第4話 悪戦苦闘のパソコン学習

文字数 1,302文字


2000年1月28日 
家に帰り、パソコンの梱包を解き部屋中いっぱいに並べた。
説明書を見ながら悪戦苦闘しやっと机の上に配置した。
電機物は一つ間違うと爆発しやしないかと心配になる。
スイッチを入れる。2~3分経過しても画面が黒いまま何も出てこない。
そのうち画面が動き出し色々なメッセージが出てきた。またしばらく待つ。
いよいよ教室のパソコンと同じような画面になってきた。
これで復習ができる。目の前に自分の将来が開けてきたような気がした。

その日から朝6時から夜8時までの14時間をパソコンの学習をすることにした。
1日14時間を失業給付期間の300日間続ければ4200時間になる。
他の人の10年分をこの失業期間中にやってしまおうと思った。
教室への行き帰りの電車の中では、キーボードの指の配置を想像し手を動かした。

夢中になってパソコンを学習することで家族からも嫌われずにすんだ。
失業中の無力感もなく、毎日が充実していたような気がしていた。
パソコンを購入後は朝から晩までパソコンの前にいた。
まずは早く打てるようになるためにタイピングソフトを買ってきた。
「明日のジョー」「特打ち」「ゾンビ」を購入した。
早く打てるようになれば学習が早く進む。失業中なので時間はいくらでもある。
人差し指でポツンポツンと打っていたのでは仕事にならない。


朝6時に起床しパソコンを開きタイピングソフトを開始する。
8時になると熊谷のパソコン教室に出かける。
5時に家に帰りまた夜の12時までタイピングソフトをする。
朝から晩までパソコンで早打ちゲームをしている。
学習を含めパソコンの前に1日14時間だ。それがもう2ヶ月続いている。
家族からは失業中にゲームばっかりしていると見られていた。
ゲームは面白いので時間を忘れる。10分で2000文字まで打てるようになった。
これがパソコン教室のすべての教材を自分で作成する事につながった。

ゲームに明け暮れる自分の姿が後ろめたい。
自分でもこのゲームが将来に本当に役に立つのかと疑問になってきた。
職業訓練を受けている期間中は就職活動をしなくても失業手当はもらえる。
「好きでゲームをしているわけじゃないよ」と自分自身に言い訳をする。
「早く打てなければ学習が進まないんだよ」と言っても言い訳になる。
家族から見ればゲームに明け暮れている姿を見れば心配だろう。
ゲームだけで2ヶ月続けば誰だって心配し始める。
それで凹んでいては目的が達成できない。もうこっちは大石内蔵助の心境だ。
テキストを暗記しタイピングが早くなれば当然学習速度は速くなってくる。
自分でもびっくりするほどメキメキ上達していくのがわかった。
学校でする質問も的を射た質問になってきた。
みんなの聞きたいことを質問できるようになって来ていた。
もう私の質問を冷たい目で見る人がなくなってきた。

回りからも色々を聞かれるようになってきた。
先生も私の質問には即答できないものが出てきた。
「その件は次までに調べておきます」という回答が多くなってきた。
東北オヤジは「そんなにがんばってパソコンの先生にでもなるつもり」と冷やかす。

この言葉があとで自分の将来の職業の選択肢の一つになった。
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