第三十五話・新たな武器
文字数 1,316文字
港を通り過ぎる直前、連続して発砲音が響いた。狙撃されたようだ。銃弾は全てオフロード車のボディに命中した。
もう少し走行速度が遅ければ前を走る軽自動車の側面の窓を撃ち抜いていただろう。ドア部分には鉄板が仕込まれているから貫通はしないが、窓は防弾ガラスではない。銃弾が当たれば簡単に砕けてしまう。
先ほどの狙撃は港側からだった。
敵がいるのは明らか。しかも、撃った弾は全て命中している。山頂にいた見張りとは違い、無駄に撃ちまくることもなかった。今度の相手は素人ではない。
ぞっとしながらも、右江田はアクセルを更に踏み込んで加速した。
「とにかく、
「……」
焦ったような小さな呟きを、後部座席に座る多奈辺は黙って聞いていた。
右江田は
多奈辺にも権限はない。単なる協力者の一人。今は自分の車を失い、右江田に乗せてもらっている立場。武器は拳銃一丁、弾はあと四発のみ。山頂では敵が背を向けていたから当てることが出来たが、身を隠して狙撃してくるような相手には分が悪い。
勝ち目はないと分かっているのに、また撃ちたいという気持ちが湧き上がり、じわじわと思考が染められていく。
「……武器が足りませんよね」
「あ、えっ? そうっすね」
急に多奈辺から話し掛けられ、右江田は驚いた。
山頂で車に乗せて以来、多奈辺が口を開いたのは今が初めてだったからだ。
確かに武器はない。車に積んだ
運転しながら右江田は頭を悩ませた。そして、何か思い出したように「あっ」と声を上げた。
「そーいやトランクになんかあった気が……俺には警棒があるからいーやと思って忘れてた」
それを聞いた多奈辺は後ろを振り返り、座席越しにトランクを覗き込んだ。すると、そこには布に包まれた細長い形状の何かが置かれていた。
すぐさまシートベルトを外し、座席の背もたれを乗り越えてトランク部分に移動する。
「ちょお、多奈辺さん! 危ないっすよ!」
「すみません、早く確認したくて」
「んも〜勘弁してくださいよぉ……」
走行中の車内である。突然の行動に右江田は仰天した。バックミラーで後方を見て多奈辺の無事を確認し、大きく息を吐き出す。
巻かれた布を剥ぐ。気ばかりが
「これは……」
布に包まれていたのは少し古びた