第34話 新しいパソコン教室の環境

文字数 1,299文字

2001年 7月上旬
年配の方だけを対象にした教室にする。
実務よりも好奇心を満足させる。私の下手なダジャレで笑わせる。
こんな方針やっていくつもりでいる。多少の茶目っ気なら地でできるだろう。
昔から変わり者と評判だった。天然ボケと言われたこともある。
その性格も利用する。とにかく楽しい教室にしてみたい。



新しい教室となる店舗は川越街道に面している。
駐車場はスペースが10台分ある。
駐車場の西側脇には小さな花壇があり、そこには10本の金木犀の木が立っている。
隣は白い壁を隔てて不動産会社。西側はガラス窓で外には2階建ての民家が見える。
南側のガラスの入り口は道路を走る車から中がよく見える。
北側の裏口は空き地となっている。環境としては申し分のない所だ。
もう失敗するなんていう不安は頭から消えている。

人の思いは現実の形になって変わっていく。今ここに現実がある。
こんないい環境の中にも多少気になることはある。
西側の窓ガラスは、2階建ての民家の陰になり陽が当たらないこと。
真上の2階には英語教室があり、子供たちの飛び廻る足音がドンドンすること。
この建物全体が少し色あせているかなという程度のものだ。

2001年9月の創業当時、桶川市のこの近辺にはパソコン教室が8件あった。
みんなテレビや新聞で宣伝している有名なパソコン教室ばかりだった。
不思議な事にこれらの気になる事も創業後2~3年で全部解決してしまった。
なにか見えない力が働いているような気がする。

パソコン教室開業の翌年から周囲の環境が変化してきた。
建物の全面改修工事で建物は壁も屋根も新しくなった。
駐車場の金木犀の木はすべて伐採され、見通しのよい明るい教室となった。
2階の英語教室が下に移転し子供の飛び廻る騒音はなくなった。
西側の民家は取り壊され空き地となった。
今は教室の西の窓には眩しいくらいの陽が差し込んできている。
8件あったパソコン教室はポツリポツリ廃業していった。
現在、教室の周囲には同業者はいない。
一つ一つはそれなりの理由があるだろうが、私には見えない存在の力を感じた。

今、教室内には昨日組み立てた8台の机と椅子が並んでいる。
秋葉原で注文した各種の商品が朝10時ごろから配送されてきている。
大きなダンボールで部屋中がかなりの量になった。
12時ごろ下田先輩からの電話が鳴った。

「荷物は届きましたか?」
「あと2~3点で揃います」
「じゃあ、ぼちぼち出かけます」
「できるだけ荷物を出しておきます」
「わからないものは、いじらないでくださいね」
「はい、じゃあ 昼飯の弁当でも用意しておきましょうか」
「いや、なにか適当に食べていきます」

下田先輩は好き嫌いがあり聞いてからじゃないと用意できない。
下田先輩は仲間のホームページの制作を手伝っている。
夜中に作業しているため起きるのは昼頃になる。

ダンボールから荷物を出し終わると、何もすることがなくなり少し眠くなってきた。
ダンボールの横でうとうとと居眠りをした。
部屋いっぱいのパソコン部品に囲まれて、幸せいっぱいな気分になってきた。

午後1時
下田先輩が黒塗りの車に乗ってやってきた。
新しい人生の道先案内人だ。本当に大きく見える。
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