033 けしからん美もまた絶対兵器
文字数 1,586文字
〈……人体は立体形象、二次元を超えた三次元ですので当然でしょう〉
「ん~……てか、そう言うことじゃなくてだな……」
〈それに人族同士の情致や深微は、木であるワタクシに確かなことなど言えません。どのような意向をおもちか、彼女に直接確認してみてはいかがです? もう世界が違うのですから、違うなりゆきにもなるはずではありませんか〉
ノキオの説き勧めに、照壬はまた目一杯の横目で赤髪女子の姿を探す──。
赤髪女子は今、少し離れた木洩れ陽が射す中で、ムクドリみたく群飛が一生命体のように形を変えながら飛び巡るシジミチョウよりも小さやかな群れ舞うチョウを追っていた。
燃え上がっているのではないかと錯覚する赤く波立った髪だけでなく、たわわなバストまで揺らしながら、実にうらうらと。
「……てか、何なんだよ大体あの服装? ほぼ半ケツ丸出しじゃないかよ。一体どんな神経してりゃ、恥ずかしげもなくああしていられるんだか? てか、ノキオが抱えて走って来た時から、あんなエロヤバな格好だったかぁ?」
〈あぁ、それはワタクシの分身を燃やしていた炎を消そうとして、上に羽織っていた長衣を焼いてしまったのです〉
「そう、だったのか……」
見かけに寄らず、赤髪女子からまともな分別が弁えられる気丈さをカンジた照壬は、ささやかながらも怒涛の勢いで安堵せずにはいられない。
〈何ぶん薄い生地でしたから。そして、夏ゾーネでも海辺で暮らす人族の服装は、泳ぎ易さが基本となるので、恥らう基準も違うのでしょう〉
「フ~ン。まあ、良識女子なんだな存外。確かにオレのいた世界とは違うかもな……」
照壬が見る目を変えかけたまさにその時、赤髪女子は自身に着される視線に気づいて立ち止まり、照壬へ向きなおって、すこびた薄笑みでアームアキンボー・ポーズをとる。
「なぁに? もしかしてアタシに見とれちゃってたのかしら~、イヤらしいのジロリンと」
そのちょうらかしに、指弾されたかのごとく視線をノキオへ戻す照壬だった。
「ったく。前言はほぼ撤回なっ、やっぱ同じだ女子ってのはどの世界も」
〈そうなのですね。なるほどなるほど……〉
照壬は耳を幹から離し、赤髪女子へと完全にふり返って言い放つ。
「ノキオの分身のためにアウターを焼いちまったそうだな。代わりとお礼に、オレの服をやるからそれを着てくれ。あんたみたいな女子に、そんな姿でウロウロされると冷や冷やしてきちまう。オレのいた世界では、極刑に処される重罪だからなっ」
「そうなのぉ? おかしな所から来ちゃったのねあなた」
「まぁな。……それも来たばっかで、おかしくなりそうだっての」
「ねぇ何て名前? アタシはヴォロプテュロス=フワム・ケールブロムよ、これでも今年のレギナ・ルテ・ヴヴなんだからぁ。グレネなディスロケーターでも聖騎士の態度で接してくれないとねっ」
「……だから意味わからないな、さっぱり。オレは照壬だけど、あんたの好きに呼んでくれ、オレもテキトーに呼ばせてもらうから」
「何それ~、テルミってば頭ゴッチゴチ、ロマリア流のこました挨拶も通じないわけぇ?曾 お祖母ちゃんが言ってたとおり、ディスロケーターはエレファス人より厄介ねっ」
「こまし返しだったのかよっ、てか、あんたの名前だか立場だかが長ったらしすぎて聞き取りきれないだけ。オレがいた国は、とにかく短く端折るのが常識だったからな」
「フ~ン。じゃぁ、ヴォロプと呼んでいいわよぉ……テルミってどれくらいなの? なんかアタシより小さいみたいだけど」
長脚な広い一歩でスンスン寄って来るヴォロプは、キワドい身なりがあたたしい腰高さまでを強調するせいもあって、もはや照壬の目にも疑いなく自分より長身に見える。
「……てか、何を聞いているんだかな? 歳は一五で身長は一七五チョイ足らずだ。ったく、この上オレよりデカいとなると厄介だな、あんたもいろいろ」
「ん~……てか、そう言うことじゃなくてだな……」
〈それに人族同士の情致や深微は、木であるワタクシに確かなことなど言えません。どのような意向をおもちか、彼女に直接確認してみてはいかがです? もう世界が違うのですから、違うなりゆきにもなるはずではありませんか〉
ノキオの説き勧めに、照壬はまた目一杯の横目で赤髪女子の姿を探す──。
赤髪女子は今、少し離れた木洩れ陽が射す中で、ムクドリみたく群飛が一生命体のように形を変えながら飛び巡るシジミチョウよりも小さやかな群れ舞うチョウを追っていた。
燃え上がっているのではないかと錯覚する赤く波立った髪だけでなく、たわわなバストまで揺らしながら、実にうらうらと。
「……てか、何なんだよ大体あの服装? ほぼ半ケツ丸出しじゃないかよ。一体どんな神経してりゃ、恥ずかしげもなくああしていられるんだか? てか、ノキオが抱えて走って来た時から、あんなエロヤバな格好だったかぁ?」
〈あぁ、それはワタクシの分身を燃やしていた炎を消そうとして、上に羽織っていた長衣を焼いてしまったのです〉
「そう、だったのか……」
見かけに寄らず、赤髪女子からまともな分別が弁えられる気丈さをカンジた照壬は、ささやかながらも怒涛の勢いで安堵せずにはいられない。
〈何ぶん薄い生地でしたから。そして、夏ゾーネでも海辺で暮らす人族の服装は、泳ぎ易さが基本となるので、恥らう基準も違うのでしょう〉
「フ~ン。まあ、良識女子なんだな存外。確かにオレのいた世界とは違うかもな……」
照壬が見る目を変えかけたまさにその時、赤髪女子は自身に着される視線に気づいて立ち止まり、照壬へ向きなおって、すこびた薄笑みでアームアキンボー・ポーズをとる。
「なぁに? もしかしてアタシに見とれちゃってたのかしら~、イヤらしいのジロリンと」
そのちょうらかしに、指弾されたかのごとく視線をノキオへ戻す照壬だった。
「ったく。前言はほぼ撤回なっ、やっぱ同じだ女子ってのはどの世界も」
〈そうなのですね。なるほどなるほど……〉
照壬は耳を幹から離し、赤髪女子へと完全にふり返って言い放つ。
「ノキオの分身のためにアウターを焼いちまったそうだな。代わりとお礼に、オレの服をやるからそれを着てくれ。あんたみたいな女子に、そんな姿でウロウロされると冷や冷やしてきちまう。オレのいた世界では、極刑に処される重罪だからなっ」
「そうなのぉ? おかしな所から来ちゃったのねあなた」
「まぁな。……それも来たばっかで、おかしくなりそうだっての」
「ねぇ何て名前? アタシはヴォロプテュロス=フワム・ケールブロムよ、これでも今年のレギナ・ルテ・ヴヴなんだからぁ。グレネなディスロケーターでも聖騎士の態度で接してくれないとねっ」
「……だから意味わからないな、さっぱり。オレは照壬だけど、あんたの好きに呼んでくれ、オレもテキトーに呼ばせてもらうから」
「何それ~、テルミってば頭ゴッチゴチ、ロマリア流のこました挨拶も通じないわけぇ?
「こまし返しだったのかよっ、てか、あんたの名前だか立場だかが長ったらしすぎて聞き取りきれないだけ。オレがいた国は、とにかく短く端折るのが常識だったからな」
「フ~ン。じゃぁ、ヴォロプと呼んでいいわよぉ……テルミってどれくらいなの? なんかアタシより小さいみたいだけど」
長脚な広い一歩でスンスン寄って来るヴォロプは、キワドい身なりがあたたしい腰高さまでを強調するせいもあって、もはや照壬の目にも疑いなく自分より長身に見える。
「……てか、何を聞いているんだかな? 歳は一五で身長は一七五チョイ足らずだ。ったく、この上オレよりデカいとなると厄介だな、あんたもいろいろ」