六月の雨

文字数 1,598文字

根峯しゅうじ様作
【作品URL】
https://kakuyomu.jp/works/16816927860449138997

【あらすじ引用】
 背中越しに、彼女の香りが柔らかく届く。かなり身体を近づけているのかもしれない。
「先生はさぁ、ケモノみたいにガッて襲ったりはしないの? 男として」

 職務室で図書室のカギを返却し、下駄箱に向かう。
 雨はまだ止む気配が無かった。
 空を見上げると、重たい雲のどこからか、雨粒が降り注ぐのが見える。

 ケモノみたいに…。呟いてみる。
 朝から降り続く雨は夕方に至っても、変わらず一定量の雨粒をこの狭い校庭に注いでいるようだった。


【物語は】
 主人公がある女生徒に声をかけられるところから展開していく。
 あらすじと物語の関係がとても巧く、こんな展開になるとは思わなかった。
 物語は主人公の抱える苦悩や想いについて描かれており、爽やかなラストへと繋がっていく。始終ハラハラしてしまい、とても巧い構成だなと感じた。
 あなたならどんな展開になると予想しながら読むのだろうか?

【主人公と二人の女性】
 人生とは不思議なもので、縁は奇跡であり必然なのだと思った。
 この物語では主に二人の女性が出てくるが、両方とも主人公に影響を与えている。

 恋は一人でも出来るが、恋愛は一人ではすることが出来ない。
 主人公は教師であり生徒からは恋愛経験を含む、性的な体験をしたことのない人物だというイメージを持たれているようだ。
 純情に見えるのか、お堅く見えるのかそこまでは分からない。
 しかし彼が理性的であるのは、自身の体験によるところが大きいようである。

【主人公の恋愛】
 人は自分の体験でしかものを語ることはできない。なので、一般的なイメージでしか書くことはできないが、主人公のようにちゃんと物事を受け止めることが出来る男性はそう多くはないのではないだろうか?
 例え手遅れでも、何を求められていたのか? 何が間違っていたのか気づけるというのは、相手をそれだけ想っているからに他ならない。
 その反省が活かせるなら、きっと素敵な恋が出来るに違いない。
 目を背けることなく自分自身と向き合うことが出来たのは、性格などもあるだろうし、焦っていたのはそれだけ好きだったからだともいえる。
 ただ、その想いに自分が鈍感だったのだろう。
 冷静になれていたならもっと多くのことに気づけたのかも知れないし、こんなことにはならなかったかもしれない。

【女性の持つ悩みや不安】
 この物語を読むと、男女のすれ違いの理由が一目瞭然である。
 日本は特にありがちなことであるとも思う。
 自分の思っていることは言葉にしなければ伝わらない。
 手遅れになってしまってはもう、二度とやり直すことはできない。
 やり直すことが出来るのは、それだけ相手の中で存在が大きな時だけなのだ。
 そんなことも改めて考えさせる物語である。

【物語の見どころ】
 ラストに意外性のある物語。
 あらすじを読んで想像する物語とは全く異なり、そこが一番の見どころでもあると思う。良い意味で騙される。作者のテクニックが凄い作品である。
 恋愛とは身勝手では成り立たない。
 もちろん気づいて欲しいと願っても相手には伝わらない。
 大切な相手だからこそ伝える必要があり、漫画などでよくみられる普通の恋愛とは意外と現実にはないのだろうと思う。
 何故なら、彼らは相手をよく観察し相手のして欲しいことを見抜いているからである。現実にそんなことが出来る人は多くはない。
 笑顔=楽しいとは限らない。相手が女性ならなおさら。
 互いに伝える努力をすることがどれだけ大切なことなのか、改めて考えさせられる物語である。読んでいる間は苦しい気持ちになったり、いろいろと考えさせられることが多く、読了後には優しい、幸せな気持ちになれる物語だと感じました。
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