東方伝奇ー平凡な元リーマンが異国のツンデレ暗殺者と紡ぐ絆の物語

文字数 2,091文字

神崎あきら 様作

【あらすじ引用】
 大学卒業後、地方から上京してきた宮野伊織は8年間勤務していた広告代理店を人員整理で自主退職し、突然の無職となる。職探しも捗らず、途方に暮れる伊織のもとに元同僚から日本観光にやってくる外国人の観光案内のバイトを紹介される。断り切れない伊織は半ば強引に押しつけられてしまう。

 空港の待ち合わせ場所にやってきた依頼人は長身で無口、無愛想、しかも日本語がペラペラの中国人で曹瑛と名乗った。こんな人物が何故観光ガイドを必要とするのか不思議に思う伊織に、拠点とするマンスリーマンションに住み込みでの世話を強引に依頼する曹瑛。最初は逃げだそうとした伊織だったが、無愛想だった曹瑛の意外な人柄に惹かれ始め、行動を共にする。

 互いの食文化を通して深まる交流に、仕事を越えた友情を感じ始める伊織。しかし、曹瑛の真の目的は「龍神」という名の狂気のドラッグをこの世から消すことだった。裏社会で生きる曹瑛の正体を知り、伊織は困惑する。思い悩んだ末、孤独に戦おうとする曹瑛を助けることを決意する。平凡な元サラリーマンと孤独な異国の暗殺者の絆と成長の物語。

【物語は】
ある辛い記憶とも呼べる、一場面から始まっていく。この時点ではプロローグが物語に、どう関わって来るのかの予想は難しい。だがとても重要な部分であることは、間違いないだろう。
本編に入ると、主人公の視点へと替わる。彼は八年務めてきた勤務先を、人員整理で自主退職し、無職となった彼が途方に暮れていた。
そんな彼に舞い込んできた、バイト依頼。まだやるとも言っていないのに、強引に押し付けられてしまう。
果たして、このバイトの依頼によって齎される出会いは、主人公にとって吉となるか、凶となるのか?

【登場人物の魅力】
本編が始まり、段々と主人公について分かって来る。それは押しに弱く、お人よしであること。そして、細やかな気遣いができること。仕事に対しての姿勢が真面目であることなど。それに加え、天然であることも分かって来る。
人に好かれそうな彼が、どうして人員整理の対象になってしまったのか、について考えてみた。きっと、彼なら不満や文句を言わないと考えたのではないだろうかと、予測。しかし読み進めているうちに、その答えに疑念が。

この後彼は、不愛想な観光客に自分から話しかけようと試みる。あまりに反応がない為、言わなくて良いことまで口にしてしまう。その中で、主人公がとても正直者であり人に好かれる人物でありながら、人づきあいが巧いわけでないことを知る。つまり世渡り上手というタイプではないということ。
その事から彼が、人員整理対象になってしまったのは、そういう部分が理由なのかも知れないと思いなおす。

観光客について。彼は無愛想だけでなく、周りを警戒しているようにも感じた。主人公とのあるやり取りの中で、口元が緩む部分がある。詳しくは書けないが、ペンギンが好きなのだろうか、それとも……と謎を呼ぶ。
同時に、この人は一体どんな人なのだろうかと、好奇心を刺激する。

【物語の魅力】
心理描写を含めたいろんな描写が丁寧である。流れるように物語が進んでいく印象。現在どこにいて、どんな状況なのかがとても分かりやすい。
外国人観光客があまり話さない為、会話は多くないが、彼の反応により二人の間の空気感も伝わってくる。不愛想な彼は一見なんのアクションもしていないように見えるが、主人公が話をしている時はちゃんと相手を見ている。細かい描写により、見逃してしまいそうな相手の小さな変化に、気づくことが出来る。アクションをしないだけで、相手の話をちゃんと聞いているのだ。

主人公に関しては、とても素直な感情が伝わってくる。分かり辛いように思えるが、確実に二人の心の距離は、空港で初めて会ったときより近づいているのだ。今はまだ(エピソード5あたりでは)、観光客の目的が明かされていない。この物語には、笑いの部分も多い。その理由は、主人公が理不尽に振り回されているからなのか、この組み合わせのせいなのか。
だが、笑いに至った根本的な原因は、バイトを紹介した人物にあると言っても過言ではない。(エピソード5までの印象です)

【物語の見どころ】
まず、主人公がとても魅力的であること。そして周りにいる人物に、それぞれ個性があるところが魅力的。
始まりは暗い雰囲気で始まる。その事については、いづれ詳しく分かる時が来ると思う。主人公が面倒を見ることになった観光客は、どうやら訳ありだ。何らかの目的を持ち、それを遂行するためなのだが、主人公は”そんな話は聞いていない”という事態に巻き込まれていく。先が読めないからこその魅力や好奇心を誘うのだ。

そしてあらすじにある通り、”平凡な元サラリーマンと孤独な異国の暗殺者の絆と成長の物語”である。不愛想でコミュニケーションが取れているかどうか、序盤では分かり辛い二人が、いかにして絆を築いていくのか。
そこが最大の見どころなのではないだろうか?

あなたも是非お手に取られてみませんか?
魅力的な彼らの物語。この先一体何か待ち受けているのか⁈
お奨めです。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み