039 ブロークンアロー(☢兵器紛失)も同然なのでは
文字数 1,982文字
「そ? 気なんかヘタにまわすんじゃなかったなっ……てか、下心くらいちゃんとある。むしろきっちり分別‐整理されていて、誰彼かまわずスジ違いにも出ないだけだ」
「アラ~、いいコちゃんだったのねぇ、テルミはまだまだぁ」
「そ。第一オレは、逆上 せた身のほど知らずな性分じゃないし、そうなる育てられ方もしていないからな。その辺だけは心配御無用、大きな湯船に浸かったつもりでいてくれ」
「ホント調子狂っちゃうぅ。ただ注意してね、色とか見た目を付けて鬼と呼ぶのは、人虎族と人牛族の間で稀に生まれる混血のことで、悪口なの。どっちも暴れたら町の一区画くらい壊しちゃう人種だし、血の相性が人族同士でも最悪みたい」
「……最悪どころか、それってもう人族や人種の相性の問題じゃないよな……」
「だから、その混血は生まれつきの荒くれ者で、鬼族同然の偏見をもたれてるから、悪口が耳に入ったらメッキメキにされちゃうそうよ」
「危な~、そこまではノキオから聞いていなかったな。……ホント、基本はオレの国の言葉と同じっぽいけど、オレから話かけるのは、できる限り避けた方がよさそうだな」
「そうね。必要な時はアタシが話すから、照壬は悪口さえ言わなければいいのよ基本的に~」
ヴォロプの口ぶりはどうにも、まず自分へ言わないよう釘を刺しているとしか照壬には受け取れない。
「へぇへぇ。てか、フワム一族はここの南隣の国民だろ。遥か遠くでもないのに、どうしてヴォロプは、そうボムバーナであることをごまかせる自信が満満なんだ?」
照壬のこの問いかけに、ヴォロプは漲る自信を示すかのように肩を一度大きく揺すり、バックパックの背中への馴じみ具合をなおして見せた。
「だって、ボムバーナがフラフラ旅に出るなんて、あり得ないものフツウ」
「そうなのか? ……まぁわかる気はするけどな……なら、どんな風にヴォロプが誘拐されたのかは、聞いたらダメなのかな? またされちまうような隙をオレにつくらないために、知っておきたかったことではあるんだけど」
対して照壬の声調には、当たり障りのなさがじんわりと入りだす。
「別にいいけど、もう騙されないから、そこはテルミも心配無用よ。だって、まさか悪人がワイヴァーンを用意できるとは思わなかったんだもの」
「ワイヴァーンってレア、てか珍しいのか?」
「飛んでるだけなら夏や春ゾーネでフツウに見られるけど、人が馴らして、乗れたり荷物を運べるようにしたワイヴァーンは限られてるのよ」
「そのワイヴァーンに乗って飛び廻る貴重な体験ができると言われて、ホイホイ自分からついて行っちまったわけなのか?」
「だぁって、それまでも全部がそんなカンジだったんだもの……ホイホイってどう言う意味? なんかムカつくんだけど」
「そう言う意味。てか、あの荷物だと、日帰りじゃなく一泊する遠出ってカンジだったよな。央都から何時間飛んだ? どれくらい遠いんだ?」
「……ナンジカンって何? アタシはただ朝食を済ませたあとに、次の視察地までワイヴァーンで行くと告げられて従っただけ、あのオピに教えられるまで疑いもしなかったんだもの」
「ガチかぁ? 朝、昼、夕、夜に午前や午後や日にちはあっても、時間の概念まではないとはなぁ……なら、どっちの方角から来た? 大体でいいんだけど」
「最初は怖くて、目を閉じちゃったから飛び立った方角がわからないわ、そもそもここはどこなの? 目指してるイェタータスって、央都のどっち側にあるわけ?」
照壬は、頭上で赫奕と存在感を示す二重恒星の太陽が昇り沈めば一日という、単純すぎる生活リズムに、この世界全てにおける大雑把さまで想像し頭痛がしてくる。
「てか、この山に殞ちて四日目のオレに、央都を基点にしたどっちやどこを、聞かないでくれよなぁ」
「そうだったの? まぁ村に行けば地図があるかも~」
「……その口調だと、この世界の地図は、特に重要とか高価で、簡単には目にできない代物ってわけじゃなさそうだな?」
「詳しさによるわね、それは」
「やっぱそうか……」
こまかな情報収集は欠かせない。ヴォロプをどう促して聞き込ませるかを脳裏によぎらせ、照壬は少し気が重くならざるを得ない。
「それよりもあいつら、絶対どこかの軍隊か大物武器商人の下請けで、アタシを誘拐したに決まってるわっ。軍人ぽくも武器を商える世知賢も全然なかったし、その手の人ならスグわかるから、アタシも騙されたりしないし」
「てか、なんか急にキナクサい話になってきたような……」
「当然でしょ。わかる気がしたばかりじゃなかったのかしらぁ?」
おぼろげに理解できていたヴォロプの境遇を、今はっきりと確信する照壬だった。
「……ガチかよ。ヴォロプは兵器と見做 されて、奪いとられようとしていたわけなのか? ……なら、おそらくオシュウェンシムって国の、軍か武器商人じゃないかな?」
「アラ~、いいコちゃんだったのねぇ、テルミはまだまだぁ」
「そ。第一オレは、
「ホント調子狂っちゃうぅ。ただ注意してね、色とか見た目を付けて鬼と呼ぶのは、人虎族と人牛族の間で稀に生まれる混血のことで、悪口なの。どっちも暴れたら町の一区画くらい壊しちゃう人種だし、血の相性が人族同士でも最悪みたい」
「……最悪どころか、それってもう人族や人種の相性の問題じゃないよな……」
「だから、その混血は生まれつきの荒くれ者で、鬼族同然の偏見をもたれてるから、悪口が耳に入ったらメッキメキにされちゃうそうよ」
「危な~、そこまではノキオから聞いていなかったな。……ホント、基本はオレの国の言葉と同じっぽいけど、オレから話かけるのは、できる限り避けた方がよさそうだな」
「そうね。必要な時はアタシが話すから、照壬は悪口さえ言わなければいいのよ基本的に~」
ヴォロプの口ぶりはどうにも、まず自分へ言わないよう釘を刺しているとしか照壬には受け取れない。
「へぇへぇ。てか、フワム一族はここの南隣の国民だろ。遥か遠くでもないのに、どうしてヴォロプは、そうボムバーナであることをごまかせる自信が満満なんだ?」
照壬のこの問いかけに、ヴォロプは漲る自信を示すかのように肩を一度大きく揺すり、バックパックの背中への馴じみ具合をなおして見せた。
「だって、ボムバーナがフラフラ旅に出るなんて、あり得ないものフツウ」
「そうなのか? ……まぁわかる気はするけどな……なら、どんな風にヴォロプが誘拐されたのかは、聞いたらダメなのかな? またされちまうような隙をオレにつくらないために、知っておきたかったことではあるんだけど」
対して照壬の声調には、当たり障りのなさがじんわりと入りだす。
「別にいいけど、もう騙されないから、そこはテルミも心配無用よ。だって、まさか悪人がワイヴァーンを用意できるとは思わなかったんだもの」
「ワイヴァーンってレア、てか珍しいのか?」
「飛んでるだけなら夏や春ゾーネでフツウに見られるけど、人が馴らして、乗れたり荷物を運べるようにしたワイヴァーンは限られてるのよ」
「そのワイヴァーンに乗って飛び廻る貴重な体験ができると言われて、ホイホイ自分からついて行っちまったわけなのか?」
「だぁって、それまでも全部がそんなカンジだったんだもの……ホイホイってどう言う意味? なんかムカつくんだけど」
「そう言う意味。てか、あの荷物だと、日帰りじゃなく一泊する遠出ってカンジだったよな。央都から何時間飛んだ? どれくらい遠いんだ?」
「……ナンジカンって何? アタシはただ朝食を済ませたあとに、次の視察地までワイヴァーンで行くと告げられて従っただけ、あのオピに教えられるまで疑いもしなかったんだもの」
「ガチかぁ? 朝、昼、夕、夜に午前や午後や日にちはあっても、時間の概念まではないとはなぁ……なら、どっちの方角から来た? 大体でいいんだけど」
「最初は怖くて、目を閉じちゃったから飛び立った方角がわからないわ、そもそもここはどこなの? 目指してるイェタータスって、央都のどっち側にあるわけ?」
照壬は、頭上で赫奕と存在感を示す二重恒星の太陽が昇り沈めば一日という、単純すぎる生活リズムに、この世界全てにおける大雑把さまで想像し頭痛がしてくる。
「てか、この山に殞ちて四日目のオレに、央都を基点にしたどっちやどこを、聞かないでくれよなぁ」
「そうだったの? まぁ村に行けば地図があるかも~」
「……その口調だと、この世界の地図は、特に重要とか高価で、簡単には目にできない代物ってわけじゃなさそうだな?」
「詳しさによるわね、それは」
「やっぱそうか……」
こまかな情報収集は欠かせない。ヴォロプをどう促して聞き込ませるかを脳裏によぎらせ、照壬は少し気が重くならざるを得ない。
「それよりもあいつら、絶対どこかの軍隊か大物武器商人の下請けで、アタシを誘拐したに決まってるわっ。軍人ぽくも武器を商える世知賢も全然なかったし、その手の人ならスグわかるから、アタシも騙されたりしないし」
「てか、なんか急にキナクサい話になってきたような……」
「当然でしょ。わかる気がしたばかりじゃなかったのかしらぁ?」
おぼろげに理解できていたヴォロプの境遇を、今はっきりと確信する照壬だった。
「……ガチかよ。ヴォロプは兵器と