020 木っぱ問答
文字数 1,855文字
「てか、オレがそんなことを知っているのは、オレのいた山にも似たような場所があったからにすぎないんだ」
「そうなのですか……似たような、とは?」
「あぁ、天彦 祠と呼ばれていてな。その祠で祈ると、下の道路を通っていた人の耳に届いて驚かす怪奇現象あつかいだった。こっちでも凝った宗教建築とかで起こり易いはずだ、ロンドンのセントポール寺院なんかが有名だったから」
「……聖堂や廟所などで、神託や古人の告勅を受けるというような事柄は、実は、そうした道理の通った現象の誤認識にすぎなかったわけですか……」
「てか、オレのいた世界ではそうだったけど、こっちにはさっき聞きかけた魔法や神通力があるんだろ? なら道理って言うか、科学的根拠なんか説明のしようもない現象がザラに起こりまくっているんじゃないか?」
照壬はチラと、思い出したようにлсДへと視線を向けた。
「……カガクの意味がわかりませんけれども、魔法にも通力にも道理はあるので、その発動により起こる現象の根拠は説明ができます。無論のこと、別の世界ならば道理も異なるでしょうから、テルミが納得できるかもまた別事になりますね」
「科学ってのは、ザックリ言うと自然の摂理。誰でもフツウに従って生きてる道理だな、その理屈は数式、てか数できっちり説明できるんだけど、やっぱ納得できるかは別事でな──」照壬は顎下を二掻きして、説き続ける──「例えば、ここの物を夏ゾーネへ持って行って量ると軽くなったり、速く移動するほど時間が遅くなったりな」
「……そうした現象の原理や法則を説明されても、数理自体に精通していなければ完全な理解が難しいと言うことでしょうか」
「あぁそうそう、その辺の言葉は大丈夫なんだな。だけど魔法や神通力ってのは自然を超えてて、その道理には誰でもスグに従えやしないんじゃないか? 魔力がないとダメとか、神から特別にチカラを授からないとムリとか、フツウじゃない大前提からあって」
「そうですけれども、ではテルミがその剣を自分の手の中まで浮かし上げた道理を、カガク的とやらで説明してくださいませんか? ワタクシも動けるようになったあと、是非やってみたいので」
論理も形式科学。照壬が見込んでいたよりも科学的に考える木‐ノキオのこね返しに一泡吹かされ、照壬は苦笑いしつつ、返す言葉を滅多急きに探す。
「……そうくるかぁ。まいったな、てか、それはオレじゃなくこのлсДのチカラだろうし、この剣はこっちの物だと思うんで、魔剣じゃないなら神器、聖剣ってことなのかもな? とにかくフツウの剣じゃない、剣なのかも実のところはわからないけど、凄そうな武器だってことだけは確かだし……」
「……では、テルミはディアブラリフェインの何 れかの神に召し仰 せられたということになりそうです、デウツクランに聖剣伝説はありませんので。となればテルミには、神の名の下に、この世界で成し遂げなくてはならない天命があるはずですけれども」
「ガチ? 天命って……てか、それはないな。オレをここへ殞しやがった奴だけは唯一はっきりしているんだ」
「……それは一体、どのような方なのでしょうか?」
「オレとほぼ同い年のチャラケた坊ちゃまでな、何でもカネのチカラでやりつけているカンジだったけど、幾ら費やそうがそれこそ道理がないっての。地獄送りの餞別に、こんな摩訶不思議な剣までオレにもたせるなんてことは」
「その、テルミと同年くらいの若子が、神だったという可能性はありますけれども。神の姿は千態万状、神神しいのはむしろ稀で、オチャラかした一見神とは思えぬ神の方が多いと思いますし、神の御業 でなければ、それこそ全ての道理がつかないのではありませんか?」
「ン~、こっちは神があたりまえにいるんだろうけど、オレのいた世界だと、神は妄信する人の妄念にしか現れない存在でな、声が聞こえちまうだけでもかなりヤバいんだよな」
「……あたりまえに現れたりせずとも、存在するのであれば、ワタクシの見解も否定はできないのではないでしょうか」
照壬はブンブン頭をふると吐き散らしだす──。
「てか、そもそも神がオレを殺す道理がないっ。邪神とか悪神とか言ったりするが、そんなのも神じゃない。神みたいなチカラをもってるだけで悪魔や怪物だそれは。稀にしかいなかろうが、誰が見ても神神しくて誰にでも正しい言動しかしないのが神、どっかのアホが混同するから世界が歪むんだっ」
「……そもそも、テルミが、この世界を地獄と認識している大前提が、歪んでいるのではありませんか?」
「そうなのですか……似たような、とは?」
「あぁ、
「……聖堂や廟所などで、神託や古人の告勅を受けるというような事柄は、実は、そうした道理の通った現象の誤認識にすぎなかったわけですか……」
「てか、オレのいた世界ではそうだったけど、こっちにはさっき聞きかけた魔法や神通力があるんだろ? なら道理って言うか、科学的根拠なんか説明のしようもない現象がザラに起こりまくっているんじゃないか?」
照壬はチラと、思い出したようにлсДへと視線を向けた。
「……カガクの意味がわかりませんけれども、魔法にも通力にも道理はあるので、その発動により起こる現象の根拠は説明ができます。無論のこと、別の世界ならば道理も異なるでしょうから、テルミが納得できるかもまた別事になりますね」
「科学ってのは、ザックリ言うと自然の摂理。誰でもフツウに従って生きてる道理だな、その理屈は数式、てか数できっちり説明できるんだけど、やっぱ納得できるかは別事でな──」照壬は顎下を二掻きして、説き続ける──「例えば、ここの物を夏ゾーネへ持って行って量ると軽くなったり、速く移動するほど時間が遅くなったりな」
「……そうした現象の原理や法則を説明されても、数理自体に精通していなければ完全な理解が難しいと言うことでしょうか」
「あぁそうそう、その辺の言葉は大丈夫なんだな。だけど魔法や神通力ってのは自然を超えてて、その道理には誰でもスグに従えやしないんじゃないか? 魔力がないとダメとか、神から特別にチカラを授からないとムリとか、フツウじゃない大前提からあって」
「そうですけれども、ではテルミがその剣を自分の手の中まで浮かし上げた道理を、カガク的とやらで説明してくださいませんか? ワタクシも動けるようになったあと、是非やってみたいので」
論理も形式科学。照壬が見込んでいたよりも科学的に考える木‐ノキオのこね返しに一泡吹かされ、照壬は苦笑いしつつ、返す言葉を滅多急きに探す。
「……そうくるかぁ。まいったな、てか、それはオレじゃなくこのлсДのチカラだろうし、この剣はこっちの物だと思うんで、魔剣じゃないなら神器、聖剣ってことなのかもな? とにかくフツウの剣じゃない、剣なのかも実のところはわからないけど、凄そうな武器だってことだけは確かだし……」
「……では、テルミはディアブラリフェインの
「ガチ? 天命って……てか、それはないな。オレをここへ殞しやがった奴だけは唯一はっきりしているんだ」
「……それは一体、どのような方なのでしょうか?」
「オレとほぼ同い年のチャラケた坊ちゃまでな、何でもカネのチカラでやりつけているカンジだったけど、幾ら費やそうがそれこそ道理がないっての。地獄送りの餞別に、こんな摩訶不思議な剣までオレにもたせるなんてことは」
「その、テルミと同年くらいの若子が、神だったという可能性はありますけれども。神の姿は千態万状、神神しいのはむしろ稀で、オチャラかした一見神とは思えぬ神の方が多いと思いますし、神の
「ン~、こっちは神があたりまえにいるんだろうけど、オレのいた世界だと、神は妄信する人の妄念にしか現れない存在でな、声が聞こえちまうだけでもかなりヤバいんだよな」
「……あたりまえに現れたりせずとも、存在するのであれば、ワタクシの見解も否定はできないのではないでしょうか」
照壬はブンブン頭をふると吐き散らしだす──。
「てか、そもそも神がオレを殺す道理がないっ。邪神とか悪神とか言ったりするが、そんなのも神じゃない。神みたいなチカラをもってるだけで悪魔や怪物だそれは。稀にしかいなかろうが、誰が見ても神神しくて誰にでも正しい言動しかしないのが神、どっかのアホが混同するから世界が歪むんだっ」
「……そもそも、テルミが、この世界を地獄と認識している大前提が、歪んでいるのではありませんか?」