第12章(4)
文字数 5,395文字
■決算書上のBS、実質的なBS
BSには、決算書上のBS、実質的なBSが存在する。
個人であれば、実質的なBSがすべてである。
法人においては納税の必要性から、決算書上のBSが作成され、それが公的な数字として用いられる。一方で実際の活動上では、実質的なBSで動くことを強いられる。
■含み益・含み損
決算書上のBS――簿価よりも高い価値があるものには含み益、簿価よりも低い価値しかないものは含み損がある。
■法人の銀行対策
銀行借入を引き出すために、純資産を多く見せるなど、決算書上のBSを綺麗に整えることが求められる。ただしBSを意図して良く見せようとする行為は、支払う法人税の増加に繋がることに留意する。
銀行借入が何ら心配がない場合に限って、実質的なBSを重視し、利益が表に出ない含み益を貯めることで、節税に繋げることに比重をおくべきである。桜丈ホールディングスについては、こちらの実質的BSを重視したスタイルとなっている。
■一般的な企業のBS
比較的多くの企業は、意図するかどうかは別として、BSのなかに含み損を隠しがちである。なぜなら含み益というのは狙って簡単に出るものではない反面で、含み損については在庫の問題や、売掛金相手の経営悪化によって容易に出てしまう傾向があるため。
この含み損を表に出さず、故意に隠そうとするのは粉飾決算とされる。
■含み損を見破る
主なところとして、「在庫」「売掛金」「土地・建物」「貸付金」「雑勘定」などに注意。
【在庫】在庫には売れなくなっているものが混入している傾向がある。
【売掛金】個々の相手企業によっては、回収困難になっている売掛金がある。
【土地・建物】バブル期の取得、地方の工場や、寂れた温泉街のホテルなど。
【貸付金】知人への貸付などで焦げ付いてることは多い。
【雑勘定】通常の商取引であまり見かけない項目には注目する。
■銀行にとっての商品
お金を貸し付けることこそが、銀行にとっての商品。だから銀行の本心としては、お金を貸せる相手にはとにかく貸しまくりたい。できれば限界まで借りてほしい。
もし貸すことで貸付先企業の評価が悪くなるとすれば、銀行は自らの存在を否定しているようなもの。つまりBS上にどれほど多額の負債があろうとも、それ自体では銀行評価は悪化しない。銀行評価の良し悪しは、主に次の3つ、
★蓄積された純資産の額
★BSの構造
★含み益・含み損の正確な計算
によって決まる。
(ログインが必要です)