「灰色な君は」  

文字数 2,277文字

飛鳥 様作

あらすじ引用

お前には人の心は無いのか。そう言われてから十年、少女は大人になっていた。
勤め先での異動、新たな出会い、過去との決着。
目まぐるしく変わる環境に藤代さんは何を思う?

【簡単なあらすじ】
ジャンル:現代ドラマ
五年近く働いた職場での、急な部署の移動。人とコミュニケーションを取るのが苦手な主人公が配属された先は品質改善チームという作業者に寄り添った部署であった。その為、作業者に聞き込みなどをしなくてはならず、自分に向いているとは思えない部署だったのである。しかしチームの中で仕事をしているうちに主人公に少しづつ変化が起こっていく。一方私生活では、親から虐待を受けている女の子を家に匿ったことをきっかけにし、心情に変化が起こり始めるのであった。

【物語の始まりは】
葬儀での一場面から始まっていく。主人公に向けられたのは父からの辛らつな言葉。このことが、この先どのような影響をもたらすのか? 
主人公は高校卒業後すぐに働きに出たのだろうか。
彼女の日常が始まっていく。これから彼女に起きていく変化とは?

【舞台や世界観、方向性】
ガールズラブというタグ(キーワード)があるということで、恋愛要素が強めかと思いきや、ヒューマンドラマ主体の現代文学寄りである。主に舞台は職場と家。職場では人とコミュニケーションをとるのが苦手な主人公がコミュニケーションを必要とする部署に配属され、少しづつ価値観が変わり人として成長もしていく。また家では、隣に住む親から虐待されている高校生とかかわりを持つことで、心に変化が起きていく。

【主人公と登場人物について】
裏板という生産ラインにいた主人公は、四年と二カ月務めた会社で唐突に異動を言い渡される。初めての移動となるが、その先は改善チーム。主人公を含め五人のメンバーで構成されているが、主人公以外は男性。
野中という男性がこのチームのリーダーであり、主人公を引き抜いたらしいが、彼曰く”現場の聞き取りを中心に。女の子の方が言いやすいから”という理由であったが彼女の性格はお世辞にも社交的とは言えなかった為、主人公も首をかしげる。
人の集まる場所、話しかけることを避け、お昼を食べない主人公。
キーワードのに百合とあることから人を避けているのは単にコミュニケーションが苦手だがらということではないのかも知れない。(4ページの時点では不明)

【物語について】
母の死から始まり、父に辛らつな一言を言われる。過去の記憶なのだろうか? 
この物語は、日常が変わっていく日から展開されていく。職場では移動があり、私生活では今まで関りのなかった隣の住人と関わっていく。淡々としていた日常は少しづつ変わっていくように感じた。

職場では明らかに苦手とする部署になり、憂鬱なのが伝わって来る。彼女がどんな理由で人と接するのを避けたいのか(HSPなどによるものなのか? 性格なのか、過去に何かあったからなのか)、10ページの時点では明確には分からないが、苦手な人にとっては”他人と接触する”そのものがストレスであり、疲れてしまう。しかしこの職場で彼女を引き抜いた人物はコミュニケーション能力があり、気遣いは出来るもののその事に気づかない。その為、主人公の気持ちは痛いほど理解できる。

一方、母から虐待(暴力)を受け、主人公の家に匿って欲しいということをきっかけに家に上がり込むようになった高校生とは少しづつ打ち解けているような印象。主人公の淡々した心情が彼女に対しては少し変化している。

【良い点(箇条書き)】
・ゆっくりと日常が変わっていく物語。初めは淡々としているが、主人公の日常に少しづつ変化していき、それに伴い主人公の心情も変化していく。
・冒頭の辛らつな父の一言から、父親とは仲が良いとは言えないことは想像がつく。主人公が悩みを抱え……という物語かと想像したら問題を抱えている
女性たちに出逢い、主人公が変化していくという物語であった。
・初めのうちは名前のある登場人物が多いと感じるが、意外な場面で繋がりがあったりと、リアリティを持たせていると思った。
・現時点ではどんな風に恋愛要素が含まれていくのか分からないほど、ナチュラル。互いが互いを必要としているというのが伝わって来る。
・とても現実的な、物語である。

【備考(補足)】29ページまで拝読
【見どころ】
人にはそれぞれ抱えているものがあり、悩みも千差万別だと思う。そして関わってみなければわからない部分も非常に多い。
主人公は隣の家の少女に手を差し伸べなければ、この先も変わらないままだったのかも知れない。確かに、傷ついている人に手を差し伸べるのは人間として当たり前の行為かも知れない。しかし冒頭の父からの言葉を見る限り、彼女にとってそれが当たり前であったかどうかは別である。
隣の少女と関わるようになり、今までなら見て見ぬふりをしていたかもしれないことに、自ら関わっていく。その変化が良かったと感じるのか、悪かったと感じるのかはまだ先のことだと思う。だが読み手から見ると、彼女は生き生きしているようにも感じるのである。
一方会社でも変化が起きていく。今まで関わることのなかったタイプの女性の相談を受けることになる。彼女がどんな悩みを抱えているのか、読了までの時点ではまだ明かされてはいないが、主人公は周りによって変わり始めている。人の人生に大きな影響を齎すものは、ほんの小さなきっかけなのかもしれない。この先、主人公はどんな風に変わっていくのだろうか。
あなたもお手に取られてみてはいかがでしょうか? おススメです。
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