冴えない俺と、ミライから来たあの娘

文字数 1,737文字

木立 花音様作

1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと)
本当の親子かどうかでも変わって来る。実の父に恋をするのかどうか?
母の再婚相手なのだろうか? と思った。実の親子だったらちょっと怖いなと感じてしまった為。
ただこの恋が、この二人の間とは限らない。別の可能性も考えられる。あらすじからはミステリアスな部分もある。
逆に父が娘に恋をするというパターンもあるかもしれないが。

2 物語は(どのように始まっていくのか?)
娘側の最後の一日から始まっていく。ちょっと複雑な心境になる始まりだと思う。
その後本編に入り、主人公の日常と恋事情について語られていく。そこにあるのは、都会での理想と現実。都会でなら人生が変わると思われがちだが、実際はその逆だと思う。都会の喧騒から離れ田舎暮らしで幸せを手に入れた人も沢山いるだろう。能力があるから輝けるということを忘れ、都会だから上手くいくと考える人は多いのかも知れない。彼もまた、通勤だけでゲンナリしながらそれでも耐えているような毎日を送っているようである。そんな彼に突然訪れる、非日常とは。

3 世界観について
舞台は現代である。未来から少女がやって来ることから、SFでもあるようだ。
現代の東京が舞台。地方から都会にやってきた人間の理想と現実について描かれている。
地方から都会に暮らすと一番つらいのは電車だと思う。元々その地に暮らしている人は、慣れているから耐えられるのだろうか?
それとも、そうまでして都会に住み続けたいの府だろうか? とても不思議である。

4 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。
*上記でも書いたように、都会での理想と現実の部分にリアリティを持たせた心理描写が良い。
自分も経験したことがあるので、思わず感情移入してしまった部分である。
*一般的な人が主人公なのが良い。
よくあるハイスペックな人物というわけではなく、かなり身近に感じるごく普通の一般的な人物が主人公。すなわち感情移入がし易いと思われる。
*予定調和説明
小説内で分かるだろうと説明を省き、結局伝わらないというものはよく見かけるが、このことについて説明が足されているのが良いなと感じた。言葉は聞いたことはあるが、詳しく知らなかったため少し驚いた部分がある。
*家族という概念について。
家族とは初めから家族だから家族なのだろうか? と。もし仮に未来からまだ見ぬ家族が現れたなら、恋愛対象になったりよこしまな気持ちを抱いたりするものなのだろうか? そもそも近親関係の交わりが禁止されているのは、近親者で交わろうとしているからであり、そう考えると知っているかどうかは関係ないのかも知れないとも感じた。
*突飛なことが起こるわけではない日常
未来から少女と彼との暮らしはごく普通。少し悪戯心もあるようだが。
父子家庭のような自然な日々に、未来から来たことを決定づけるような行動が散りばめられている。

5 お奨めしたい部分
二万文字の読了では、少女の目的は想像し辛い。父に会いたかったという単純なものではないのではないかと想像する。
もしかしたら、普通の日常こそが彼女の欲しかったものなのかもしれない。伏線と感じる部分もあり、この先どうなっていくのかとても気になる作品である。
この作品で気になるのは”予定調和”。彼女がこの世界に来ることは必須なことは予想がつく。主人公はまだ過去の状態だが、主人公が少女に出逢う前と少女の人生の間の時間には、この出来事が作用することが必要だと考えられるから。考えるとややこしくなるが、少女が産まれるためにはこの出来事はなくてはならないことなのだと思う。

6 物語のその先を想像して
005 【滞在期間三日目:たまには、手料理なんてどうかな?】まで読了での予想。
気になるのはあらすじの”夜明けとともに予告なく訪れた別れの先で、彼がたどり着いた結末とは? そして千花が戻ったミライの世界で彼女を待っていた物とは?”の部分。未来が変わってしまうのではないかと想像する。それは良い方向だと想像するが、未来が変わってしまうのは罪にあたる様なので、ハッピーエンドとも言えないのかも知れない。

あなたも是非お手に取られてみてくださいね。お奨めです。
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