013 ノキ男じゃなくノッキオ(木のコブ)が由来でっす

文字数 1,908文字

「その辺はのちのち聞くとして……てか、あんたは何て木なんだ? ここへ来るまでの間、同じ木は見なかったと思うし、この周りでも一本きりみたいだし」 

「ワタクシはオピです。知恵の木とも呼ばれていますが森毎に一本ずつしか育ちませんので、四つの森からなるこの山ではワタクシを含め四本のみです」

「やっぱ特別なんだな……オピの木か、なんかピノキオっぽいな、ツノかと思ったその額や鼻から突き出た枝からして。そうだな、じゃぁあんたのことはノキオと呼ばせてもらう。

ノキーとかオ

ノとか、

ってカンジじゃないもんな」

「ノキオ、ですか? 抑揚は違いますが、遠く離れた北の地に同じ名前の町があるようですけれども、まぁ悪くはないので御自由に」

「んじゃノキオ、知恵の木って呼ばれる理由は、こうして会話ができるくらい人並み以上に知能が高いからなんだろうけど、どうして遠くの町のことまでわかるんだ?」

「それが最初の質問ですか、だいぶ落ち着いてきたようですね? ワタクシたちオピは、絡みつながる根や蔦などを通じて、ほかの木木や群草が得た情報を集め知ることができるのです。まぁ今し方までは別のことに集中していたので、テルミの接近に気づきませんでした。知ろうとしなければ情報は集まらないのです」

「……まぁ理屈だな──」まるでネット、オピの木はポータルサイトのようだと照壬は思い、その辺を深堀りしてみる──「知ろうとさえすれば、地下で根がつながってる所ならどんなに遠くでも、そこの情報がわかっちまうわけなのか?」

「草木の根や葉や蔓が一点でも触れていれば、です。地下にしても根を伸ばせない地質に断絶されてしまうので、どこまでもとはいきません。遠方の事情などは、はるばる種で飛んで来て根付けたモノからの情報を除けば、主にこの山を越える人族たちの会話から入手しているために、事実かどうか調べきれない事柄も多多あります」

「なるほどな。こんな深い森をぬけて山を越える人たちなんかがいたのか? そりゃ滅多に来なければ草木も聞き耳も立てるし、情報にズレも生じるよな」 

「いえ、人族はちょくちょく通ります。この山は街道筋の一つですので」

「ガチで? ……てか、この世界って実はどこも山ばっかなのか?」

「そう言うわけではなく、この周辺の谷間は大きな岩だらけで歩き難い上に、川も流れが太く深くならず舟も使えません、尾根に沿って山を越える方が楽なのです。テルミは尾根からはずれた所から来たので知りようもないでしょうが、ここから西方向へ少し行けば道が通っていますし、人族が立ち均してできた休憩する場もあるのです」

「ガチかよっ。……そこって人が飲んでも大丈夫な水とかあったりもするのか? まさかレストハウス、てか食べ物を売ってる店まではないよな?」

「そこで湧き出ている水を人族は飲んでいますが、店を出す物好きまではいないようです。腰かけられる岩が並べ置かれた小さな広場にすぎませんので。空腹なのでしたら、その辺に生っている実がどれも食べられます。ワタクシに味まではわかりませんけれども、町で売られる低い土地で育つ実より栄養があるはずです」

 飢渇の二大問題が存外チョロリと解決しそうで、照壬の気張りは如実に緩む。
 同時にノドの渇きと空腹も、しだらなく照壬を虐げ始めた。

 照壬はлсДを下ろすだけでなく、杖に突いても見せて、とりあえず戦意が失せたことをノキオに示し「それで、オレに助けて欲しいってのは一体どんなことなんだ?」と、問い(あらわ)しもする。 

 本当に自分の助けを必要としている頼み(ふく)れ具合ならば、ノキオが教えた水や果実には毒がないとも判断できる。
 一刻も早く、まずはノドを潤しに行きたい思いが照壬の脳ミソを活性化させたそこには、

 という照壬もちまえの心堅さまでが働き、平常心を取り戻しかけている証拠と言えた。

「その剣で、浮き上がっているワタクシを幹から斬り離して欲しいのです。このままでは、完全に離れるまでに、もうあと数日かかってしまいます、それでは間に合わないかもしれませんので。ワタクシにはどうしてもやりたいことがあるのです、ここから動いて」

「……ん。ヨッシャわかった、とりあえず水を飲んで来るから話の続きはそのあとでな。斬り離すのはお安い御用だから任せとけ」

 そう応じつつ照壬は右向け右、ノキオが目配せで示した西方向へと歩き出す。

「オォ~それは頼もしい。けれどもテルミ、休憩場では何者とも出交さないよう用心した方が身のためでしょう。たとえそれが人族とでもです」

 ピタと足を止めた照壬はじたじたとふり返る。

「……どう言う意味だそれ?」
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登場人物紹介

名前:照壬慧斗(てるみ・けいと) 祖父に躾‐育てられたお祖父ちゃんコ 一見至ってフツウの高一だがオトナびていると言うより発想からして老けているカンジ なので、どうせなるようにかなりゃしないからと人間関係や社会に対して漠然とした恐れがなく、自分が納得できる道のみをマジメに地道にやれるだけ進み続けるタイプの自己中傾向 しかしながら目立たないので浮きもしない、だが浮いたヤカラの邪魔が入ると途端にとんでもなく脱線してしまう危うさにも気づけずにきた大甘ちゃん……

名前:ヴォロプテュロス=フワム・ケールブロム(愛称:ヴォロプ) 本年度のレギナ・ルテ・ヴヴ

当世界きっての鬼ヤバ存在の一つである大量破壊人間‐ボムバーナ ロマリア国の西部ヴヴ・トゥプルス火山の南麓に位置するフワム半島出身 

半島自体が村で、村の子供が義務的に完全習得しなければならない必須教育を主席修了した女子をレギナ・ルテ・ヴヴと呼び、その年の村の顔役として各国に招かれる言わばこの世界のミスコンクイーンみたいなモノ



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