071 遺跡も廃墟もルインズなので紙一重
文字数 1,593文字
そして照壬が、開いた一際大きな鉄扉の先に、通路が延び下っていることを知らせようとふり向くと、ヴォロプは、照壬へ顔も向けずに本来ここが何であるのかを語りだす。
「聖跡なんだわここ、たぶん大昔の祭祀場か修道窟、もしくは、そうしてここを使っていた聖人たちのお墓……」
「……ガチ? 洞窟遺跡ってこと? てか……そっか~、まだ貴重さが判断できずに、史跡や文化財に指定して大切に保存する学術レヴェルとかじゃなさそうだもんな」
検分へとあらためるかのように、周囲を見まわしなおす照壬だった。
「ほかに、何かがわかるのかしら?」
「ン~。となると、自然洞窟の定義には当て嵌らないから人工洞窟、てか、表から見た裂け目は自然のモノで、あとは人が掘り広げたってことなんだろうな」
「でしょうね。洞窟遺跡のあとから言ったことはさっぱりだけど~」
照壬も、目の前でゆるやかに曲がる壁面へと注目する、顔をさらに近づけて。
「あとは、ここ全体がデッカい花崗岩の中っぽいな。それをこんなに、さらに下まで掘り抜いたんだから、相当な信仰心が成した業 ってことだよなぁ……」
「……カコウガンって、グラナムやグラナイトと同じ、岩の種類を意味してるのかしら?」
「そうだな、きっと。花崗岩って、同じ二酸化ケイ素でも、ガラス質は含まないけど石英をたぷり含んでいて、破断する際には瞬間的に光をバチバチ発するからな。神威が示される神秘的な場所とか、思われてたりしたのかもな……」
やはり、祖父サマ仕込みのパワースポット雑学を微言して、とりあえず照壬は自分で自分を気伏させる。
「そっ、アタシもそんな話を聞いたことあるぅ。テルミが、エシャとか名を付けたりした雑魔と違う、純然たる生粋の魔族を拘留して、服 わせるには、うってつけの場所ってことだわ」
「……それなら、ここにいる限り、魔人も温和しくなってくれるのか? 出すと常態に戻っちまうから、置き去りにするしかなかったのかな、余裕がなくって」
「かもねぇ。今はもう、充分しおらしくなっててくれたらいいんだけど~」
「だといいんだけどな、ガチで……女子とは言え、魔人なんだもんなぁ」
「……なんか、イチイチ変にこだわるわよね。一体全体、テルミは苦手なの、本心はその逆なの?」
「てか、ビミョ~ってところだなそれ。精神的には苦手だけど、そりゃゴッリゴリのマッチョ野郎とやり合うよっか、マシってカンジでさ」
「またイチイチわかんなぁい、ビミョ~に。ビミョ~って、微妙のことでよかったわよね?」
「……そっか、微妙はこっちでも微妙だから、ビミョ~も通じていたわけか。また今更、自覚
‐認識しちまうくらい超ビミョ~だよなぁ」
「また、なんだか超便利そうなのよねぇ、ビミョ~っていうのも」
「そ。もう打てば響くほどの瞬速で、使い熟せちまってもいるカンジだしな……」
花崗岩などのことと言い、このヴォロプの目から鼻へぬけるどころか総合的な感覚力‐知覚力の高さには、今し場違い甚だしくも、敬服に限りなく近い感服を覚えてしまうと同時に、げんなりもしてくる照壬だった。
「何なのぉ?」
「いんや。んじゃそろそろ、この先へ行ってみるか?」
「行きましょ。でも、黙らない方がいいかも~。これまでとは違う人族が、それも小童と小娘が、のこのこ来たことを知らせておくのが得策じゃないかしら?」
「……了解」
そう返答しておきながら、照壬は無言で通路へ踏み入って行く。
幅は標準的と言える通路であったが、照壬の身長でも少し屈む必要がある高さしかない。
なので、ヴォロプがかたらかに愚痴りだしてくれて、それを、おし宥めることで、とりあえず照壬も声を下へと響かせることができた──。
緩い傾斜を下りきると、通路の先は、左へ、右へ、とうねりだす。
そして、一際大きく左にうねり終えた所で、意想外にも、先ほどより数倍も広く高くなっているドーム状の空間へと二人は出た。
「聖跡なんだわここ、たぶん大昔の祭祀場か修道窟、もしくは、そうしてここを使っていた聖人たちのお墓……」
「……ガチ? 洞窟遺跡ってこと? てか……そっか~、まだ貴重さが判断できずに、史跡や文化財に指定して大切に保存する学術レヴェルとかじゃなさそうだもんな」
検分へとあらためるかのように、周囲を見まわしなおす照壬だった。
「ほかに、何かがわかるのかしら?」
「ン~。となると、自然洞窟の定義には当て嵌らないから人工洞窟、てか、表から見た裂け目は自然のモノで、あとは人が掘り広げたってことなんだろうな」
「でしょうね。洞窟遺跡のあとから言ったことはさっぱりだけど~」
照壬も、目の前でゆるやかに曲がる壁面へと注目する、顔をさらに近づけて。
「あとは、ここ全体がデッカい花崗岩の中っぽいな。それをこんなに、さらに下まで掘り抜いたんだから、相当な信仰心が成した
「……カコウガンって、グラナムやグラナイトと同じ、岩の種類を意味してるのかしら?」
「そうだな、きっと。花崗岩って、同じ二酸化ケイ素でも、ガラス質は含まないけど石英をたぷり含んでいて、破断する際には瞬間的に光をバチバチ発するからな。神威が示される神秘的な場所とか、思われてたりしたのかもな……」
やはり、祖父サマ仕込みのパワースポット雑学を微言して、とりあえず照壬は自分で自分を気伏させる。
「そっ、アタシもそんな話を聞いたことあるぅ。テルミが、エシャとか名を付けたりした雑魔と違う、純然たる生粋の魔族を拘留して、
「……それなら、ここにいる限り、魔人も温和しくなってくれるのか? 出すと常態に戻っちまうから、置き去りにするしかなかったのかな、余裕がなくって」
「かもねぇ。今はもう、充分しおらしくなっててくれたらいいんだけど~」
「だといいんだけどな、ガチで……女子とは言え、魔人なんだもんなぁ」
「……なんか、イチイチ変にこだわるわよね。一体全体、テルミは苦手なの、本心はその逆なの?」
「てか、ビミョ~ってところだなそれ。精神的には苦手だけど、そりゃゴッリゴリのマッチョ野郎とやり合うよっか、マシってカンジでさ」
「またイチイチわかんなぁい、ビミョ~に。ビミョ~って、微妙のことでよかったわよね?」
「……そっか、微妙はこっちでも微妙だから、ビミョ~も通じていたわけか。また今更、自覚
‐認識しちまうくらい超ビミョ~だよなぁ」
「また、なんだか超便利そうなのよねぇ、ビミョ~っていうのも」
「そ。もう打てば響くほどの瞬速で、使い熟せちまってもいるカンジだしな……」
花崗岩などのことと言い、このヴォロプの目から鼻へぬけるどころか総合的な感覚力‐知覚力の高さには、今し場違い甚だしくも、敬服に限りなく近い感服を覚えてしまうと同時に、げんなりもしてくる照壬だった。
「何なのぉ?」
「いんや。んじゃそろそろ、この先へ行ってみるか?」
「行きましょ。でも、黙らない方がいいかも~。これまでとは違う人族が、それも小童と小娘が、のこのこ来たことを知らせておくのが得策じゃないかしら?」
「……了解」
そう返答しておきながら、照壬は無言で通路へ踏み入って行く。
幅は標準的と言える通路であったが、照壬の身長でも少し屈む必要がある高さしかない。
なので、ヴォロプがかたらかに愚痴りだしてくれて、それを、おし宥めることで、とりあえず照壬も声を下へと響かせることができた──。
緩い傾斜を下りきると、通路の先は、左へ、右へ、とうねりだす。
そして、一際大きく左にうねり終えた所で、意想外にも、先ほどより数倍も広く高くなっているドーム状の空間へと二人は出た。