038 設定を失敗った者の末路はどこだろうと
文字数 1,815文字
「そ? ……ならオレが話すこの言葉も、どこかの訛りってことで、ガチにごまかしきれないもんかな?」
「ン~どうでしょ? 何で? ごまかしきるまでの必要があるのかしら?」
「ノキオとは、オレは山で事故って、自分のことが思い出せない記憶喪失者って設定が無難だと決めたんだけど、そんなフリを完璧にやりとおす自信なんかないから、すんなり納得してもらえる設定の方が助かるんだよな」
「そうねぇ、記憶が喪失しちゃってる人の方が興味をもたれるかも~……そのままのテルミでいいんじゃないの? 言いたいことだけ言って、聞かれて困ったら、困った顔して黙っちゃえば」
「はぁ? それで通用するなら、こうして気苦労なんかしないってのっ」
「でも、それで大概、他所 から来てスグまた他所へ行っちゃう人だと思うもの。アタシと一緒なら、アタシが怪しまれるだけで済むだろうし」
そうまで言われてしまっては、安平も極みな露草色のレンコートに身を包もうが、嫋 かすぎるヴェロプの怪 しからん後ろ姿が途端に目に沁みて、困り顔になっていく照壬だった。
けれども、順直にヴォロプの提案に甘えて黙り込むわけにもいかない。
「てか、どうするんだ? レインコートのフードを被っても、ヴォロプの髪はたちまち目に留まっちまうよなぁ。それ以前にシルエット……てか佇まい、やたらな頭身の高さだけでも、人目を惹くこと間違いなしだしな……」
「まぁね~、ヴヴとは言えレギナだしぃ。でも、赤い髪で背が高いのは、フワム一族だけじゃないもの」
「そうなんだ? ……ほかには?」
「ネデルラウンのヨジウム州民にも多いし、生まれはフリクィヤハ大陸だって言えば、エレファスの血筋かもと怪しんでくれちゃうから。どれも、暴れ出したら止まらない強暴な民族なのが嘆かわしいけど~」
「……赤は赤って言うんだな? 青は? 黄色は黄じゃなく必ず色を付けて言うとか? 黒や緑や白とも言うのかな?」
「広げるのはそこぉ? ……言うわよ、青も黒も緑も白も、黄は黄色じゃなく黄だけど」
「またビミョーだなぁ、変に」
「色を付けて言うのは、やっぱりトリウネが教えなかった色だけね。草や葉の色はほとんど緑って言えるけど、微妙な違いを伝えたい時は、その植物の名前に色を付けて言ったり、逆に近い緑でも草と区別するために、葉っぱ色と言ったりもしちゃうぅ」
まさかのほぼ全面一致に驚愕する照壬だったが、今度は、そこを広げても結局わからず終いで気マズく黙り込しかなくなる予感が駆けぬけて、照壬に慎慮を促す。
まずは、ヴォロプの主神同一説を否定しなければ、納得のいく結論になど到達できないことだけは明らか。
さらに、ふと自分がヴェロプへ吐いていた貶言を思い出し、照壬は全身から冷や汗を噴出させる。
「……あの~、さっきは申しわけなかったヴォロプ、てか、すみませんでしたっ。赤が通じるんなら、オレが罵った赤鬼の意味もわかっちゃっていますよね?」
「ア~、そう言えば、そんなこと言われちゃったわよねぇ。今更、悪怯 れて謝罪らしき言葉を並べられても、アタシの心のキズは癒えないけど~」
「……てか、
「そうねぇ、神は過 ちを犯さないから、謝罪の言葉も方言になるわね~。サーリグとかミッ・ディスピエースとか、ナンデモ・ユーコト・キク~、とかかしら」
「……あのなぁ。人がガチで悪いと思っているってのに」
「一般的には、私が悪かったので許してください、が基本かしらね?」
「ったく……オレの許容範囲内の注文なら、とりあえずやるって何でも。それで満足できないならいい、グラウンド・ゼロで、もう下の地獄へも殞ちようがない爆裂‐滅尽に吹っ飛ばされるまでだっ」
「それがテルミの国の基本的な謝罪なのぉ? 反省が全然カンジられないことだけしか、よくわからないんだけど」
「てか、オレにとっては、動かなくなった分身でも大事に扱うのが礼儀だったんだし、別に仲好くしなくたって、オレはヴォロプの安全を守るだけなんだしな。サーリグとミッ・ディスピエースは言っておくけどな一応」
「フ~ムフム。テルミが女子と会話を愉しめない理由はそれね、下心がないからダメなのよ。まっ、衛護者としては合格だし、謝るまでもなく怒ってないものアタシ」
くるりんと、ヴォロプは歩みを止めずに照壬を見返り、朗らかな笑顔をふりまく。
「ン~どうでしょ? 何で? ごまかしきるまでの必要があるのかしら?」
「ノキオとは、オレは山で事故って、自分のことが思い出せない記憶喪失者って設定が無難だと決めたんだけど、そんなフリを完璧にやりとおす自信なんかないから、すんなり納得してもらえる設定の方が助かるんだよな」
「そうねぇ、記憶が喪失しちゃってる人の方が興味をもたれるかも~……そのままのテルミでいいんじゃないの? 言いたいことだけ言って、聞かれて困ったら、困った顔して黙っちゃえば」
「はぁ? それで通用するなら、こうして気苦労なんかしないってのっ」
「でも、それで大概、
そうまで言われてしまっては、安平も極みな露草色のレンコートに身を包もうが、
けれども、順直にヴォロプの提案に甘えて黙り込むわけにもいかない。
「てか、どうするんだ? レインコートのフードを被っても、ヴォロプの髪はたちまち目に留まっちまうよなぁ。それ以前にシルエット……てか佇まい、やたらな頭身の高さだけでも、人目を惹くこと間違いなしだしな……」
「まぁね~、ヴヴとは言えレギナだしぃ。でも、赤い髪で背が高いのは、フワム一族だけじゃないもの」
「そうなんだ? ……ほかには?」
「ネデルラウンのヨジウム州民にも多いし、生まれはフリクィヤハ大陸だって言えば、エレファスの血筋かもと怪しんでくれちゃうから。どれも、暴れ出したら止まらない強暴な民族なのが嘆かわしいけど~」
「……赤は赤って言うんだな? 青は? 黄色は黄じゃなく必ず色を付けて言うとか? 黒や緑や白とも言うのかな?」
「広げるのはそこぉ? ……言うわよ、青も黒も緑も白も、黄は黄色じゃなく黄だけど」
「またビミョーだなぁ、変に」
「色を付けて言うのは、やっぱりトリウネが教えなかった色だけね。草や葉の色はほとんど緑って言えるけど、微妙な違いを伝えたい時は、その植物の名前に色を付けて言ったり、逆に近い緑でも草と区別するために、葉っぱ色と言ったりもしちゃうぅ」
まさかのほぼ全面一致に驚愕する照壬だったが、今度は、そこを広げても結局わからず終いで気マズく黙り込しかなくなる予感が駆けぬけて、照壬に慎慮を促す。
まずは、ヴォロプの主神同一説を否定しなければ、納得のいく結論になど到達できないことだけは明らか。
さらに、ふと自分がヴェロプへ吐いていた貶言を思い出し、照壬は全身から冷や汗を噴出させる。
「……あの~、さっきは申しわけなかったヴォロプ、てか、すみませんでしたっ。赤が通じるんなら、オレが罵った赤鬼の意味もわかっちゃっていますよね?」
「ア~、そう言えば、そんなこと言われちゃったわよねぇ。今更、
「……てか、
申しわけない
とすみません
は通じないわけか? じゃぁ何て謝ればいいんだ? でもゴメンは通じていたような気がするけどな……」「そうねぇ、神は
「……あのなぁ。人がガチで悪いと思っているってのに」
「一般的には、私が悪かったので許してください、が基本かしらね?」
「ったく……オレの許容範囲内の注文なら、とりあえずやるって何でも。それで満足できないならいい、グラウンド・ゼロで、もう下の地獄へも殞ちようがない爆裂‐滅尽に吹っ飛ばされるまでだっ」
「それがテルミの国の基本的な謝罪なのぉ? 反省が全然カンジられないことだけしか、よくわからないんだけど」
「てか、オレにとっては、動かなくなった分身でも大事に扱うのが礼儀だったんだし、別に仲好くしなくたって、オレはヴォロプの安全を守るだけなんだしな。サーリグとミッ・ディスピエースは言っておくけどな一応」
「フ~ムフム。テルミが女子と会話を愉しめない理由はそれね、下心がないからダメなのよ。まっ、衛護者としては合格だし、謝るまでもなく怒ってないものアタシ」
くるりんと、ヴォロプは歩みを止めずに照壬を見返り、朗らかな笑顔をふりまく。