065 一発ノりで名前理論に則ってみた
文字数 1,988文字
「あんら、単に奇妙キテレツ稀有ケケレツなその剣なんぞを、偶偶手に入れただけの冒険者気取りかと思っていたのに、結構察しがいいんじゃないのさ坊や」
「ガチかよ? ……となると、あの悪党三人は、あんたが生きていくのに不可欠な精気や血を安定供給するための生活手段として、悪事へ転職させられたことにもなりそうだよな?」
「……さぁて、どうだろうねぇ」
「図星かよ……誘拐から人身売買のノウハウ、てか確かな手口も、奴隷商組織と関係深いあんたなら、指南できちまう気がするしな」
「てか、あなたガチで造化僕なの? なら、一体どうやって逃げ出せたわけ? あなたの方こそ、偶偶生まれることができちゃった稀有ケケレツで貴重な商品じゃないのよ」
論 いかかったヴォロプだが、魔物女はこくりこくり首合点を始めながら受け返す。
「まぁ、確かにねぇ……」
「ざっと見積もっても、多くの失敗分の値段が上乗せされた価格が付くはず。黄金や宝石類と同じあつかいになるあんたが、誑して脱走できちゃうほどユルくないでしょ、あの悪名高いトレッド隷締盟はっ?」
「……けんど、この世間には、稀有ケケレツなことだって起きてくれるのさぁ」
「何よそれ~?」
「奴隷解放‐不許売買とか騒立ったディスロケーター率いる一団が、トレッドが禁秘にしている研覈 本拠舎を襲撃して、バイキニの一大山窟がシッチャカのメッチャカ。ワチキは隷属契呪を施される前だったからねぇ、それに乗じてにゅるるんと逃げおおせたって次第さね」
魔物女は、前に垂れかかる長い髪を両手で掻き退けて、その胸腹に入れられるのが常規である契呪印がないことを、照壬とヴォロプへ見知らかした。
「……ディスロケーターに会ったのかあんた? それっていつの話だ? 一体どんな奴だったんだ?」
「おかしなことに興味をもつ坊やだねぇ……いつかだったかなんて数えちゃいないし、ワチキは逃げるのに懸命で、そのお顔も拝んじゃぁいないけんど、一緒だった連中から聞いたことには、薹 が立ちかけた亜麻色髪の女だったってぇ話さ。もしや坊やは今のワチキの体より、中年増くらいが好みなのかいぃ?」
「てか、ディスロケーターに興味があるだけ。だから今の形を変える必要はないからな、余計に頭痛がイタくなるってのっ……」
「どうであれ、おかしな坊やさねぇ……ほんに坊やだこと」
「……オレはもうR一五+は解除されているが、そう言うあんたは何歳だよ? つくられたんなら、オレより若いってこともあり得るしな」
「イヤだねぇ坊やってのは、野暮クサくってぇ。歳なんか聞くもんじゃないってもんだよ」
「それはサーリグ。てか、あんた名前は? 生み出される前の記憶ってか、習性みたいなモノが受け継がれていたりするから、それで言動しているだけで、自身の経験値なんて大してないような気がするんだけどな、野暮天のオレには逆に」
「……そこまでおかしなことを言い出すかい? さてねぇ……ワチキが憶えているのは、ただの八四八六一〇って番号だけさ。ヴェルドゥやらウィランやら、グァルンと呼んでいた研覈員もいたっけかねぇ……」
「ヴェルドゥか……それらって、やっぱイタリア語やラテン語やドイツ語っぽいんだよな。どれも、まんま緑を意味したと思うけど……」
「はぁて? どこまでおかしな坊やだろうねぇ」
「それに八四八六一〇? エシャロットって、語呂合わせができる数じゃないかよ。つまりあんたは葉付き根ラッキョだな、それじゃヒドいんで、スーパーの商品名でエシャと呼ばせてもらうな。ちなみにオレは照壬って言う」
「テルミかい? ……同類連中から聞いた話じゃ、ワチキらを逃がしてくれたディスロケーターが、頻りにテル・ミーとか何とか、声をかけていたそうだったっけねぇ……」
「英語圏の人だったのか……てか、そのディスロケーターが助けたんなら、オレもあんたを斃さなくてもいいのかもな。無論、オレも同じく奴隷解放‐不許売買だ。助けられたあんたが、あんたがされていたことをやっていたら、釈根灌枝 もいいところだもんな」
「何てことまで言い出しちゃってるのテルミッ」
ヴォロプには、愚の骨頂を口にしだす照壬に、黙っていられる道理もない
「ダメかな?」
「交雑種とは言っても、魔族同士の交合をくり返した末の完全な魔物相手に、情けをかけるなんてあり得ないわっ」
「ん~……」
「魔物にとっては人族でも人素族なんか、アタシたちが昼間に獲ったトカゲやウサギも同然なの、特に罪悪感もなく反射的に屠るし屠れちゃう。だから誑かしてたあの三人も、始末が容易い人素族ばかりだったのよ」
「まぁな。でもこのサキュバス系スライム、ヴォロプが何者なのか、わからないみたいじゃないか……」
「だからっ?」
ヴォロプの語気から、本格的に激怒されてしまいかねない勢いがカンジられる照壬は、ヘタだけはこかないよう、しっかりと念頭に据えなおす。
「ガチかよ? ……となると、あの悪党三人は、あんたが生きていくのに不可欠な精気や血を安定供給するための生活手段として、悪事へ転職させられたことにもなりそうだよな?」
「……さぁて、どうだろうねぇ」
「図星かよ……誘拐から人身売買のノウハウ、てか確かな手口も、奴隷商組織と関係深いあんたなら、指南できちまう気がするしな」
「てか、あなたガチで造化僕なの? なら、一体どうやって逃げ出せたわけ? あなたの方こそ、偶偶生まれることができちゃった稀有ケケレツで貴重な商品じゃないのよ」
「まぁ、確かにねぇ……」
「ざっと見積もっても、多くの失敗分の値段が上乗せされた価格が付くはず。黄金や宝石類と同じあつかいになるあんたが、誑して脱走できちゃうほどユルくないでしょ、あの悪名高いトレッド隷締盟はっ?」
「……けんど、この世間には、稀有ケケレツなことだって起きてくれるのさぁ」
「何よそれ~?」
「奴隷解放‐不許売買とか騒立ったディスロケーター率いる一団が、トレッドが禁秘にしている
魔物女は、前に垂れかかる長い髪を両手で掻き退けて、その胸腹に入れられるのが常規である契呪印がないことを、照壬とヴォロプへ見知らかした。
「……ディスロケーターに会ったのかあんた? それっていつの話だ? 一体どんな奴だったんだ?」
「おかしなことに興味をもつ坊やだねぇ……いつかだったかなんて数えちゃいないし、ワチキは逃げるのに懸命で、そのお顔も拝んじゃぁいないけんど、一緒だった連中から聞いたことには、
「てか、ディスロケーターに興味があるだけ。だから今の形を変える必要はないからな、余計に頭痛がイタくなるってのっ……」
「どうであれ、おかしな坊やさねぇ……ほんに坊やだこと」
「……オレはもうR一五+は解除されているが、そう言うあんたは何歳だよ? つくられたんなら、オレより若いってこともあり得るしな」
「イヤだねぇ坊やってのは、野暮クサくってぇ。歳なんか聞くもんじゃないってもんだよ」
「それはサーリグ。てか、あんた名前は? 生み出される前の記憶ってか、習性みたいなモノが受け継がれていたりするから、それで言動しているだけで、自身の経験値なんて大してないような気がするんだけどな、野暮天のオレには逆に」
「……そこまでおかしなことを言い出すかい? さてねぇ……ワチキが憶えているのは、ただの八四八六一〇って番号だけさ。ヴェルドゥやらウィランやら、グァルンと呼んでいた研覈員もいたっけかねぇ……」
「ヴェルドゥか……それらって、やっぱイタリア語やラテン語やドイツ語っぽいんだよな。どれも、まんま緑を意味したと思うけど……」
「はぁて? どこまでおかしな坊やだろうねぇ」
「それに八四八六一〇? エシャロットって、語呂合わせができる数じゃないかよ。つまりあんたは葉付き根ラッキョだな、それじゃヒドいんで、スーパーの商品名でエシャと呼ばせてもらうな。ちなみにオレは照壬って言う」
「テルミかい? ……同類連中から聞いた話じゃ、ワチキらを逃がしてくれたディスロケーターが、頻りにテル・ミーとか何とか、声をかけていたそうだったっけねぇ……」
「英語圏の人だったのか……てか、そのディスロケーターが助けたんなら、オレもあんたを斃さなくてもいいのかもな。無論、オレも同じく奴隷解放‐不許売買だ。助けられたあんたが、あんたがされていたことをやっていたら、
「何てことまで言い出しちゃってるのテルミッ」
ヴォロプには、愚の骨頂を口にしだす照壬に、黙っていられる道理もない
「ダメかな?」
「交雑種とは言っても、魔族同士の交合をくり返した末の完全な魔物相手に、情けをかけるなんてあり得ないわっ」
「ん~……」
「魔物にとっては人族でも人素族なんか、アタシたちが昼間に獲ったトカゲやウサギも同然なの、特に罪悪感もなく反射的に屠るし屠れちゃう。だから誑かしてたあの三人も、始末が容易い人素族ばかりだったのよ」
「まぁな。でもこのサキュバス系スライム、ヴォロプが何者なのか、わからないみたいじゃないか……」
「だからっ?」
ヴォロプの語気から、本格的に激怒されてしまいかねない勢いがカンジられる照壬は、ヘタだけはこかないよう、しっかりと念頭に据えなおす。