027 急転直火で燃背の窮ぅぅぅ
文字数 1,478文字
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見つけた石積みの水溜めで、申し分なく洗顔し口も存分に漱 ぎまくって戻ったところ、ノキオの姿はなく、また気を利かせて朝食の果実をとりに出かけているのかと、照壬は気恥ずかしさを噛み潰すハメになる。
「……ったく。どんだけとびきりの味でも、絶対にケチをつけてやるからな~」
自然乾燥がほぼ完了してしまっているものの、顔をタオルで拭 っておかないことには気分的にさっぱりしない。
それゆえ、枝の寝床まで登り戻った照壬だった──が!
バックパックのバンジーコードに留め干していたタオルへ手を伸ばしたその時、凄絶な叫び声に耳を劈 かれ、身を大きく竦ませてバランスを崩し、タオルではなくマウンテンパーカーを掴んで照壬は滑落して行くハメになる。
けれども空中での必死の身悶えが功を奏して、どうにか足からの着地は叶った。
そんな鬼気迫る悲鳴など初めて聞く照壬でも、女性が休憩場の方から発したことに間違いはない。
さらには「コンッ!」という、木剣で何か硬い物を力を込めて打ちつけたと思われる音まで響いてくれば、この場で隠れてやり過ごす選択肢などあり得ない。
照壬はлсДを抜くためにマウンテンパーカーを投げ捨てようとした手を止め、ポケットから銃弾三発をまさぐりとってから放り出し、銃弾の種類は気に留めた上でジーンズのポケットへ突っ込みながら走りだす。
──そして休憩場に着く前に、照壬がもしやと案じたとおりノキオの方から逃げ来る姿を現した。
それも背後から黒黒とした煙を上げて、オマケに赤髪女子をお姫様だっこで抱えている。
「どうしたんだノキオ! 何があった一体っ?」
「この方を悪人たちから救い出しました。ここからはワタクシに代わって一緒に逃げてくださいテルミ、ワタクシは引き返して、本当に追って来ないかを確認して来ますので」
女性を下ろしながらノキオにしては口早に言う。
「アホかっ、そんなのはオレが行く、てか背中が燃えているじゃないかよ!」
照壬はマウンテンパーカーを手放したことを猛烈に後悔しながら、лсДのソードガード近くで刮 ぐように赤黒く燃える炎を撫で消しにかかるも、ノキオの背面、ほぼ中央からドロドロと起こり立つ不気味な炎は衰える気配すら見せない。
「悪人たちは魔力もちでも魔法使いでもありませんでしたけれども、一人が魔炎のカルタードを所持しており、使われてしまいました」
「ダメだ消えないっ、また斬っちまうしかない、背中を丸めて屈み込めノキオッ」
「これはワタクシの生気を魔のチカラで炎へと転換し燃えているのです、ワタクシが活動を止めるまで決して消えません。ですから──」
「ウルサイ! それじゃ転がって、地面に背中を圧しつけてとにかく火を抑え込めろっ。ノキオにこんなことしやがった奴は絶対許さねぇ──」
照壬は、その場でしゃがみ込み怖じ惑いきった表情を浮かべている女子へふり返る。
その赤髪女子は「…………」鳩が豆鉄砲を喰ったような目をさらに見開くばかり。
「オレたちはとにかく味方だっ、助けられたところ悪いがあんた、この火を消すのを手伝ってやってくれ、オレは悪人たちを完全にブチのめして来るっ」
その照壬の気勢で、弾かれたように赤髪女子も頷く。
「……それなら、ワイヴァーンペドテスをどうにかしてっ。カルタードは高価だから一枚きりのはずだわ、あとはワイヴァーンさえなければ何もできなくなっちゃうからっ」
「……ワイヴァーンって飛ぶ龍かよ? ペドテスって何だ、どうにかって、そんなのどうすりゃいいんだっ?」
照壬は自問自答しつつも、それどころではないノキオへ向きなおってしまう。
見つけた石積みの水溜めで、申し分なく洗顔し口も存分に
「……ったく。どんだけとびきりの味でも、絶対にケチをつけてやるからな~」
自然乾燥がほぼ完了してしまっているものの、顔をタオルで
それゆえ、枝の寝床まで登り戻った照壬だった──が!
バックパックのバンジーコードに留め干していたタオルへ手を伸ばしたその時、凄絶な叫び声に耳を
けれども空中での必死の身悶えが功を奏して、どうにか足からの着地は叶った。
そんな鬼気迫る悲鳴など初めて聞く照壬でも、女性が休憩場の方から発したことに間違いはない。
さらには「コンッ!」という、木剣で何か硬い物を力を込めて打ちつけたと思われる音まで響いてくれば、この場で隠れてやり過ごす選択肢などあり得ない。
照壬はлсДを抜くためにマウンテンパーカーを投げ捨てようとした手を止め、ポケットから銃弾三発をまさぐりとってから放り出し、銃弾の種類は気に留めた上でジーンズのポケットへ突っ込みながら走りだす。
──そして休憩場に着く前に、照壬がもしやと案じたとおりノキオの方から逃げ来る姿を現した。
それも背後から黒黒とした煙を上げて、オマケに赤髪女子をお姫様だっこで抱えている。
「どうしたんだノキオ! 何があった一体っ?」
「この方を悪人たちから救い出しました。ここからはワタクシに代わって一緒に逃げてくださいテルミ、ワタクシは引き返して、本当に追って来ないかを確認して来ますので」
女性を下ろしながらノキオにしては口早に言う。
「アホかっ、そんなのはオレが行く、てか背中が燃えているじゃないかよ!」
照壬はマウンテンパーカーを手放したことを猛烈に後悔しながら、лсДのソードガード近くで
「悪人たちは魔力もちでも魔法使いでもありませんでしたけれども、一人が魔炎のカルタードを所持しており、使われてしまいました」
「ダメだ消えないっ、また斬っちまうしかない、背中を丸めて屈み込めノキオッ」
「これはワタクシの生気を魔のチカラで炎へと転換し燃えているのです、ワタクシが活動を止めるまで決して消えません。ですから──」
「ウルサイ! それじゃ転がって、地面に背中を圧しつけてとにかく火を抑え込めろっ。ノキオにこんなことしやがった奴は絶対許さねぇ──」
照壬は、その場でしゃがみ込み怖じ惑いきった表情を浮かべている女子へふり返る。
その赤髪女子は「…………」鳩が豆鉄砲を喰ったような目をさらに見開くばかり。
「オレたちはとにかく味方だっ、助けられたところ悪いがあんた、この火を消すのを手伝ってやってくれ、オレは悪人たちを完全にブチのめして来るっ」
その照壬の気勢で、弾かれたように赤髪女子も頷く。
「……それなら、ワイヴァーンペドテスをどうにかしてっ。カルタードは高価だから一枚きりのはずだわ、あとはワイヴァーンさえなければ何もできなくなっちゃうからっ」
「……ワイヴァーンって飛ぶ龍かよ? ペドテスって何だ、どうにかって、そんなのどうすりゃいいんだっ?」
照壬は自問自答しつつも、それどころではないノキオへ向きなおってしまう。