第6話 夢のような妄想が広がる

文字数 1,389文字

2000年3月。失業してから3ヶ月経過した。
「パソコン技能訓練」の職業訓練もあと少しで終了する。

パソコン操作も3ヶ月目に入ると、かなりの事がわかってくる。
パソコン上のボタンのありとあらゆるボタンを押してその結果を記録する。
パソコンが固まれば起動ボタンを押し続けて「強制終了」をする。
なんかよくわからない結果になれば「システムの復元」をする。
とんでもない結果になれば「パソコンのリカバリー」をする。
「リカバリー」は買った時と同じ状態になることも知った。
「リカバリー」は今まで保存したものは全部なくなってしまう。
今は練習用の内容なので、特に無くてもいいものなので安心だ。
パソコンて何という素晴らしいマシンなんだろう。
毎日感動の連続だ。この失業中という天から与えられたような暇が幸いした。
人の10倍のパソコン学習をし、人の100倍のパソコントラブルを経験した。
どんな操作をしてトラブっても迷惑かける相手がいない。

熊谷のパソコン技能訓練も終わりに近づいてくる。
終りの頃には講師の助手みたいな立場に立っていた。
休憩時間や昼休みにはいろんな事で私の所に質問に来る。
隣に座っている東北オヤジも私の真似をしながら進んでいる。
東北オヤジも、おそらく他の人よりずっと上達していただろう。
教室の中では中年の2人のオヤジをちょっと尊敬の目で見始めた。
東北オヤジは「パソコンの先生にでもなっちゃえば」という。

あ、そうだ東北オヤジに教えるようにすればいいんだ。
パソコンを知らない中高年世代を相手に教えればいいんだ。
自分のほうが先に勉強したのだからできるはずだ。
簡単なことなら教えられるかもしれない。
同じ中高年世代だからお互いに安心もできるだろう。
だんだんこの訓練終了後の目的が見え始めてきた。

中高年だけを相手にパソコンを教える。それが頭の中にどんどん広がっていく。
でも教え方がわからない。教材はどうする。パソコンやその他の機材はどうする。
場所は、教材は、いつから、どんな方法で。夢のような構想が広がって行く。

また今日も1日考える。今は考えることが仕事になっている。
考える時間も十分ある。考えながら眠ってしまうこともちょくちょくあった。
考えることと休んでいることは傍から見れば同じに見える。
眼をつぶって考えている姿は居眠りと同じだ。少し後ろめたい気がする。
またその続きを考える。また居眠りをするの繰り返しだ。

日曜日の求人広告の中に「パソコンインストラクター募集」をよく目にする。
これだ、インストラクターになってみれば教え方や周辺機材もわかるはずだ。
求人広告にはだいたい「30歳までのパソコンの有資格者」となっている。
私は50歳の無資格者。また壁にぶつかる。解決方法がないかどうか考える。



パソコンの試験資格に[MOUS]という資格試験がある。(現在はMOS)
この試験勉強の為にパソコン教室に通うと、セットで20~30万位かかりそうだ。
この時期に無駄な出費はできない。
暇にまかせて勉強すれば[MOUS試験」は何とかなるだろう。
時間は余るほどある。人の十倍勉強すれば受かるだろう。
資格があったほうがかっこいい。でも30歳迄という年齢の壁はどうにもならない。
これについても居眠りをしながら考えた。考えれば何か一つでも前に進む。
大きなヒントが浮かんだ。そしてある大手のパソコン教室に入ることができた。

その方法とは・・・
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