037 世界起源神話には創造型と進化型がありまして
文字数 1,941文字
道中、出交わす人もなかったために、前を行くヴォロプから声を低めることもナシに、根堀り葉掘りの質問攻めを受けまくる照壬だった。
しかしながら……あまりに自分について語れる事柄の少なさから、照壬は呆気なく言葉に詰まる。
そればかりか、何げに我 もがボッキリ折れて、黙りこくるしかなくなるという不体裁までを、早早にヴォロプへ晒すハメに陥ってしまう。
「どうしちゃったのぉテルミ? 背後から、なんだか絶望感みたいなのがヒッシヒシ伝わってきてるんだけど、もうそんなに疲れたわけ~?」
「……てか、地獄のキブさ苦 さをリアルに味わいきった末に、オレって、つくづく薄っペラくて底の浅い人間なんだと、我 ながら呆れ入っていただけ」
「エ~ッ、一体どうして? そんな話をした覚えないんだけど」
「つまりブッチャケ、ヴォロプみたいな女子が喰いつけるネタが、オレ自体には全くないつまらん奴なんだってな、ガチに……」
「そうじゃないったらぁ。話ベタなのかもとは最初から思ってたけど、テルミが話を広げようとしないから、単にアタシがあれこれ突っ突いて聞くことになっちゃっただけじゃないの」
「てか、そもそも女子とは、こんなに話したこともなければ、一緒にいたことすらないんだよなオレ……」
「そうなの? おもしろいじゃない、そう言う話をしてくれたらいいのにぃ」
「まぁ大前提として、ヴォロプみたいな女子は、遥か遠く、海を越えた聖なる森にも現れるかどうかだったからな。どう広げるのかもわからないな、会話なんて」
「聞かれたら、聞き返せばいいだけなの。おしゃべりの基本でしょ基本っ」
「いいのかよ聞いても? それこそ、エ~ッだな。オレのいた世界じゃ、気安く女子の個人情報に立ち入ろうとすると、
「……世界が違うと違うのねぇ、いろいろ」
「そもそも、女子と対等に会話ができるのは、女子からの人気を、男どもも腐れつつ認めざるを得ないイケ野郎だけなんだよな……」
だしぬけに脱力感までが照壬を襲う。
両腕にも怠さを覚えてしまい、木剣を荷物に差して、幾分楽で男ぶりも上がりそうな肩に担ぐ飛脚スタイルへ持ち替える。
「よくわからないけど、なんだか、
「何だそれ? 確かにささくれ立ってはいたけどな、勘違いした奴ばっかで」
「預言者を自称する世界普遍教徒たちが占拠して、独立国家と言い張ってる小山のことよ。そこの修道士と修道女が、テルミが言ったみたくギッチギチなカンジらしいわ」
「フ~ン……それって名称的からして新興カルト、てか歴史が浅くて、ちゃんとした神様を崇めている宗教じゃないニオイがするな」
「歴史は浅いけど、崇めているのはトリウネで、逆に猛烈なの」
「……ぁあ、自身がむしろ神的な存在になる予知能力者じゃなくて、キリスト教とかで言われるような預言者ってことなのかな?」
「預言者って言うのはね、神から予言めいた話を聞くこともあるんだろうけど、あくまでも
「そりゃ、ささくれ立ちそうだよなぁ……ヴォロプが崇めている神様は何て言うんだ? この世界はイチイチ神がいて、どこででもウジャラケてるカンジだけど」
「崇めてなんかいないけど~、ロマリアの主神もトリウネだから、大きなお祭りはトリウネに感謝するモノになっちゃうわねぇ──ア~ッ、きっとテルミの国の神もトリウネなのよ」
「何で? そんな神、知らないぞオレ。マイナーだっただけかも知れんけど」
「呼び方は違うのかも知れないけど。だから言葉が通じるんだわ、通じないのはトリウネが教えなかった言葉で、土地土地で穴埋めするしかなかった方言みたいなモノなんじゃない?」
「どう言うことだ? こっちは神様が言葉を教えるのかよ?」
「そうなってるの神話だと。だから、ここデウツクランだけじゃなく、北の海まで広がるネデルラウンや北東のノーゼ、東南のアーゼン、西のシュワイッツァーとさらに西の大国ガウルまで、言葉が大体通じちゃうぅ」
「……そんな成り立ち具合なのかよ、この世界って?」
「だって主神が違う国は、そう遠くなくても全然違う言葉だもの。だけど、方言は同じだったり似てたりしちゃうから、アタシのひらめきは大当たりかも~」
その無邪気な仮説に対する反論は、広長舌がふるえそうな勢いで溢れてくるものの、女子への否定発言は、百害どころか億害あって一利なしとも照壬の身に沁みついている。
なので照壬は、木剣を担ぎ握る両手に力を入れてグッとガマン。脱力感もいささか回復することになった。
しかしながら……あまりに自分について語れる事柄の少なさから、照壬は呆気なく言葉に詰まる。
そればかりか、何げに
「どうしちゃったのぉテルミ? 背後から、なんだか絶望感みたいなのがヒッシヒシ伝わってきてるんだけど、もうそんなに疲れたわけ~?」
「……てか、地獄のキブさ
「エ~ッ、一体どうして? そんな話をした覚えないんだけど」
「つまりブッチャケ、ヴォロプみたいな女子が喰いつけるネタが、オレ自体には全くないつまらん奴なんだってな、ガチに……」
「そうじゃないったらぁ。話ベタなのかもとは最初から思ってたけど、テルミが話を広げようとしないから、単にアタシがあれこれ突っ突いて聞くことになっちゃっただけじゃないの」
「てか、そもそも女子とは、こんなに話したこともなければ、一緒にいたことすらないんだよなオレ……」
「そうなの? おもしろいじゃない、そう言う話をしてくれたらいいのにぃ」
「まぁ大前提として、ヴォロプみたいな女子は、遥か遠く、海を越えた聖なる森にも現れるかどうかだったからな。どう広げるのかもわからないな、会話なんて」
「聞かれたら、聞き返せばいいだけなの。おしゃべりの基本でしょ基本っ」
「いいのかよ聞いても? それこそ、エ~ッだな。オレのいた世界じゃ、気安く女子の個人情報に立ち入ろうとすると、
ゲロキモ~
って、吐き捨てのうち捨てにされる上に、それ以後は顔を合わせるたびにヘンタイあつかいだからな」「……世界が違うと違うのねぇ、いろいろ」
「そもそも、女子と対等に会話ができるのは、女子からの人気を、男どもも腐れつつ認めざるを得ないイケ野郎だけなんだよな……」
だしぬけに脱力感までが照壬を襲う。
両腕にも怠さを覚えてしまい、木剣を荷物に差して、幾分楽で男ぶりも上がりそうな肩に担ぐ飛脚スタイルへ持ち替える。
「よくわからないけど、なんだか、
預言者の詠う丘
みたく、随分とささくれた世界だったのね~?」「何だそれ? 確かにささくれ立ってはいたけどな、勘違いした奴ばっかで」
「預言者を自称する世界普遍教徒たちが占拠して、独立国家と言い張ってる小山のことよ。そこの修道士と修道女が、テルミが言ったみたくギッチギチなカンジらしいわ」
「フ~ン……それって名称的からして新興カルト、てか歴史が浅くて、ちゃんとした神様を崇めている宗教じゃないニオイがするな」
「歴史は浅いけど、崇めているのはトリウネで、逆に猛烈なの」
「……ぁあ、自身がむしろ神的な存在になる予知能力者じゃなくて、キリスト教とかで言われるような預言者ってことなのかな?」
「預言者って言うのはね、神から予言めいた話を聞くこともあるんだろうけど、あくまでも
言葉を預かる
意味で、神によく話しかけてもらえる人を指すのよ。勿論とんだ勘違いでしょうけど」「そりゃ、ささくれ立ちそうだよなぁ……ヴォロプが崇めている神様は何て言うんだ? この世界はイチイチ神がいて、どこででもウジャラケてるカンジだけど」
「崇めてなんかいないけど~、ロマリアの主神もトリウネだから、大きなお祭りはトリウネに感謝するモノになっちゃうわねぇ──ア~ッ、きっとテルミの国の神もトリウネなのよ」
「何で? そんな神、知らないぞオレ。マイナーだっただけかも知れんけど」
「呼び方は違うのかも知れないけど。だから言葉が通じるんだわ、通じないのはトリウネが教えなかった言葉で、土地土地で穴埋めするしかなかった方言みたいなモノなんじゃない?」
「どう言うことだ? こっちは神様が言葉を教えるのかよ?」
「そうなってるの神話だと。だから、ここデウツクランだけじゃなく、北の海まで広がるネデルラウンや北東のノーゼ、東南のアーゼン、西のシュワイッツァーとさらに西の大国ガウルまで、言葉が大体通じちゃうぅ」
「……そんな成り立ち具合なのかよ、この世界って?」
「だって主神が違う国は、そう遠くなくても全然違う言葉だもの。だけど、方言は同じだったり似てたりしちゃうから、アタシのひらめきは大当たりかも~」
その無邪気な仮説に対する反論は、広長舌がふるえそうな勢いで溢れてくるものの、女子への否定発言は、百害どころか億害あって一利なしとも照壬の身に沁みついている。
なので照壬は、木剣を担ぎ握る両手に力を入れてグッとガマン。脱力感もいささか回復することになった。