028 ワイヴァーンの翼は後ろ脚なんだってね
文字数 1,786文字
「ワイヴァーンに乗り操る御者のことです。ワイヴァーンは全部で四頭いました──」
「四頭もかよ! そんなムリゲー状況、知らんけど一人でまったくっ……」
「けれども、ワタクシが起した騒動に驚き、つなぎ留めていた手綱を引き千切り飛び立ちましたので。しかしながら、御者が無事ならば再び呼び集められ、ワタクシの打ちかかりで逃げた悪人二人まで乗せ戻してしまうことになります」
「わかったっ、その御者をブッ倒して来るから諦めんな絶対!」
照壬は駆けだしながら言い殴る──。
細い木木の合間を縫い走り、少し行った所で照壬は一層加速をつける。
陽当たりのせいで一際高く深くなっている茂みを、лсДで掻き斬り分けることもせずに、六〇キロそこそこの全体重をつんのめらせたような超前傾姿勢のブチかましで突きぬけた。
そうして休憩場へと躍り出た照壬だが、ほぼ半円形状に開けたそこには何の姿もない、悪人たちがワイヴァーンで運んで来たと考えられる多少の荷物が散乱するのみ。
照壬は、さらに駆け出て、尾根伝いに延び通る道の両方向へと目をふれば、緩やかに下っている南側の先で、大きくS字にうねり曲がっている地点に逃げ続けていた二人の人影を見つける。
道と言っても、通った者たちが長い年月をかけて踏み広げただけでしかない幅二メートルあるかないかの細い険路。
照壬が立つ場所からして、片側は急角度で底深く落ち込んでいる崖だが、悪人と思しき二人が現在急ぎ下っている地点は、反対側が数メートルながら高く壁をつくる片岨になっていた。
照壬は一瞬悩むと赤い銃弾を選んでлсДの装填口へ押し込み、ハンティングライフルよろしくлсДをかまえて狙いを澄ます。
赤い銃弾は当たったあと、さらに進行方向へ炸裂し破壊範囲を拡大させる。
悪人二人が通過した岩壁を撃ち崩して道を塞いでしまえば、ムリをしてまで戻って来る気は起こさないだろうという発想での初弾を放つ。
照壬は、
それで赤い銃弾は音もなく発射され、その感覚の手応えのなさに錯愕してくる前に轟音で命中を知らされる。
照壬がлсДのソードガードから柄へと握りなおし、また剣として下ろし持った時には、照壬のほぼイメージどおりに細い一本道が塞がってくれていた。
背後の岩壁の一部がわけもわからず吹っ飛び崩れて、その衝撃で跳んだ大きめの岩片や石塊が飛礫 となって襲いかかり、悪人二人の逃げ足に慌しさが増す様も見て取れる。
「凄っ、ガチか~……ヨッシャ、あとは御者だなっ」
照壬は緊褌一番、機敏にふり返って再び上り側の道を確認したが、先ほどと変わりはナシ。
そのまま上空へ視線を向けていくと、ワイヴァーンが一頭横切り、それを追うように一まわり大きなワイヴァーンも、一頭目と同サイズの二頭をあとに引き連れて通過して行った。
大きめのワイヴァーンの背には人が乗っており、それが御者だとも認識した照壬だが、長い黒髪をうち靡かせているその見場から女性であることまでが判断できてしまい、照壬はまたも寸秒頭を悩ますことになる。
が、それも限りなく瞬間に近い少時にすぎず、今度は青い銃弾をлсДに装填──。
大きなワイヴァーンの脚部へと、照壬は狙いを定めにかかった。
青い銃弾は当たったあとで四方八方‐放射状に炸裂を広げる。
大蛇を思わせる長い尾は、先端まで絶えず飛行姿勢のバランスをとっている動きが窺えるだけにヒットは難しい上、むしろ当てたら墜落させかねない。
なので、ワイヴァーンの飛ぶ向きを変える毎にぶらりんと大揺れする脱力した両脚、その長く鋭い足爪の先にでも掠めてくれれば、罪なきワイヴァーンへの傷は最小限に留めて、四頭とも散り逃がしてしまえると同時に、その背から御者だけがふり落とされる可能性が高いと踏んでの一発を照壬は撃ち込む。
またも照壬は、大きなワイヴァーンの動きを流し捉えた刹那に、
開豁と遠く山の麓までが見通せる西側の空、およそ二〇〇メートル離れたほぼ照壬の目の高さで青い銃弾が命中‐炸裂!
大きなワイヴァーンが小さなワイヴァーンを追うのをやめて、翻筋斗 をうつように激しくバタつく動きを見せた。
それに魂消て、あとについていた二頭と追われていた一頭も、一目散の散り散りで飛び離れて行く。
「四頭もかよ! そんなムリゲー状況、知らんけど一人でまったくっ……」
「けれども、ワタクシが起した騒動に驚き、つなぎ留めていた手綱を引き千切り飛び立ちましたので。しかしながら、御者が無事ならば再び呼び集められ、ワタクシの打ちかかりで逃げた悪人二人まで乗せ戻してしまうことになります」
「わかったっ、その御者をブッ倒して来るから諦めんな絶対!」
照壬は駆けだしながら言い殴る──。
細い木木の合間を縫い走り、少し行った所で照壬は一層加速をつける。
陽当たりのせいで一際高く深くなっている茂みを、лсДで掻き斬り分けることもせずに、六〇キロそこそこの全体重をつんのめらせたような超前傾姿勢のブチかましで突きぬけた。
そうして休憩場へと躍り出た照壬だが、ほぼ半円形状に開けたそこには何の姿もない、悪人たちがワイヴァーンで運んで来たと考えられる多少の荷物が散乱するのみ。
照壬は、さらに駆け出て、尾根伝いに延び通る道の両方向へと目をふれば、緩やかに下っている南側の先で、大きくS字にうねり曲がっている地点に逃げ続けていた二人の人影を見つける。
道と言っても、通った者たちが長い年月をかけて踏み広げただけでしかない幅二メートルあるかないかの細い険路。
照壬が立つ場所からして、片側は急角度で底深く落ち込んでいる崖だが、悪人と思しき二人が現在急ぎ下っている地点は、反対側が数メートルながら高く壁をつくる片岨になっていた。
照壬は一瞬悩むと赤い銃弾を選んでлсДの装填口へ押し込み、ハンティングライフルよろしくлсДをかまえて狙いを澄ます。
赤い銃弾は当たったあと、さらに進行方向へ炸裂し破壊範囲を拡大させる。
悪人二人が通過した岩壁を撃ち崩して道を塞いでしまえば、ムリをしてまで戻って来る気は起こさないだろうという発想での初弾を放つ。
照壬は、
岩壁の狙った部分をブッ崩す!
と念じただけ。それで赤い銃弾は音もなく発射され、その感覚の手応えのなさに錯愕してくる前に轟音で命中を知らされる。
照壬がлсДのソードガードから柄へと握りなおし、また剣として下ろし持った時には、照壬のほぼイメージどおりに細い一本道が塞がってくれていた。
背後の岩壁の一部がわけもわからず吹っ飛び崩れて、その衝撃で跳んだ大きめの岩片や石塊が
「凄っ、ガチか~……ヨッシャ、あとは御者だなっ」
照壬は緊褌一番、機敏にふり返って再び上り側の道を確認したが、先ほどと変わりはナシ。
そのまま上空へ視線を向けていくと、ワイヴァーンが一頭横切り、それを追うように一まわり大きなワイヴァーンも、一頭目と同サイズの二頭をあとに引き連れて通過して行った。
大きめのワイヴァーンの背には人が乗っており、それが御者だとも認識した照壬だが、長い黒髪をうち靡かせているその見場から女性であることまでが判断できてしまい、照壬はまたも寸秒頭を悩ますことになる。
が、それも限りなく瞬間に近い少時にすぎず、今度は青い銃弾をлсДに装填──。
大きなワイヴァーンの脚部へと、照壬は狙いを定めにかかった。
青い銃弾は当たったあとで四方八方‐放射状に炸裂を広げる。
大蛇を思わせる長い尾は、先端まで絶えず飛行姿勢のバランスをとっている動きが窺えるだけにヒットは難しい上、むしろ当てたら墜落させかねない。
なので、ワイヴァーンの飛ぶ向きを変える毎にぶらりんと大揺れする脱力した両脚、その長く鋭い足爪の先にでも掠めてくれれば、罪なきワイヴァーンへの傷は最小限に留めて、四頭とも散り逃がしてしまえると同時に、その背から御者だけがふり落とされる可能性が高いと踏んでの一発を照壬は撃ち込む。
またも照壬は、大きなワイヴァーンの動きを流し捉えた刹那に、
左足の
……あの左端の爪端にブチ当たれ
! と思念するのみ。開豁と遠く山の麓までが見通せる西側の空、およそ二〇〇メートル離れたほぼ照壬の目の高さで青い銃弾が命中‐炸裂!
大きなワイヴァーンが小さなワイヴァーンを追うのをやめて、
それに魂消て、あとについていた二頭と追われていた一頭も、一目散の散り散りで飛び離れて行く。