第24章(1)
文字数 4,013文字
小春は、千景と連れ立ってローミックを訪問していた。
こちらを認めた川上は、席を立って挨拶もなしで口にする。
ペットボトルを差し出すと、川上は礼もなしで受け取り、目の前のテーブルに腰掛けた。丁寧なサイバーゼック陣野と比べると、こうした態度一つとっても改めてローミック川上の乱暴さがわかる。本人には悪気が一切なさそうなのが、より社会不適合な性質の持ち主であることを強調していた。
小春と千景も向き合って腰掛けた。
仮にトライアスを3000億円で売却したとすれば、45.3%を所有するローミックは、1359億円の現金を入手できる見込みだったはずだ。だが小春の陰謀を実施すれば、それが453億円にまで押さえ込まれることに他ならない。
神の目線からすればどう見ても損な取引に抑制されたはずなのに、川上は歓喜に打ち震え、心底から感謝でいっぱいの表情を浮かべていた。
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