040 ”勢力均衡の矛盾”ってヤツの真っただ中
文字数 1,994文字
「……いきなり事情通 ぽいこと言いだすのね?」
「ワイヴァーン使いじゃない男二人の方だと思うけど、そう会話していたのを、オレもノキオと聞いたから」
「ハハ~ン、それで納得だわっ。アタシが、この先に招待されてるノーゼを気に入っちゃったら、脅威度の均衡が崩れて、大混乱が起きると血迷ったのよきっと」
「この国じゃなく、ほかの国とのことなのに、この国でやらかしたわけか工作活動?」
「だって、国境近くの住民が逃げ出して北西部がスカスカになったら、その土地を旨旨と奪いとりに、ノーゼもオシュウェンシムへ攻め入っちゃうはずだし」
「んん、どう言うことなんだ?」
「フワム一族の女子はね、族母長が認めてコンテスタリに出されると、あちこちの国や大貴族からいろんな招請を受けるの」
「コンテスタリ、か……」照壬はコンテストのことではないだろうかと当たりをつける。
「王様の側室や王子の形式的な妃、王国以外なら外交関係の官公署に所属する後援大使とか、露骨に軍だと特別士官待遇とか、勧誘話が山のようにきちゃって。貴族と契約すれば、仕事をしてるフリすらせずに、遊んでてよかったりしちゃうぅ」
「……じゃぁレギナは、優勝者とか女王って意味だったりして、ヴォロプは今年のミス・ヴヴ何とか火山なわけだったのかよ?」
ヴォロプはクルンと半回転、後ろ歩きで照壬に答える。
「何それ~? レギナ・ルテ・ヴヴは、まぁヴヴ‐ドゥプルス火山を宥め賺す巫女ってカンジかしらね──」
数歩でまたクルンと半転し、ヴォロプは前へ向きなおった。
「そ? ……で?」
「起源はともあれ今やフワム一族の年中行事でしかないんだけど、コンテスタリに出された女子たちで話し合って、招請を受けた先を視察しに行く代表にアタシが決まったわけ。それでまず、近いデウツクランの央都へ赴いてたんだけどぉ……」
「まんまと誘拐されちまったわけか? てかコンテストじゃなくオークションぽいな、要はより条件がいい所と契約して、独り立ちするってわけだろ? 嫁ぐと言っても、形だけの妃や側妻じゃガチの結婚とは違いそうだしな……」
「そんなカンジ~、コンテストだのオークションだのはわからないけど。でもあとから、あらためて正室や第一王妃に迎えられた人も大勢いるんだからぁ。俗に言われちゃうトロフィーワイフに甘んじちゃうほど、アタシたちは甘くないもの」
「そのトロフィーワイフって、オレの世界の言葉だぞ、オレの国のじゃないけどオレの国でも使われていて……何でだ? 見た目パッとしない男が不つり合いな美女と結婚して、間接的に自分の有能さをひけらかすための奥さんってことだろ?」
「ア~そうそう、それは昔昔にディスロケーターが騒ぎ立てた言葉だったかも知れないわ。的を射貫いてるから、広まるのも定着するのも当然でしょうけど」
「……てかフワム一族の女子は、みんなヴォロプみたい、てか、誰がどこと契約しようが、トロフィーワイフになれるカンジってことなのか……」
「てかてか~、つまりね、何人ボムバーナを集めているかで、国の強さや家格の高さが決まっちゃうわけ。この世界の秩序と平和を、アタシたちが担ってると言っても過言にはならないの」
そう一応自負していることを、軽く左腕を突き上げて示すヴォロプだった。
保有する核ミサイル数でパワーバランスが保たれ、新たに保有国となれば、かなりの駄駄も聞き入れてもらえるという世界で育った照壬ゆえ、確かに過言ではないように思えてくる。
さらには、いつでも発射態勢へと移行可能なICBMのごとく、整然と立ち並んだヴォロプたちボムバーナの艶姿を自国民に披露し、おそらく奪い合い戦った長く苛酷い歴史を辿って形成された周辺国へも見せつけることは、一国を治める地位に就く者たちにとっても実に爽快だろうとイメージが膨らむ。
「ガチで人間核弾頭だったんだな……なら今頃、この国の王様や、ヴォロプをもてなしたり警護していた連中は大騒ぎだろ? 故郷じゃなく央都へ戻るべきじゃないのか?」
「もう完全に仕切りなおしにしなくちゃ。族母長たちが前前から懸念してたことが、今年とうとうアタシで起きちゃったわけだから、アタシから事態の収拾をつけ易くしてあげる必要なんてないの。精精騒ぎになればいいんだわ~」
「……それ、ヴォロプにも面倒なことにならないのかな?」
「面倒にはなるけど、仕方がないわ。この二〇年ばかり、ボムバーナは本当にお飾り同然なのよ。アタシたちには幸福な時代なんだけど」
「……てか何も言えね~、な」
「今はどこも魔族や鬼族との小競り合い程度だから、平和弛みしちゃってて。それで今回みたいな、下請け木っ端 悪人のつけ入る隙なんかができちゃってるわけ。引き締めのためにも、アタシは自分の足で帰らなくちゃ」
「それで平和かよぉ……オレに、その辺の政治的ぽい面倒の処理まではムリだからなっ」
一気に照壬は足が重くなる。
「ワイヴァーン使いじゃない男二人の方だと思うけど、そう会話していたのを、オレもノキオと聞いたから」
「ハハ~ン、それで納得だわっ。アタシが、この先に招待されてるノーゼを気に入っちゃったら、脅威度の均衡が崩れて、大混乱が起きると血迷ったのよきっと」
「この国じゃなく、ほかの国とのことなのに、この国でやらかしたわけか工作活動?」
「だって、国境近くの住民が逃げ出して北西部がスカスカになったら、その土地を旨旨と奪いとりに、ノーゼもオシュウェンシムへ攻め入っちゃうはずだし」
「んん、どう言うことなんだ?」
「フワム一族の女子はね、族母長が認めてコンテスタリに出されると、あちこちの国や大貴族からいろんな招請を受けるの」
「コンテスタリ、か……」照壬はコンテストのことではないだろうかと当たりをつける。
「王様の側室や王子の形式的な妃、王国以外なら外交関係の官公署に所属する後援大使とか、露骨に軍だと特別士官待遇とか、勧誘話が山のようにきちゃって。貴族と契約すれば、仕事をしてるフリすらせずに、遊んでてよかったりしちゃうぅ」
「……じゃぁレギナは、優勝者とか女王って意味だったりして、ヴォロプは今年のミス・ヴヴ何とか火山なわけだったのかよ?」
ヴォロプはクルンと半回転、後ろ歩きで照壬に答える。
「何それ~? レギナ・ルテ・ヴヴは、まぁヴヴ‐ドゥプルス火山を宥め賺す巫女ってカンジかしらね──」
数歩でまたクルンと半転し、ヴォロプは前へ向きなおった。
「そ? ……で?」
「起源はともあれ今やフワム一族の年中行事でしかないんだけど、コンテスタリに出された女子たちで話し合って、招請を受けた先を視察しに行く代表にアタシが決まったわけ。それでまず、近いデウツクランの央都へ赴いてたんだけどぉ……」
「まんまと誘拐されちまったわけか? てかコンテストじゃなくオークションぽいな、要はより条件がいい所と契約して、独り立ちするってわけだろ? 嫁ぐと言っても、形だけの妃や側妻じゃガチの結婚とは違いそうだしな……」
「そんなカンジ~、コンテストだのオークションだのはわからないけど。でもあとから、あらためて正室や第一王妃に迎えられた人も大勢いるんだからぁ。俗に言われちゃうトロフィーワイフに甘んじちゃうほど、アタシたちは甘くないもの」
「そのトロフィーワイフって、オレの世界の言葉だぞ、オレの国のじゃないけどオレの国でも使われていて……何でだ? 見た目パッとしない男が不つり合いな美女と結婚して、間接的に自分の有能さをひけらかすための奥さんってことだろ?」
「ア~そうそう、それは昔昔にディスロケーターが騒ぎ立てた言葉だったかも知れないわ。的を射貫いてるから、広まるのも定着するのも当然でしょうけど」
「……てかフワム一族の女子は、みんなヴォロプみたい、てか、誰がどこと契約しようが、トロフィーワイフになれるカンジってことなのか……」
「てかてか~、つまりね、何人ボムバーナを集めているかで、国の強さや家格の高さが決まっちゃうわけ。この世界の秩序と平和を、アタシたちが担ってると言っても過言にはならないの」
そう一応自負していることを、軽く左腕を突き上げて示すヴォロプだった。
保有する核ミサイル数でパワーバランスが保たれ、新たに保有国となれば、かなりの駄駄も聞き入れてもらえるという世界で育った照壬ゆえ、確かに過言ではないように思えてくる。
さらには、いつでも発射態勢へと移行可能なICBMのごとく、整然と立ち並んだヴォロプたちボムバーナの艶姿を自国民に披露し、おそらく奪い合い戦った長く苛酷い歴史を辿って形成された周辺国へも見せつけることは、一国を治める地位に就く者たちにとっても実に爽快だろうとイメージが膨らむ。
「ガチで人間核弾頭だったんだな……なら今頃、この国の王様や、ヴォロプをもてなしたり警護していた連中は大騒ぎだろ? 故郷じゃなく央都へ戻るべきじゃないのか?」
「もう完全に仕切りなおしにしなくちゃ。族母長たちが前前から懸念してたことが、今年とうとうアタシで起きちゃったわけだから、アタシから事態の収拾をつけ易くしてあげる必要なんてないの。精精騒ぎになればいいんだわ~」
「……それ、ヴォロプにも面倒なことにならないのかな?」
「面倒にはなるけど、仕方がないわ。この二〇年ばかり、ボムバーナは本当にお飾り同然なのよ。アタシたちには幸福な時代なんだけど」
「……てか何も言えね~、な」
「今はどこも魔族や鬼族との小競り合い程度だから、平和弛みしちゃってて。それで今回みたいな、下請け木っ
「それで平和かよぉ……オレに、その辺の政治的ぽい面倒の処理まではムリだからなっ」
一気に照壬は足が重くなる。