第22章(4)
文字数 3,182文字
理事長の必死の形相は極まってきて、激しい身振り手振りを交えながらまくしたてた。
授業料まで返却したいのだと聞いて、さしもの小春にも事情が掴めてきていた。私立の学校としては、突如としてこれだけ有名になった小雪が卒業生だったとしたほうが、広告宣伝面で極めて有用だと判断したのだろう。ちょっとした授業料を返却するくらいなら全然割に合うに違いない。どうりで玄七郎が電話で相手にしなかったはずである。
そんな事情ならもう話す価値はないと小春は判断し、2人に帰るよう何度か促した。だが理事長はテーブルに縋り付くようにして、どうあっても帰ろうとしなかった。
小春が力づくで追い出せるはずもなくしばらく押し問答が続いていたところ、玄関から物音が聞こえ、小雪と玄七郎が帰ってきたようだった。2人は玄関の靴で来客に気づいたのだろう、客間にまでやってきた。ピンクのステッキを手にしている小雪を認めた理事長は、悲壮な声を上げる。
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