オルタナティブ・ダークシード ~金の瞳と魔拯竜の紋章~

文字数 1,682文字

管野 月子 様作

【あらすじ引用】
深淵の森と呼ばれる、精霊のあふれる地で育った金の瞳の青年サナトは、ある日、風の報せで二つの来訪者を知る。
ひとつは結界を破り森を蹂躙しようとする侵入者。そしてもうひとつは、精霊に導かれた旅の少女レラ。
レラとの出会いにより、妖魔を呼ぶ呪われた身であると自覚するサナトは、世界に忍び寄る災厄を知る。

「妖魔が湧くには理由がある」
サナトが人としての形を失う未来は避けられないとしても、偉大な竜を探し出せれば、世界を救える可能性がある。
何もしなかった、という後悔は無くなる。
そう覚悟を決めたサナトは、レラとエルクのムー、相棒の銀狼ナギと共に、遥か西方ダウディノーグ王国を目指し旅立つ。

【物語は】
ある予見のようなものから始まる。
あらすじにある通りこの後主人公は、深淵の森に入り込んだ来訪者を、追い払うために彼らを探しに行く。
主人公は侵入者を追い払うことが出来たものの、もう一人来訪者である旅人は、先の侵入者の一人と対峙し不運にも怪我をしてしまっていた。初めはその旅人も、森の外へ追い出そうとしていた主人公だったが、彼女が精霊に導かれた客人であったことを知る。
主人公はこの出会いがターニングポイントであるとは知らずに、彼女を里へと案内することとなったのだ。

【物語の魅力】
全体的に、とても描写の丁寧な作品。厚みがあると感じた。地の文が多いにも関わらず流れるように進んでいき、モノローグの書き方が巧いので、読みやすい。
情景、行動描写の中に心理描写が上手く混ざり合い、不思議と抑揚を感じる作品である。彼女の怪我の状態が快方に向かうまでは、主に主人公一人で世話をするという流れ。その間、彼は森の人と遭遇したり、精霊と話を話しをしていく中で、この物語の世界観も分かっていく。とても世界観に力を入れている作品だと感じる。
主人公は産まれた時から精霊を感じることが出来る。しかし、森の外では声を聴くことのできる者がなかなか居ない。その為に、魔人、魔物、妖魔は別物であるが森の外の人には、その区別がつかないこと。魔法というものに関しても、オリジナルの部分が多い。そのシステムはとても面白いものだと感じた。

【登場人物の魅力】
主人公は産まれて間もなく、その瞳の色のせいで捨てられてしまい、この森で暮らしている。この物語では魔法には特殊な部分が存在する。それについては作中で語られているが、主人公が何を恐れているのかも、魔法を通してわかって来る。
この物語には、三つのポイントがある。まずは、魔法のシステムについて。ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、精霊より借りた力の残りカスを処理する必要があること。そして森から去るという事に意味があること。これを全て主人公は理解している。理解したうえで、”あること”に気づくのは一章の終わりの方だという事。
あらすじにある”妖魔を呼ぶ呪われた身”。彼は何故なのかを知るのだ。知った上で、自分の決断により旅の少女と森から旅立つ。
主人公は、この旅で何を得るのだろうか?そして、運命から逃れることは出来るのだろうか?

【物語の見どころ】
やはり、一番の特徴は作り込まれた世界観。設定にオリジナリティがある。その上で、主人公は苦悩している。それは、主人公に都合の良い世界ではないという意味合いだ。苦悩理由が人間らしさにあるという事に、序盤では気づいてはいない。
正義感を持ち、真っ直ぐな人物に感じる主人公。ここで思うのは、良い性質が必ずしも良い結果をもたらすとは限らないという事。
面白いバランスでできた物語だと感じた。発想が斬新である。

それに対し、旅人である少女も不思議な魅力を持っている。一件ふんわりしているように見えるが、大変な旅をしてきたに違いない。自分が怪我をしているにも関わらず、相手を庇う優しさ、思い遣りに溢れ、その上明るい人物。しかし彼女も、何かを背負っている。
背負うものは違うが二人が、導かれたのは運命だと思われる。

二人の出会いは、この世界に一体どんな未来を齎すのだろうか?
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