天使と悪魔の諸事情

文字数 2,461文字

芳乃 類 様作
カクヨムURL
https://kakuyomu.jp/works/1177354054887749031

先入観を覆す天使降臨、いつの間にか彼の魅力にどっぷりハマる。その結末は?

 あなたは『天使』に対してどんなイメージを抱いているだろうか。
 天使と悪魔が囁くなどと聞くと自分は良心と悪意。
 もしくは善と悪という言葉が頭に浮かぶ。
 だが天使と悪魔、どちらが人間的に感じるだろう?

 自分は正直、そういう意味では天使に良いイメージは抱いていない。どちらかと言うと温度を感じず、神から与えられた任務を淡々とこなすようなイメージを持つ。そこには情はなく、正しさが先行し、きっちりと善と悪を分けるような。
 そんな自分のイメージを覆す天使、ここに降臨。
 あなたもきっと彼の魅力にどっぷりハマるに違いない。

【物語は】
 主人公のある疑問から始まっていく。
 そして彼の苦悩の始まりとも言える、分岐の日の一場面から物語は展開されていくのだ。主人公は、その日何を失ったのか?
 恐らく彼が失ったのは、最愛の人だけではない。

【物語の魅力】
 この物語は主に主人公のミカエル視点で進んでいくが、群像劇でもあるので必要な部分では視点が変わる。
 そしてこの世界の中では【人、天使、悪魔】そして神までも【喜怒哀楽】などの感情を持っているのだ。感情と性格は密接な繋がりがあり、そこに加えて天使の特性、悪魔の特性というものが絡み合う。
 その中で誰よりも感情豊かで、慈愛に満ちているのが主人公のミカエルなのである。彼の魅力は後ほど語るとし、キャッチコピーに目を向けて欲しい。
 
 『彼女はなぜ剣を向けた?俺はなぜ彼女を手にかけた?神はなぜ世界を創った?』(作品のキャッチコピー引用)
 この全ての謎が解ける時、主人公はある決断を迫られる。
 そこまでの間では、兄弟や姉妹の考えていることが徐々に明らかになり、天使側と悪魔側の策略なんかも見えてくる。それを総合した時、良かれと思うことは本当に世界のためなのか? という疑念を持つ。
 最後までハラハラドキドキさせられる物語だ。

【主人公の魅力】
 彼に対しての印象は天使に対して持っていたイメージが少々、それを覆す部分が大半と言ったところだろうか。

 自らの手で堕天させてしまった最愛の双子の姉。
 彼は彼女を探すために、目撃情報があれば人間界へ出向くという天使にあるまじき行為を繰り返していた。これが人間だったら不思議はないが、彼は最高位天使であり、職務がある。
 任務に失敗してしまうドジっ子天使なら見たことあるかもしれないが、職務放棄して最愛の人を探しに行ってしまう天使なんて見たことないんですよ。
 例えばそんな総理が居たら、国がおかしくなっちゃうでしょ。
 そんな感じなのです。これは別にコメディではないので。

 けれども通常は職務を放棄するような天使ではなく、周りから頼られ尊敬されるような人物。(天使だけど)
 すなわち、どうかしていると思うその行動からは『理性を失うほどに彼女が大切な存在である』と伝わってくる。そして彼の言動は周りをも変えていくのである。良くも悪くもね。

【彼の持つ特性は危うい】
 彼の持つ最大の魅力は脆さだと思う。
 その脆さは最愛の人という一点の隙間しかない。けれども、失ったら彼は壊れてしまう。立場も忘れて。
 この物語を読んで感じたのは、最愛の人を失った絶望による『消えたい』という想いは切なくも美しいということ。
(どうかしていると言われそうだが)
 天使は死を選べない。永遠にこの世界に繋がれた存在。
 彼は真っすぐであり、一途であり、純粋。そして慈愛に満ちているからこそ、危うさがあってそこに引き込まれる。つまり放っておけない存在なのだ。

【人にはいつか終わりが来る】
 これは当たり前のこと。人は産まれたら、いつかはこの世を去る。
 その人生の中で、悲しみもあれば苦しみもある。それを乗り越えながら生きるのは、一種の試練なのかもしれない。もちろん楽しいことも嬉しいこともあるだろう。
 
 あなたは不老不死に憧れたことがありますか?
 俺はないです。
 人の命はいつか終わりがあるから、今を一所懸命に生きることが出来る。
 自分の周りの人を大切にすることができるのだと思う。
 そして永遠に生き続けることは、苦しみや悲しみから決して逃れられないということでもある。
 人が後悔するのは、時が前にしか進まないから。後悔しないために人は積極的に悔いのない人生を生きようとする。それは素晴らしいことだと思う。
 そんなことを今一度考えさせてくれる物語でもある。

【物語の見どころ】
 一番は主人公の選択にあるかなと思う。
 彼は恐らく一番ひどい目にあったのではないか。
 信じていた相手に裏切られたり、本心が分からずに苦悩したり。勝手なことをされて絶望に追いやられたり。
 いろんな疑念を抱いたのち、矛盾に苦しんだりもする。
 彼の心情が丁寧に描かれているので、ホント苦しくなってしまうの。
 どうしてこんなに頑張っているのに、彼は傷つき苦しまなきゃならないのか。そんなことを思いながらボロ泣きした場面がたくさんあって、それでも最悪の選択をせずにいて欲しいと思うあたり、エゴなのかなと感じたり。
 物語の中で魅了される部分って心情や感情なんだろうなと思いました。

 彼のような人が実際にいて、友人だったりしたら心配で心配で胃に穴が空きそうだなと思う。
 この説明では、どんな話なのか伝わらないかもしれない。
 強さと儚さという相反する特性に心惹かれてしまう人にはぜひ、お奨めしたい。沼にハマります。仮にハマって、抜け出せなくても俺のせいではないので(笑)
 宗教的なものではないので、ヒューマンドラマの好きな方や純愛の好きな方、もちろんファンタジーや天使や悪魔を愛する方、読まれてみてはいかがでしょうか?
 この世界が作られた理由を知った時、きっと驚きと納得が同時にやってくることでしょう。(なんだか不思議で複雑な気持ちになりますよ)
 お奨めです。
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