067 パンパースは大事にしてあげるって意味だから

文字数 1,635文字

「わかった。なら闘うけど、オレが大法螺なんか吹いていなかったと納得がいったら、その時点で逃げてくれよな。変に片意地を張り続けたら、ガチで死滅しちまうぞ」

「シャッシャッ、大きなお世話さねぇ」

「オレも、要らぬ世話焼きは大っ嫌いだけどな、最終確認をしておくよ。エシャは、何らかの自分なりの方法で、オピの木と話すことはできるのかな?」

 小首を投ぐエシャは、顔に蔽いかかった髪をふり分け立ち止まる。

「……ふん。あたりきだねぇ、つくられた雑魔も、端くれだって魔族は魔族。自然の計らいで使えるチカラは、当然、自然と受け継がれているさぁね」

「ヨッシャ。オレなんかを信じなくて全然かまわないけどな、困ったら、ガチでノキオを頼ってみてくれ」

「何がヨッシャだい? わけがわからないんだよイチイチ……」

「だから、イェタータス村の東に聳える山の、一番高い森に生えているオピだ。やっぱオレが名前を付けて呼び始めたんだ、あんた呼ばわりは嫌がられるみたいなんでな」

「……テルミ、勝てるのガチで? てか一体その根拠は何なのよっ?」

 とうとう堪りかねて、ヴォロプが横から噛みつきだした。

「オレの世界にはな、ガチのスライムはいないけど、似たような物はつくり出されているんだいろいろと。ネバネバ‐ベトベトで遊ぶオモチャとか、水をたっぷり吸い込んで、プルプルになる吸収剤や保水剤としてな」

「……ホント、イチイチわからないんだけどぉ」

「オモチャはヒネりもなくスライムって商品名でな、ポリサッカロイドと言う単糖分子がたくさん重合した多糖物質が、水を蓄えてできているんだよな」

「……その分子が、物をつくりあげてる小さな粒の単位のことなら、そこだけしか言ってる意味がわからないわよっ」

「てか、こっちにはオムツってあるのかな? オシメとも言うけど、ダイアパーとかナピーとか近い言葉の物はないか? 赤ん坊が粗相をしても、タレ流しにしないように穿かせるヤツ」

「ディアスのこと? ディアスプロス、漂白した綿布でつくるのがフツウで、地域によっては適した葉っぱや木の皮があるから、チョット手を加えて使われるけど」

「それだなたぶん。オレのいた世界ではもう使い捨てがフツウで、中の吸収剤がしっかり吸いとってくれるから、あとはポイなんだ」

「だからぁ? 使い捨ては当然だもの」

 ヴォロプが理解しきれていないことは、眉根の寄せ方からも明白だが、それを今ふり向いて目に入れることなどできない照壬は、完全スルーで先を続ける。

「その吸収剤は高分子ポリマーと言って、高い分子量をもつ巨大分子が、やっぱ多数、繰り返し重合した物質なんだよな。一粒が、その何倍もの水分を蓄えられてな、スライムみたくプルプルになるんだ」

「モォ~、それが一体何なのよっ?」

「つまりな、あのエシャの体も、水分をたっぷり含めて、一つ一つエシャとしての自我をもった粒が、数多くつながってでできているんじゃないかってことだ」

「……それで、斬っても斬れないって言いたいわけ?」

「そ。一つの体と思って斬っても、つながりがはずれるだけで斬れやしないけど、つながった塊が体を成しているんなら、その一粒ずつを全部意識して、その全部を斬っちまえばいいんじゃないかな?」

「エェ~ッ、できるのそんなこと? 要は、人だと一人の全細胞を一つずつ、全部斬っちゃおうってことと一緒でしょ?」

「まぁな、けどこの剣ならできるって。オレはそうひらめいた、てか、もう確信しちまっている。あとはオレの意識の出来次第だけどなっ──」

 そこへエシャが初撃をくり出してきた。
 大きく振り被ってから、全力投球みたく伸ばし飛ばしてた左腕が、太いムチのように照壬へと襲いかかる──が、その先端を照壬は宣言どおり、横払いに斬り散らして消滅させてしまうことに成功する。
 
「ガチに! これならイケちゃいそうじゃないのテルミ~」

 欣喜雀躍まではいかないものの、一つ小跳ねて、解顔するヴォロプの態度の軟化ぶりにも、エシャは動揺を禁じ得ない。
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登場人物紹介

名前:照壬慧斗(てるみ・けいと) 祖父に躾‐育てられたお祖父ちゃんコ 一見至ってフツウの高一だがオトナびていると言うより発想からして老けているカンジ なので、どうせなるようにかなりゃしないからと人間関係や社会に対して漠然とした恐れがなく、自分が納得できる道のみをマジメに地道にやれるだけ進み続けるタイプの自己中傾向 しかしながら目立たないので浮きもしない、だが浮いたヤカラの邪魔が入ると途端にとんでもなく脱線してしまう危うさにも気づけずにきた大甘ちゃん……

名前:ヴォロプテュロス=フワム・ケールブロム(愛称:ヴォロプ) 本年度のレギナ・ルテ・ヴヴ

当世界きっての鬼ヤバ存在の一つである大量破壊人間‐ボムバーナ ロマリア国の西部ヴヴ・トゥプルス火山の南麓に位置するフワム半島出身 

半島自体が村で、村の子供が義務的に完全習得しなければならない必須教育を主席修了した女子をレギナ・ルテ・ヴヴと呼び、その年の村の顔役として各国に招かれる言わばこの世界のミスコンクイーンみたいなモノ



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