061 育ちの違いを見せつけられて⇲
文字数 1,997文字
しかしながら……自虐でのその場のがれも、まやかした相手の顔が顔だけに、照壬はなんだか無性にモヤくりだしてきてしまう。
その上、悪党を引き摺るよりは軽いと思った木箱檻にしても、一人ではロクすっぽ動かせないあり様に、照壬は今更ながら、己の非力さと繊弱細な体格を悔やんでも悔やみきれずに、腐り呪 きだすあり様だった。
「お待たせ~、チョット折れた骨の整復と添え木もしてたから。こっちの悪人も折ってたはずよね?」
「……整復って、骨折させた箇所の?」
「そ。そっちの檻もアタシが下すから、照壬は、添え木になりそうな破片を二つつくってちょうだいな。最初に粉粉に壊しすぎちゃって、もう使えそうなのが見当たらないの」
既にヴォロプは、悪党二人に止血と添え木を施していたことが、破き使って、ヘソ丸出し状態の着衣具合から見て取れる。
「わかった……ヴォロプはそんな、整形外科医みたいなことまでできるのか?」
「それ、チョットした医者の真似事と言う意味なら当然でしょ。レギナ・ルテ・ヴヴをナメるのも大概にして欲しいわ~」
そう言いながら、ヴォロプは木箱檻が積まれた合間に入ると、全身をバネにした両脚蹴り一つで、照壬が悪戦苦闘を強いられていた木箱檻を荷台から落とし転がし、悪党が倒れ込むスグ手前へと、豪快に音までかからめかして移動させた。
その事様に、目からウロコがだだ落ちる一方で、ますます腐らずにはいられない照壬は、
「確かにな。丁寧に下す必要なんか全然ないし、それくらい乱暴に扱っても壊れやしないとは思っていたけどな……でも、やっちまうかなフツウ? 高ぶっている女子がいるとも言われていたんだしな……」
とブツブツ、呪 りまでが一層酷くなる。
「何モタついてるのテルミ? 添え木ができたら早くちょうだい。こっちも見事なポッキンだから助かっちゃうわ~、位置を戻すのに手間要らずで。治りも早いだろうし」
「……ホント大したもんだよなっ、ミス・ヴヴ巫女様は。オチオチ凹んでもいられやしない」
照壬は、лсДを振っては返し、復返しの三斬りで木箱檻の一つを横截したあと、鬱憤晴らしの踏みつけキックで破断して、二枚の添え木をつくりあげた。
それらを手早く拾うと照壬は、またヴォロプに婉曲的な配慮までされた宥 め賺 しを吐かれないよう、一目散に飛んで行く。
▼
悪党三人を、それぞれ木箱檻へブチ込み終え、誘拐被害者七名たちも、首枷と鎖からの解放も特に問題なく済ますことが叶う。
その一応の一件落着を、照壬がノキオへ報告しつつ、ウタビィにイェタータの兼番村民、もしくは所管する警兵隊への通報をお願いしてもらいたい旨を伝えていると、鬘をしっかり被り整えているヴォロプが、ズンズンとその黒髪を靡かせて寄り来た。
「チョットいいテルミ?」
「あぁ、とりあえずは伝えた。あとはウタビィさんが、いつノキオにつながるか次第だな」
そうヴォロプへ返答したあと、照壬はノキオにしっかりと詫びなしてから、耳から枝を離して連絡を終了させる。
「いいんじゃない? 檻に入れられる気分くらい、存分に味わってもらわないとね~」
「まぁな。でも時刻がわからないと不便ってか、もどかしいよな、やっぱ」
「アタシは別にだけど~。それより、まだ監禁場所で、閉じ込められたまま残されてるかもなんだって。どうする? やっぱ助けに行っちゃうぅ?」
「……当然だな、ノキオなら確認するまでもなく。じゃぁオレ一人で行って来る、荷車が付けた轍を辿れば迷わないだろうし、もはや迷ってもノキオに調べてもらえるし、場所の様子も想像がつくからな」
「てか、あのコたちの話だと残されてるのは魔族らしいの、たぶん魔人のコだって。だから、アタシも絶対行くわ」
「ガチか~……同級生と酷似女子だけでも肝を潰しかけたってのに、イヌ女子、ウシ女子、トラ女子のオンパレードときたお次は魔族かよ……異世界ショックどころか、心理的世界変容ストレスとでも言うべき怒濤の衝撃で、もはやPTSDモノだってのっ」
「シッ。余計なことを口に出さないの、まったくペラペラと~。やっと少し話が聞けたのに、テルミまで正体がバレたら、言うこと聞いてくれなくなるかもでしょ」
「……サーリグ」
「とにかく、人素族じゃない五人から、一斉に歯向かわれたらお手上げよっ。静めるためだって、手荒な真似をしちゃうわけには絶対にいかないんだから」
「……だな。でもどうする? 女子たち七人を、悪党どもと一緒にここへ残したままで大丈夫なのか?」
「それもないわね。テルミにも浮かぶ妙案がないなら、選択肢は一つだわ」
迷いなくヴォロプは踵を返すと、水辺で穏座し愁眉もすっかり開き果たして、もはや放心状態に近くなっている七名の許へ戻って行く。
そして、ここでの解散を宣告するとともに、ここから四ミリアはあるが、最寄りの集落‐イェハムリットへの七名全員での移動も説き勧め始めた。
その上、悪党を引き摺るよりは軽いと思った木箱檻にしても、一人ではロクすっぽ動かせないあり様に、照壬は今更ながら、己の非力さと繊弱細な体格を悔やんでも悔やみきれずに、腐り
「お待たせ~、チョット折れた骨の整復と添え木もしてたから。こっちの悪人も折ってたはずよね?」
「……整復って、骨折させた箇所の?」
「そ。そっちの檻もアタシが下すから、照壬は、添え木になりそうな破片を二つつくってちょうだいな。最初に粉粉に壊しすぎちゃって、もう使えそうなのが見当たらないの」
既にヴォロプは、悪党二人に止血と添え木を施していたことが、破き使って、ヘソ丸出し状態の着衣具合から見て取れる。
「わかった……ヴォロプはそんな、整形外科医みたいなことまでできるのか?」
「それ、チョットした医者の真似事と言う意味なら当然でしょ。レギナ・ルテ・ヴヴをナメるのも大概にして欲しいわ~」
そう言いながら、ヴォロプは木箱檻が積まれた合間に入ると、全身をバネにした両脚蹴り一つで、照壬が悪戦苦闘を強いられていた木箱檻を荷台から落とし転がし、悪党が倒れ込むスグ手前へと、豪快に音までかからめかして移動させた。
その事様に、目からウロコがだだ落ちる一方で、ますます腐らずにはいられない照壬は、
「確かにな。丁寧に下す必要なんか全然ないし、それくらい乱暴に扱っても壊れやしないとは思っていたけどな……でも、やっちまうかなフツウ? 高ぶっている女子がいるとも言われていたんだしな……」
とブツブツ、
「何モタついてるのテルミ? 添え木ができたら早くちょうだい。こっちも見事なポッキンだから助かっちゃうわ~、位置を戻すのに手間要らずで。治りも早いだろうし」
「……ホント大したもんだよなっ、ミス・ヴヴ巫女様は。オチオチ凹んでもいられやしない」
照壬は、лсДを振っては返し、復返しの三斬りで木箱檻の一つを横截したあと、鬱憤晴らしの踏みつけキックで破断して、二枚の添え木をつくりあげた。
それらを手早く拾うと照壬は、またヴォロプに婉曲的な配慮までされた
▼
悪党三人を、それぞれ木箱檻へブチ込み終え、誘拐被害者七名たちも、首枷と鎖からの解放も特に問題なく済ますことが叶う。
その一応の一件落着を、照壬がノキオへ報告しつつ、ウタビィにイェタータの兼番村民、もしくは所管する警兵隊への通報をお願いしてもらいたい旨を伝えていると、鬘をしっかり被り整えているヴォロプが、ズンズンとその黒髪を靡かせて寄り来た。
「チョットいいテルミ?」
「あぁ、とりあえずは伝えた。あとはウタビィさんが、いつノキオにつながるか次第だな」
そうヴォロプへ返答したあと、照壬はノキオにしっかりと詫びなしてから、耳から枝を離して連絡を終了させる。
「いいんじゃない? 檻に入れられる気分くらい、存分に味わってもらわないとね~」
「まぁな。でも時刻がわからないと不便ってか、もどかしいよな、やっぱ」
「アタシは別にだけど~。それより、まだ監禁場所で、閉じ込められたまま残されてるかもなんだって。どうする? やっぱ助けに行っちゃうぅ?」
「……当然だな、ノキオなら確認するまでもなく。じゃぁオレ一人で行って来る、荷車が付けた轍を辿れば迷わないだろうし、もはや迷ってもノキオに調べてもらえるし、場所の様子も想像がつくからな」
「てか、あのコたちの話だと残されてるのは魔族らしいの、たぶん魔人のコだって。だから、アタシも絶対行くわ」
「ガチか~……同級生と酷似女子だけでも肝を潰しかけたってのに、イヌ女子、ウシ女子、トラ女子のオンパレードときたお次は魔族かよ……異世界ショックどころか、心理的世界変容ストレスとでも言うべき怒濤の衝撃で、もはやPTSDモノだってのっ」
「シッ。余計なことを口に出さないの、まったくペラペラと~。やっと少し話が聞けたのに、テルミまで正体がバレたら、言うこと聞いてくれなくなるかもでしょ」
「……サーリグ」
「とにかく、人素族じゃない五人から、一斉に歯向かわれたらお手上げよっ。静めるためだって、手荒な真似をしちゃうわけには絶対にいかないんだから」
「……だな。でもどうする? 女子たち七人を、悪党どもと一緒にここへ残したままで大丈夫なのか?」
「それもないわね。テルミにも浮かぶ妙案がないなら、選択肢は一つだわ」
迷いなくヴォロプは踵を返すと、水辺で穏座し愁眉もすっかり開き果たして、もはや放心状態に近くなっている七名の許へ戻って行く。
そして、ここでの解散を宣告するとともに、ここから四ミリアはあるが、最寄りの集落‐イェハムリットへの七名全員での移動も説き勧め始めた。