山に人魚  葛城天智様作

文字数 1,431文字

【あらすじ引用】
この辺で1番高い山には人魚が祀られた社があるという。
誰も見た事がないそれは、誰もが知っている噂だった。
何故山に人魚がいるのか。

1 読む前の印象や予想など(表紙やあらすじなどから想像したこと)
表紙がとっても素敵。貼り絵のような水彩画のような。
人魚と言えば海というイメージだけれど、この物語では何故か山の、しかも高いところに祀られているらしい。
それは、山に居たからなのか? それとも何かわけがあってのことなのか。もしくは、ただの噂なのか?
それがこれから分かっていくのではないかと思われる。

2 物語は(どのように始まっていくのか?)
主人公は、ある噂の真相を確かめるべく滋賀県のとある山へやってきた。その噂は良くないものが多く、迷信なのではないか? 偶然なのではないか? と思われるものも含まれる。科学技術の発展や医学の進歩により今まで謎とされてきたものが解明されてはいる。しかし、解明されておらず不可思議なままのモノも多い。そう考えると、この噂が単なる偶然や迷信だとは言い切れないのではないだろうか?
主人公もきっとそんなことを思ったからこそ、この山へ真実を確かめに来たのかも知れない。主人公はまるで導かれるかのように、ある場所へとたどり着くのであった。

3 世界観について
現代ファンタジーもしくはあやかしものの様な世界観。舞台は実在する県であり、現実と空想の狭間の様な雰囲気をもつ。
主人公がある場所へたどり着くと、確信へと入っていく。果たして真相は⁈

4 良かったところ。印象に残ったところ。好きなセリフなど。
・構成がとても良い。
・現在から過去への流れがとても自然であり、物語に入りやすい。
・現実と幻想の区別がつき辛いため、実際にあったことなのでは? と錯覚してしまう。
・ユーモアのセンスが凄すぎる
「ここの海って~遠のいたのだ。」までのやり取りなどがとても面白い。
・二人の心の距離が近づいていく様子がとても丁寧に描かれており、読んでいて癒される。
・「私だったら~とてもいいと思うわ」までのセリフがとても好きである。
・惹かれ合う二人と、彼の人生を通した理想と現実、ヒューマンドラマ部分がとても好きである。

5 お奨めしたい部分
すこしネタバレになってしまうかも知れないが、この物語は噂の真相を確かめようとした人物がその場所へたどり着き、ある人間と人魚の人生について語られていく。種族の違う二人は惹かれ合うが、子を成すことはもちろんできない。それでも寄り添い、ある秘密を抱えていた人間はこの人魚と日々を共にすることで、心が癒されていく。とても優しい純愛であり、憧れさえ抱いてしまうほどに二人の絆は強いものだ。
そして、人間の職を通して語られていく理想と現実。人のはどんなに才能があろうとも、他者の手によって違う部分を売りとされることがある。それは自分たちにとって身近なことだと思う。共感できる部分が多く、理不尽さも感じてしまうがそれが社会であり、人間の求めているものなのかもしれない。凄く考えさせられる物語である。
愛とは何か? について今一度深く考えさせられる。

6 物語のその先を想像して
人魚には極楽浄土のような概念はないかも知れない。しかし三人はあの世で仲良く暮らしているのではないかと想像する。

あなたもお手にてられてみてはいかがでしょうか?
愛する人のいる方には特に心を打つ作品であり、まだ恋をしたことのない人にとっては憧れを抱く物語だと感じました。
おススメです。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み