側頭部へたたき込む。
木剣は振りぬかずに、打ちつけて止めたため、頭蓋内で脳が充分に揺れ動き、脳震盪での卒倒が一丁あがり。
照壬はлсДを抜きとるだけではなしに、返す刀で容赦なく、逃げられないよう悪党の右臑の骨までたたき折っておき、息吐く間もなく二刀流の押っとり刀で荷車前方へと引き返す。
脹脛を撃っておいた悪党は、ちょうどヴォロプが制圧し終えていたために、照壬はそのまま最初に臑骨を折った悪党へ、決定打を喰らわせに馳せ向かう。
その悪党は、左脚の痛みに堪えながら、台車前部に手放していた叱り杖に手を伸ばそうとしていた。
これまで、荷車を牽かせていた女子たちを