第32話 秋葉原でパソコン部品購入

文字数 1,608文字

秋葉原にパソコン部品を買いに行く。
6月下旬の日曜日に秋葉原に行くことが決まった。

ワードから始まりエクセルへとテキスト作成作業が進んできた。
残すところインターネットとそれぞれの練習問題作成へ進む。
まだそのあとには受講案内書や入会申込書予約表、チケット、帳票類。
まだまだ、細かいことを含めるとかなりの作業量になる。
開校日はまだ決めていない。まだ先が見えない。
ただいつまでも収入のないままではいられない。
漠然と今年の9月の開校にしようとは決めている。
準備作業が具体的になってくるほど不安が増してくる。

今まで言われた言葉が頭の中を駆け巡る。本当にできるんだろうかと不安になる。
「できるわけがないよ」
「失敗してつぶれるのが落ちだよ」
「夢みたいなこと考えるなよ」
「まじめに仕事を探せよ」

断食のときに30日間食べなければ死ぬんじゃないかと思った。
でも飛び込んでみたら意外な結果で別世界だった。
今も同じ、飛び込んで見なけりゃわからない。そう思って進むしかない。
自分の未来は自分の心の中にしかない。今できることを徹底的に進んでいくだけだ。
必ず新しい展開が見えるはずだ。
断食のときにも苦しい坂道を辿り着くと、奈良の町や大和三山が展望できた。
自分の気持ちを断食道場の時の辛さと比較して闘志を継続させた。

日曜日 朝9時ごろ下田さんが車で迎えに来た。
秋葉原にパソコン部品を買いに行く。薄汚れた財布に100万用意した。
今まで100万も財布に入れたことはなかった。
分厚くて入りきれないかと思ったが意外と薄かった。
「僕がよく行く電気屋がありますから、そこにいってみますね」
「よろしくおねがいします」

車の中で会話は少なかったがお互いの家庭や環境のことを話した。
下田さんのお父さんが何年か前に49歳で亡くなったことを話してくれた。
新しいお父さんが来て一人いた妹が家を出て行ったことも聞いた。
今はお母さんと二人で暮らしていることも話してくれた。
新しいお父さんは1週間に1回くらい顔を出すようだ。
「僕はお父さんと呼んでいません」
今の境遇をぽつりぽつりと話してくれた。
下田先輩を娘の婿になってもらおうかなと思った。
だけど一生頭が上がらなくなりそうな気がして、その思いは心の中へしまいこんだ。

1時間くらいで秋葉原に到着し車を大きな駐車場に預けた。
下田先輩の後をついていく。路地裏のパソコン部品屋さんを何件も歩く。


特にメモしているわけでもなく次から次へといろんな店を回る。
午前中は必要なものが、どこで安く売っているかの情報収集のようだ。
私は後ろをついて歩くだけ。お父さんに連れられて歩く子供のような感じがした。
25歳の父と50歳の息子。ちょっと変。でも現実だ。

「お昼でも食べましょうか」と下田先輩が声をかけてくれた。
「そうですね」
「僕の知っている店があるからそこにしましょう」
「お願いします」
そこは駅の近くの立ち食いのお店だった。
ラーメン、カレー、焼きそばなどみんな立ちながら急いで食べている。
私は前職で浅草橋の会社に勤めていたのでこの辺は結構知っている
何軒かうまい料理屋は知っているが、今日は下田先輩の言うとおりにする。

「カレーと、焼きそばお願いします」下田先輩がお金を払ってくれた。
私はカレーを食べた。下田先輩は焼きそばの中のモヤシをはずして食べている。
「モヤシは苦手なんですか?」
「ええ、歯に詰まるので・・・・」
「ああそうですか・・・?」
「これから、色々買うんですね」
「そうですねさっき大体見ておきましたから」

いつもだが下田先輩がメモを取ったのを見たことがない。
頭の中で全部整理されているようだ。
下田さんは大学を出ていないと言っていたが、自分より頭の構造は数段上のようだ。
午後からはパソコンを組み立てるための部品を買い集める。


今日がパソコン教室開業の夢が現実に変わる第一歩となった。
だんだん不安が消えていく。これからどんな機材を買うのか楽しみになってきた。
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