スフィア

文字数 1,606文字

朱音あすか 様作

【あらすじ引用】
惑星スフィアで暮らす人たちの連作短編集。

スフィアへの移住計画が始まって百年以上が経過した。
首都・スフィアシティでは人間が暮らしやすいように環境が整えられ、その生活はAIによって管理されている。


伊澄は家族と離れ、ビオトープで療養生活を送っていた。患者によって症状が違う未知の病気、その唯一の専門医がビオトープにいるからだ。
症状は改善されたけれど、家族との関わり方、とくに双子の兄に頼ってばかりではいけないと悩んでいた。

そんな中、森の中の廃墟でアリサと出会い、伊澄は惹かれていく。
わたしはきっとふつうの人間じゃない、と言うアリサと廃墟はある日突然消えてしまう。

【物語は】
主人公が地球からスフィアへ引っ越してきてから日課となった、散歩から始まっていく。それは晴れた日の午後。この星には、ないものの方が多い。しかし主人公の住む場所には、スフィアでは珍しく”自然の森”が存在していた。そこは、彼のお気に入りの場所となったのであった。
主人公は何度も通っていたはずのその森である日、廃墟を見つける。これが彼人生においてターニングポイントだと思われる。

【登場人物の魅力】
主人公には小心者で真面目な印象を抱いた。その理由として彼は、廃墟で出逢った少女に対し”自由で羨ましい”と憧れを抱いている。そして何度も会ううちに彼女に恋心を抱いてしまった。しかし彼には、門限を破る勇気さえない。
次に、主人公には双子の兄がいるのだが、兄は彼と正反対の気質を持つ様だ。兄には主人公ににはない行動力があり、優しさも持ち合わせている。そんな彼にも主人公は憧れを抱き羨ましいと感じているからである。

主人公は双子の兄に、負い目や嫉妬心を持ちながらも、自分の足で立ちたいと感じている。その優しさは嬉しいけれど、自立したいと望んでいるのだ。きっと、兄には兄の人生があると考えているに違いない。それは、主人公が兄を慕っているから、大切に思うからこその気持ちなのだ。

主人公は兄と、ある事情により離れて暮らしている。その兄と久しぶりに会う機会が訪れるのだが。ここで、自分より優れていると感じている兄に不安を感じてしまう。それは廃墟で出逢った女の子のことである。もし、二人が惹かれ合ってしまったら?主人公は、そんな不安に駆られてしまうのだ。
兄が、その時彼にかけてくれた言葉とは?

【世界観・物語の魅力】
主人公の暮らしている場所は、地球とは違い人工物で作られたものが当たり前の星。その中で主人公は、自然の森を見つける。その森で見つけた廃墟は少し、様子が変わっていた。

主人公の暮らしている地域では、手動で天気が設定されており、首都部では自動で制御されているようだ。主人公が散歩をしているのは晴れの日のみ。つまり、天気がこの一話では重要なのではないかと思う。

この物語は、主人公が成長していく物語である。初めは、自分と周りの違いに憧れを感じているが、あることをきっかけにして今の自分を超えていく。
しかし、そんな彼に待ち受けていたのは……?

この作品は、連作短編集である。その為、一章と二章では主人公が違う。しかし、関連はしているようだ。便宜上、一話の主人公を主人公と記載しているが、スフィアで暮らす人々が主人公となる物語である。

【物語の見どころ】
この物語の一番の見どころはヒューマンドラマの部分であると思う。”スフィアで暮らす人々”の日常であり、彼らが成長していく様子に魅力がある。
ある者は、恋の為に成長し、ある者は大切な人の為に想いを違う形にしていく。人の幸せは様々だ。この星に暮らす人々も、それは同じなのではないのだろうか?

今回レビューの中では第一話をご紹介させていただきましたが、物語は次の主人公へと続いていきます。
スフィアで暮らす彼らの成長していく物語を、その目で確かめていただきたい。ぜひ、お手に取られてみてくださいね。おススメですよ。

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