PEACE KEEPER

文字数 3,006文字

狐目 ねつき 様作

あらすじ引用
剣と魔術がいまだ栄えている大陸、ワンダルシア。
その大陸のとある国、ゼレスティア。
そこに住まう人々は、日増しに高まっていく魔物や魔神族の脅威から国を守るために巨壁を建て、その内側にて平穏に暮らしていた。

主人公の少年アウルは、国の英雄を何代にも渡って輩出し続けてきた名門一家『ピースキーパー家』の生まれだ。しかし、アウル自身は日々をだらだらと過ごすだけの適当な毎日を過ごしていた。

アウルが学園を卒業間近に控えたそんなある日のこと。卒業後の自らの進路について楽観視をしていたアウルの元に、数年間顔を合わすことも無かった兄が突然家に帰ってきたのだ。この突然の兄の帰宅こそが、アウルの平凡だった日常に大きな変化をもたらすのであった。そして本人ですらも知る由のない、アウルに秘められた力とは一体、何なのか――。
一人一人に個性があり、人間味の溢れるキャラ達が織り成す、心情描写たっぷりの群像劇風ダークファンタジーです。

【簡単なあらすじ】
ジャンル:ハイファンタジー
主人公は”何代にも渡り英雄を輩出してきた”名門の家に生まれるも、何の希望もなくダラダラと過ごしていた。しかしある日、事態は一変する。何年も家に帰ることのなかった兄が突然帰って来たのである。兄から暴力を受け友人の家に泊まった日、一夜にして別人のように変わってしまう。彼が心を入れ替えたきっかけとは?

【物語の始まりは】
ある衝撃的な場面から始まる。何故こんなことになったのか? 
本編に入ると主人公のいつも日常から、非日常になった経緯が語られていく。その中で主人公の不思議な力に着目する者たちがいた。主人公に隠された秘密とは?

【舞台や世界観、方向性】
ピースキーパー家は何代にも渡り英雄を輩出してきた名門。
『城塞都市ゼレスティア』一万人以上の国民が暮らしている。
城郭の建造に使用されている石には魔族などが触れることすら出来ない物質?が含まれており、この中にいる限りは安全。(現実世界でいう所の虫よけのような効果があるようだ)この城郭はゲートと呼ばれており、中には四つの都市が存在する。
アーカム市には『学武術園』があり、6歳から15歳まで教育を受ける。
この物語は群像劇である。色んな視点からこの世界や人間関係、主人公について明かされていく。

【主人公と登場人物について】
初期の時点においての主人公は、名門の家に産まれながら楽観的であり授業中に居眠りをするなど、あまり真面目とは言えない。友人との会話から、成績が良いとも言えず、落ちこぼれであった。
珍しく家に帰宅した兄に、暴力を受ける場面があるが、兄は優れていても努力を怠らず、名門に相応しい人物であった。それに引き換え弟の努力の見えない姿勢は彼の逆鱗に触れても仕方がないと思える。(だからと言って暴力は良くないが)しかしこの後、彼にはある転機が訪れる。恐らく彼はその気づきによって、大きく成長していくのだと思われる。

友人ライカ。彼の家は、一言でいうなら昭和の家庭のような感じである。父が息子に灰皿を投げるシーンには驚く。(現代なら虐待だが……)
喧嘩するほど仲が良いという印象の家庭。そして何でも言い合えるようだ。

ある出来事をきっかけに、主人公と親友の関係にも変化が訪れる。彼らは確かに仲の良い親友の関係ではあったが、それまでは互いに依存していた部分もあったと思う。その出来事以降、二人は互いを認め合った関係という印象を持つ。

【物語について】
久々に帰宅した兄と遭遇してしまった主人公は、彼から暴力を受け必死で逃げ出した。それほどまでに、加減のない暴力であり彼からの怒りを感じていたと思われる。街を歩いていたところ、兄も所属している親衛士団の二人と出逢う。そこで主人公は怪我の治療をして貰うものの、彼らに不思議な力を見られてしまう。だが主人公にとってはそれが当たり前のことであり(幼いころからそうだったのであろう)、隠している様子もない。それとは反対に、彼らは主人公の本人も知らないであろう秘密に気づくのであった。

家に帰りたくない主人公は友人に頼り、一晩泊めてもらうことになる。この時、友人の家族を見て憧れを抱く。自分が求めていたのはきっと、このような家庭だったのだろうと。
その夜、主人公は友人に家に帰りたくない理由問われ、彼の優しさや気遣いなども踏まえ、自身に起こったことを話す。すると事態は思わぬ方向へ。
眠れなくなった主人公は手近な本を取り、やり過ごそうとするのだが料理の本ばかりであった。何か他にないかと探していたところ、ある一冊のノートを見つけてしまう。それは自分と同じように努力をせず楽観的な考えをしていると思い込んでいた友人の努力の結晶だったのである。そこで彼は気づくのだ。自分が本当の意味で努力を怠っていたということを。そこからの変貌ぶりは、周りが唖然とするほどであった。

【良い点(箇条書き)】
・主人公の心を入れ替える前と後との差の表現がとても巧いと感じた。親友のノートを目にするまでは、確かに主人公は自他ともに認める楽観主義であり、努力を怠っていたように思える。読者を納得させる技術は凄いなと感じた。
・主人公が心を入れ替えた経緯、理由に感動を覚えた。それは素晴らしい先生でもなければ有名人の言葉でもない。身近な人物から受けた影響だからこそ、心に刺さるものもあるだろうし、頑張らないとという実感がわくと思う。とてもリアリティを持たせていると感じた。心に染みる物語である。
・真実が明かされていく過程が凄いと思う。主人公に対する印象もガラリと変わる。兄弟共に、抱えているものが明かされていく部分は切ない。
・兄と弟の関係の変化が素敵である。しかし、冒頭のシーンを考えると切ない気持ちにもなる。

【備考(補足)】25話まで拝読
【見どころ】
最大の見どころは、主人公の成長と変化にあると思われる。この物語では主人公の考え方が変わるまでが丁寧に描かれており、その変化も友人のある記録によってもたらされる。とても身近に感じていた人間への尊敬は、影響力が大きいと思われる。そして変化の後も彼の元々持っている、良い部分は変わっていないのが良いと思う。

徐々に明かされていくが、主人公は五歳の時に母を失っており、忙しい父は兄にしか構うことなく、兄からは虐待を受けていた。主人公は孤独ながらも一人の生活に慣れていたと思われる。父にも兄にも見向きされなかった彼は、落ちこぼれであることを受け入れ、諦めの気持ちも持っていたのかも知れない。自分に暴力を振るう兄であっが、畏怖だけではなく尊敬もしていたようだ。そしてそんなことをされてもなお、仲良くしたいと願っていた。そんな彼の本当の姿はあることをきっかけに明かされていく。

兄も心境や本音もまた、物語が進むと明かされていくため、すれ違う彼らの思いに切なさを感じる。父の期待、名門を守らなければならなかった兄は、何故自分だけが、と思っていたのだろう。厳しくとも、父に目を向けられていた兄。何も期待されず背負わされることがなくとも、目を向けられない弟。どちらも幸せとは言い難い。
一方で、騎士団の方にも問題が発生していた。同時進行していく彼らの日常。知らず知らずに近づいてくる魔の手。果たして平和は守られるのであろうか?
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