『コトノハ薬局』

文字数 1,713文字

九藤 朋様作

あらすじ引用
言葉に宿る音色と力・「コトノハ」を処方する薬剤師・音ノ瀬ことの物語。

四季折々の暮らし、人との触れ合い。
やがて物語は、音ノ瀬一族の核心・暗部へと迫る―――――――――。
誰にも訪れる、心の越境の時。

【簡単なあらすじ】
ジャンル:純文学
言葉に宿る音色と力・「コトノハ」を処方する薬剤師である主人公の日常と、徐々に明かされていくコトノハの力。そして彼女の抱えるものとは一体?!
美しい言葉で綴られていく物語。

【物語の始まりは】
ある一本の電話により物語は始まっていく。これはコトノハ薬局を営む主人公の日常の断片の物語だと感じた。繋がりは感じるものの、一話ごととなっている。その中で段々とコトノハについてや、主人公の周りの者について明かされていくようである。ほのぼのしていて、風や音を感じる物語でもある。

【舞台や世界観、方向性(箇条書き)】
現代だろうか? 昭和初期や大正を感じさせるような雰囲気。
お洒落で風流。趣きがある。

【主人公と登場人物について】
主人公はコトノハ薬局を営んでいる。薬ではなく”言葉の音色と力・コトノハを処方する一族”音ノ瀬一族の現当主。言葉は、古くは”言霊”と言われていた。この物語に限らず言葉には力が宿っていると思う。それはよくも悪くも人に影響を及ぼす。この物語では一体、どのように作用するのだろうか?
主人公に想いを寄せている人物との関係が面白い。恋仲にはなれないが、彼の持って来てくれる海の幸や山の幸につられてしまう。彼は純情であり、純粋に想いを寄せてはいるが、方法が断り切れないようなスタイルである。それは断り辛いというよりは、つい誘いを受けてしまうタイプのも。
人とは不思議なもので、良い人だから好きになるという風に単純には出来ていない。振り回されているのか、振り回しているのか。どっちにも取れるやり取りや関係が面白いなと感じた。

【物語について】
主人公の日常を描いた物語である。風流さを感じたりする。とても言葉を大切にしているように感じる作品だ。一ページで一場面。内容は繋がってはいるが、話は日常の一コマという印象。
初めは何気ない日常から始まっていくが、従姉弟である音ノ瀬秀一郎が登場してからは少し風向きが変わっていくように感じた。恐らく物語が大きく動くのはまだ先だと思われるが、その伏線と感じられる部分は12話にも見られる。
レビューや感想を見ると、この物語は前半の雰囲気とは変わっていく物語なのだという予測がつく。

【良い点(箇条書き)】
・コトノハは読者にも感じられると思った。
主人公達がやり取りをしている中で、ドキリとしたりハッとする言葉がある。
・表現や言葉の使い方がとても綺麗だと感じた。
・起伏のある日常であり、穏やかな日もあれば緊迫した日もあり、飽きの来ない物語だと感じる。
・苦手だと感じているはずの自分に想いを寄せる俊介との関係が時々微笑ましい。
・段々と主人公の背負っているものが明かされていく。
・言葉(コトノハ)とは確かに、相手を勇気づけたりもできるが、心を殺すことも容易であると改めて感じた。
・いろいろと言葉について考えさせられる物語である。

【備考(補足)】13ページまで拝読
【見どころ】
恐らく序盤ではこの物語の魅力を存分に味わうことは難しいと思われる。しかしながら美しい言葉で綴られる日常からは、コトノハの力の片鱗を垣間見ることが出来る。主人公が背負っているものは決して軽いものではない。それはあらすじからも想像ができる。
主人公は何故この若さで音ノ瀬一族の現当主なのか? そこにも秘密があるのではないだろうか? 徐々に明かされていくコトノハの力や音ノ瀬一族もついて。主人公はコトノハの力が強い為に、言葉を発するのにも気を遣う。一見、優しい穏やかな日常に見えても気疲れをしているのではないだろうか?
この物語を通し、自分は言葉の力について改めて考えさせられた。
あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか?
読了部分ではまだ明かされていない部分がたくさんあります。
これから明かされていくであろう、音ノ瀬一族の核心・暗部とは一体?
この物語の魅力に是非、触れてみてくださいね。お奨めです。
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