吸血鬼は陰陽師と踊る

文字数 1,902文字

吸血鬼は陰陽師と踊る01 ~吸血鬼と鬼の末裔のコンビの妖怪退治の物語~

銀多ぺん 様作

【あらすじ引用】
中学三年生の明生あさひは、『気持ちはごく普通の中学生のつもりのただならぬ吸血鬼』。
引越しした当日に出会った妖怪と戦う少年、深待宵は人間ながら妖怪と互角に戦う陰陽師(かなり見習い)だ。とにかくめっぽう強い。
興味本位で彼の妖怪退治を見学することにしたけれど、そこに怪しい妖怪達が次々に襲ってきてさあ大変!
どうやら妖怪達が次々やってくる理由は、宵の過去と秘密が関係しているらしい。

【物語は】
意味深なシーンから始まっていく。どんな場面なのか、そこにいるのが誰なのか分からぬままに。冒頭の部分が過去なのか、未来なのか、それとも物語の途中なのか。謎を残したまま、物語は始まっていく。
本編に入ると、この町に引っ越してきたばかりの主人公は、母からの買い物の途中、買い忘れがあることに気づく。仕方なくもう一度スーパーに向かうが、商店街のタイムセールに遭遇。
買い物ラッシュにより、人酔いしてしまった為、何とか狭い路地を見つけて逃げたが、そこである現場に出くわすのであった。

【世界観・舞台・物語の魅力】
主人公の反応をみていると、陰陽師がその辺にいても不思議に思うことが無く、驚くこともない世界観だということに気づく。そして吸血鬼が、人間の敵というわけではない世界なのだろうか。少し不思議な世界観である。
冒頭の光景は誰が見たものなのか、それは間もなく明かされていく。

この物語の面白いところは、”思い込みや言葉(物の名)のイメージ”が覆されるところにある。陰陽師が妖怪と戦っている場面を見て”陰陽師は妖怪と戦うもの”と思ってしまうが、主人公の心理描写により”彼が何故妖怪と戦っていたのか”という疑問を感じている部分が出てくる。つまり陰陽師が妖怪と戦うのは、当たり前ではないということだ。
この物語の中で吸血鬼である主人公は、普通の人間として生活を送っている。人間として、毎日をエンジョイしているのだ。その理由や経緯については作中で明かされる。

【登場人物の魅力】
主要人物は恐らく、二人。吸血鬼である主人公と、転校先のクラスメイトである陰陽師の彼。二人は性格が反対のように感じた。
主人公は過去に何かありそうではあるが、とても明るく人に好かれるタイプのようだ。見目も良く、素直で家族想いの印象。
それに対して陰陽師の彼の方は、少しクールでぶっきらぼうな印象を持つ。だが冷たいというわけではない。もしかしたら好んで人つきあいをするタイプではないのかもしれないし、不器用なだけなのかもしれない。

急激に仲が良くなるような会話を交わすわけではないが、なんとなく互いに信頼をしているように感じる部分がある。
それぞれ、能力が違い戦い方も違う。陰陽師の彼は(途中で、陰陽師ではないと否定する部分があるが)戦い方も読者の期待通り。とてもカッコいい。

話が進んでいくと更に二人の特徴が分かって来る。
主人公は面倒見が良いタイプであり、その一方、陰陽師の彼は自分の使命以外には無頓着。しかし反抗的というわけではなく優しい一面もあり、やはり不器用なのだという印象が強い。二人はとてもバランスが良いと組み合わせだと感じた。

他に面白いなと感じたところは、当たり前なのかもしれないが、吸血鬼や妖怪にも多様性があるというところ。力の差や考えかた、戦う理由など、それぞれ違うものだが、あえてそれを多様性としている(感じる)部分がとても素敵だなと感じた。
人間だけではなく現実にも、身近な所だとイヌやネコも性格は違うと聞く。そういった部分がナチュラルに描かれているところが、魅力の一つではないだろうか?

【物語の見どころ】
今まで接点のなかった二人がある出来事を期に、互いの素性を知る。主人公が転校してきたのは、運命だったのだろうか?
吸血鬼だから人間の敵というわけでもなく、妖怪だから絶対に倒さなければならないというわけでも無い世界。しかし、陰陽師も吸血鬼も存在して不思議ではない世界なのだ。
そこで主人公は初めての陰陽師に出逢い、陰陽師の彼は初めての吸血鬼に出逢う。彼らは、はじめは友好的には見えないのだが、出会ってたった二日で、自然と相棒のような関係になっていく。戦いを通して主人公の力が陰陽師の彼に認められ、信頼関係を築いているように感じた。
陰陽師の彼の目的が分かってくると、更に面白さが増す。彼には一体どんな秘密があるのだろうか。彼の追っている敵との関係は一体⁈

あなたもお手に取られてみませんか?
彼らは、目的を果たせるのかを是非、その目で、確かめてみてくださいね。
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