004 人生ガチャを気軽に回して遊べる立場からすれば
文字数 1,959文字
「あ~、いるいるそう言う奴。リアクションがないことを相手にされていないとは思わずに、自分が肯定されたって都合好く解釈するだけじゃなく、無視してるとどんどん増長するんだよねぇ。入れてくるツッコみも腕や肩から頭になって力加減も強くなる、だのに暴力を振るってる認識はないときててさ、堪ったもんじゃないよ~」
「いや、あいつは、そんなフリをして認識はありやがるからタチが悪い。髪型やら身に付けている物やらでも最先端を気取っていて、ダサいの、サブいの、使えないのと、一八〇くらいの立端 で上からイチイチ周囲を脅かしてくる。そんなのにチャラチャラ気が向くままの言動をされてみろ、害虫どころの迷惑じゃない、教室にホブゴブが巣喰いだしているようなもんだ」
「アハハ、あの寺井はイヌ顔でもあるからイヌコボかも~」
「……イヌコボ?」
「あ~、いや、ゴブリンと似た小鬼にコボルドって種族があるでしょう? 家や宝を守る小人だったり、イヌの頭をした魔物として描かれるから、人畜有害なら、ボクはイヌコボって分けちゃうだけ」
「イヌコボな、ふ~ん……」
「となれば、あの指神綺は、ギリシャ語で女神を意味するテアなんて愛称の接尾語が付けられてるけど、実態は尻尾もちのフェアリーってトコかなぁ?」
照壬は小首をヒネりつつも点頭した。
「……そ? まあ、その手のことがオレより詳しいなら話が早そうで何よりだ」
「大して詳しくはないんだけどね。そしてボクなんかだと、慧斗みたいな勇者が現れるまで、小鬼の跋扈 ‐狼藉 を看過し続けちゃうんだよねぇ、ブチギレたあとが難儀だもん。勇気じゃなくても勇める気持は重要だし、今もってリアルなLR存在だよ」
「名前の順で席が前後になったのが運の尽きだ。奴から後ろを向いてきて、イチイチ席を立つのも面倒だしシカトしてれば頭をはたきやがるし、一体何様のつもりだかな?」
「アハ、きっとオレ様なんだろうね~、つもりって意識すらなく」
「ま、そんなアホガキまで入れる高校となれば、一気にどうでもよくなったし、そもそもこっちに出て来たくなかったんだ。これで山に帰れるだろうからな、嬉しいくらいだ」
「山? ……確かに山だねぇ、ぽっかり一つだけランドマーク的な。だけど、別に観光地っぽくなってるわけじゃないんだ?」
「……マジでか? まぁ単なる場違いな私有地だからな、ウチのモノでもないし」
「中学までは、こっちとは違って高い建物がない穏和な町で育ったようだけど、でもこの住所だとまだ地方都市の近郊部ってカンジだよね、慧斗の言葉にも訛りがないしさ」
ただ前を見ているにもかかわらず、アレルの口ぶりはその網膜に検索結果が映っているかのよう。
瞳の色までが紫をしたコンタクトレンズ型のディスプレイなどと、はずして見せられては返す言葉に困るため、極自然なスルーを決め込む照壬だった。
「山の周辺には大企業三社の研究施設や工場が並んでいて、同級生は入れ代わり立ち代り半数以上が他県や外国からの転居者だったからな、フツウに標準語だったんだ。社寺絡みの文章書きでもあるせいか祖父サマからして標準語だし……てか、ガチで怖くなるとんでもない検索力だな。あんたWiz級のハッカーなのか?」
「だからあんたはよしてよ~、そんな、とんでもないヤカラじゃないしさ。ボクは、そうだなぁ、言うなればチーター、厳密にはチートユーザーかな? 慧斗たちには難しいズルが限られた範囲でできるだけさ、ボク自身の技術じゃないんで慧斗に教えることもムリだし」
「やっぱ、お坊ちゃまか? 酔狂なわけだな……オレが中学卒業まで厄介になっていたのは、神社を管理する神殿守もしてる祖父サマの住まいで、それが頂上に社が建つ山の中にあるってことだ。てか、元元は超巨大な古墳の可能性があるらしい標高一〇〇メートル程度の鎮守の杜山だからな、山とは言っても険難さなんかない」
「そうなんだ? 通っていた小学校も中学も番地しか違わないから、その山が慧斗の世界の大部分だったわけだね~」
「……ま、そう言えるんだろうな。近所でほとんど事足りて、遠出する必要どころかネット注文からして滅多にしなかったし」
「でも、いい加減にもう狭さをカンジない? だからお祖父さんも慧斗を都心に近いこっちへ出したんじゃないの? 折角の独り暮らしなのに、どうしてこの半端な町なのかは、もう少し踏み込んで調べてみないとわからないんだけどさ」
「……だから母親の実家があるってだけ。母親も親父も健在だけど、どっちも家庭や子育てのために仕事を犠牲にできなかった天職従事者だからな。オレは、物心ついた頃から親父の実家に置き去りで、二人それぞれ北半球と南半球を高くもない給料で飛び廻っている果報者だ。でもって、ここに来てオレにそのシワ寄せが一気に集中しちまったんだろうな」
「いや、あいつは、そんなフリをして認識はありやがるからタチが悪い。髪型やら身に付けている物やらでも最先端を気取っていて、ダサいの、サブいの、使えないのと、一八〇くらいの
「アハハ、あの寺井はイヌ顔でもあるからイヌコボかも~」
「……イヌコボ?」
「あ~、いや、ゴブリンと似た小鬼にコボルドって種族があるでしょう? 家や宝を守る小人だったり、イヌの頭をした魔物として描かれるから、人畜有害なら、ボクはイヌコボって分けちゃうだけ」
「イヌコボな、ふ~ん……」
「となれば、あの指神綺は、ギリシャ語で女神を意味するテアなんて愛称の接尾語が付けられてるけど、実態は尻尾もちのフェアリーってトコかなぁ?」
照壬は小首をヒネりつつも点頭した。
「……そ? まあ、その手のことがオレより詳しいなら話が早そうで何よりだ」
「大して詳しくはないんだけどね。そしてボクなんかだと、慧斗みたいな勇者が現れるまで、小鬼の
「名前の順で席が前後になったのが運の尽きだ。奴から後ろを向いてきて、イチイチ席を立つのも面倒だしシカトしてれば頭をはたきやがるし、一体何様のつもりだかな?」
「アハ、きっとオレ様なんだろうね~、つもりって意識すらなく」
「ま、そんなアホガキまで入れる高校となれば、一気にどうでもよくなったし、そもそもこっちに出て来たくなかったんだ。これで山に帰れるだろうからな、嬉しいくらいだ」
「山? ……確かに山だねぇ、ぽっかり一つだけランドマーク的な。だけど、別に観光地っぽくなってるわけじゃないんだ?」
「……マジでか? まぁ単なる場違いな私有地だからな、ウチのモノでもないし」
「中学までは、こっちとは違って高い建物がない穏和な町で育ったようだけど、でもこの住所だとまだ地方都市の近郊部ってカンジだよね、慧斗の言葉にも訛りがないしさ」
ただ前を見ているにもかかわらず、アレルの口ぶりはその網膜に検索結果が映っているかのよう。
瞳の色までが紫をしたコンタクトレンズ型のディスプレイなどと、はずして見せられては返す言葉に困るため、極自然なスルーを決め込む照壬だった。
「山の周辺には大企業三社の研究施設や工場が並んでいて、同級生は入れ代わり立ち代り半数以上が他県や外国からの転居者だったからな、フツウに標準語だったんだ。社寺絡みの文章書きでもあるせいか祖父サマからして標準語だし……てか、ガチで怖くなるとんでもない検索力だな。あんたWiz級のハッカーなのか?」
「だからあんたはよしてよ~、そんな、とんでもないヤカラじゃないしさ。ボクは、そうだなぁ、言うなればチーター、厳密にはチートユーザーかな? 慧斗たちには難しいズルが限られた範囲でできるだけさ、ボク自身の技術じゃないんで慧斗に教えることもムリだし」
「やっぱ、お坊ちゃまか? 酔狂なわけだな……オレが中学卒業まで厄介になっていたのは、神社を管理する神殿守もしてる祖父サマの住まいで、それが頂上に社が建つ山の中にあるってことだ。てか、元元は超巨大な古墳の可能性があるらしい標高一〇〇メートル程度の鎮守の杜山だからな、山とは言っても険難さなんかない」
「そうなんだ? 通っていた小学校も中学も番地しか違わないから、その山が慧斗の世界の大部分だったわけだね~」
「……ま、そう言えるんだろうな。近所でほとんど事足りて、遠出する必要どころかネット注文からして滅多にしなかったし」
「でも、いい加減にもう狭さをカンジない? だからお祖父さんも慧斗を都心に近いこっちへ出したんじゃないの? 折角の独り暮らしなのに、どうしてこの半端な町なのかは、もう少し踏み込んで調べてみないとわからないんだけどさ」
「……だから母親の実家があるってだけ。母親も親父も健在だけど、どっちも家庭や子育てのために仕事を犠牲にできなかった天職従事者だからな。オレは、物心ついた頃から親父の実家に置き去りで、二人それぞれ北半球と南半球を高くもない給料で飛び廻っている果報者だ。でもって、ここに来てオレにそのシワ寄せが一気に集中しちまったんだろうな」