誓文書士 ― そのツケ、支払っていただきます ―

文字数 1,565文字

鵠 厨子(くぐい ずし)様作

【あらすじ引用】
誓文書士。
契約の履行の意志を文書の形で残し、双方の履行を保証する者。
個人同士の小さな契約から異民族同士、国家間まで全ての契約が対象となり、誓言書は契約と共に両者の誠意と実施確約の証として交わされる。

商業都市アッゾーラで事務所を構えるヘルマンとロレンツィオは、主に個人単位での誓言文書の作成を請け負う誓文書士だ。
今回、二人の元に舞い込んだ依頼とは……?

【作品URL】
https://novelup.plus/story/111532866

【物語は】
 商業都市アッゾーラについて語られるところから始まり、対照的な二人の男性へと移っていく。二人が何者なのかについては、既にあらすじで明かされているがドラマチックな始まり方となっている。
 そこへ突然の来訪者。一体これから何が始まっていくのだろうか?

【世界観や物語の雰囲気について】
 探偵小説を読んでいるような始まり方なので、個人的には凄く読みやすい。
 依頼が来るという部分に関しては、依頼を受ける職業全般こんな感じ(雰囲気)なのかもしれないが。探偵や行政書士、弁護士など。
 
 冒頭にこの商業都市の立地や周りの都市、大陸について明かされているのは、何かそのことが依頼などに関係しているのではないか? と思わせる。
 もちろんこの土地がどんな場所なのか想像させる効果も含まれているとは思うが、何かの伏線のように感じてしまうのである。

【タイトルから想像すること】
 この物語に出てくる職業がどんなものなのかは、あらすじにある通りであり、その内容も明かされている。
 重要なのはこの職は”履行を保証する者”であるということ。
 そう気になるのは”保証”の部分。ほしょうというと「保障」「補償」「保証」と三種の言葉が浮かぶはず。

 それぞれの違い、意味。
保障:障害のないように保つこと。侵されたり損なわれたりしないように守ること。
補償:損害や出費を金銭などで補い償うこと。
(広辞苑より、言葉の意味)
保証:主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う債務(446条1項)

 そしてタイトルには”そのツケ、支払っていただきます”とある。 
 ということは通常、連帯保証人のようなものではなく何らかの形で”強制的に守らせる”人たちなのではないかと想像するのである。
 そして、答えは物語の中に。

【物語の魅力】
 ”そのツケ、支払っていただきます”については、直ぐに謎が解ける。
 いろんなことを想像させるタイトルと設定なので読み進めていくと、ああそいういことなのかと笑ってしまう。
 ストレートなのか、それともひねっているのか? 偶然なのかということである。
 彼らの仕事は誓言文書の作成なのだが、それには本人のサインもいる。
 例えば国家間の条約や、賃貸契約のように互いが望んだうえで契約するならば、簡単にサインは得られるだろう。
 つまりこの物語では、望んでいない相手も出てくるということ。
 果たして彼らはどのようにして誓言文書にサインをさせるのだろうか?
 その方法自体に魅力のある作品なのである。

【物語の見どころ】
 まずこの職業に対し、どんなイメージを持つのか?
 読む前にぼんやりとでも思い浮かべることで、物語がより一層楽しめるのではないかと思う。
 そして本当にピンチなのは誰なのか? というのも物語の面白さであり、魅力の一つなのではないだろうか?
 短編なので、あまり詳しく書くとネタバレになってしまうため、多くは語れないが、主人公となる二人は対称的であり、依頼のこなし方もそれぞれ違う。
 そのこなし方からは彼らの人柄や気質なども感じ取れ、物語の先を読者が自由に想像できるラストも魅力的である。
 あなたも是非お手に取られてみてはいかがでしょうか?
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