処刑勇者は拷問好き王子を処刑する。(タイトル全文は文中にて)

文字数 1,984文字

処刑勇者は拷問好き王子を処刑する。命乞いをしてももう遅い。【人体破壊魔法】特化でサクサク、サクリファイス

影津 様作

【あらすじ引用】
「俺の指は十本全てメスと同じ切れ味を持つ。お前ら全員、サクってやるよ」

喜入晴彦(きいれ はるひこ)は、勇者キーレとして異世界ファントアに召喚され、魔王討伐に成功し世界を一度救った。にも関わらず、拷問好き変態ドS王子のエリク王子に拷問された挙句、処刑されてしまう。

女神フロラ様のおかげで復活したキーレは、元パーティーで回復師のマルセル姫さえもエリク王子に寝取られていることを知り、王子が鑑賞しているオペラに潜入する。

役者はそろった。かつての恋人であるマルセル姫を、殺して愛することにした勇者は王子に見せつけるようにして殺害。オペラ座から始まる復讐劇と人体破壊魔法に特化した元勇者による、自分を裏切ったかつての仲間への拷問と処刑の数々が幕を開ける。

【物語は】
異世界に召喚され力を手に入れた主人公は魔王を倒し、その世界は平和になったはずであった。しかし主人公はパーティーの一人である回復師に裏切られ、理不尽な理由で罪を着せられてしまう。
そして物語は、拷問好きの王子に処刑されるところから始まるのだ。死の底から生き返った主人公は、人体破壊魔法しか使えない体になっていた。だがその事を逆手にとり、自分を裏切った仲間の召喚師及び王子への復讐が始まろうとしているのである。

【登場人物と主人公】
主人公は異世界に召喚された、元は根暗な青年。
かなり不思議なバランスの物語。主人公は、拷問好き変態ドS王子に復讐を遂げるために蘇る。
主人公、主人公を裏切った回復師、王子。誰一人として性格は良くはない。初めはこの設定部分に疑問を感じていた。いくら悪意を持って主人公を裏切ったとはいえ、ここまで主人公に悪態をつく回復師である彼女は、死が怖くないのだろうか? 
この物語のバランスが、何故こんな風に感じるのか。それに気づいたのは、もっと後まで読み進めた時点であった。

そう、この物語は、主人公VSこの世界の住民なのだ。

それに気づいた時、作品へ印象はガラリと変わる。つまり悪VS悪の物語なのである。その上、主人公の拷問シーンがとても痛々しいので、仕返ししても良いんじゃない? と思ってしまうのだ。少なくとも仕返しなんかやめなよ、と止めたい気持ちにはならない。つまり”やっちまえ!”という気持ちになる物語なのだ。煽りの巧い物語だなと感じた。

【世界観などについて】
まずタイトルにある”サクリファイス”とは何かを調べてみた。訳は”生贄”。しかしこの物語では、別の意味を持たせている。それについては、作品の注意書きに書いてあるので、そちらを参照していただきたい。

主人公は冒頭で処刑されてしまうが、ある理由から生き返ることとなる。全体にショッキングな場面が多い為、暗い物語なのだろうかと思っていたが、随所にユーモアが散りばめられている。女神とのやり取りでは、クスッとしてしまう場面も。
主人公の心理が愛情より欲望寄りなので、女性よりも男性向けの物語なのかなという印象を持った。あらすじには王子と回復師以外にも、勇者に処刑される者がいることが分かる。4ページまでの時点では、さっそく主人公が王子のところに向かうことから、他の人々がどういう風に関わって来るのかわからなかった。しかし読み進めていくと繋がりが見えてくる。

【物語の見どころ】
この物語はチートスキルありのざまあ系ではあるが、よくある善VS悪という物語ではない。悪VS悪なのである。ここが見どころであり、オリジナリティを感じる部分でもある。
主人公はこの世界を救うために召喚され、己の使命を全うし、世界に平和が訪れたはずであった。感謝をされることはあっても、拷問されたり処刑されるいわれはなかったはずなのだ。
しかし、この国はおかしかった。尋常ではなかったのだ。
主人公は勝手に恨みを買い、罪人に仕立て上げられ、理不尽な仕打ちを受けて殺されたのである。蘇ったのち復讐劇に転じて、己の恨みを晴らすのか、と思いきやそんな簡単に終わる物語ではないのだ。

片や復讐に燃える男。そしてそれを迎え打とうとする変態王子。
殺るか、殺られるか、ハラハラドキドキ感。
どっちが上手なのか? ”ある意味互角”の戦いが見どころなのだと思う。
悪VS悪だからこそ、不思議な爽快感もあると言える。
主人公には一緒に戦う味方はいない。周りが敵だらけ。その代わり、強いスキルがある。変態王子には特殊なスキルはないが、わんさか味方はいるのだ。
どっちが勝っても不思議ではない物語。

あなたも、お手に取られてみませんか?
どちらが勝つのか? 
しかし勝ったところでこの国はどうなるのか?
まったく展開の読めない物語。しかしそこに面白さがあります。
是非、読まれてみてくださいね。おススメです。
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