第28話 予期しない協力者が

文字数 1,099文字

2001年 5月
長年勤めた会社を退職してから約1年半が経つ。
その1年半でめまぐるしい変遷があった。
今はパソコン教室設立の事業計画に入っている。


毎日孤独な作業を繰り返している。
思いついた事をパソコンの画面に叩き込んでいく。
それを分類する事でだんだん教室のあるべき姿が見えてくる。

そんなある日、鴻巣教室時代の金部先生から突然電話がかかってきた。
鴻巣のパソコン教室で、おばちゃん先生とともに忙しい毎日を送っているはずだ。
金部先生は現在62歳。前歴がシステムエンジニアでかなりパソコンに詳しい。

「早川さん、もう俺あそこへ行かないよ」
かなり興奮している。
「あの校長とは一緒に、仕事できないよ」
「どうしたんですか?」
「金部先生、もう無理じゃないですかというんだよ」
「え、どうして?」
「生徒の隣で椅子に座って教えていたら、校長に呼ばれたんだよ」
「椅子に座ってただけで? 誰だってやっていることですけどね」
「もうお年ですかねって、立って教えられませんかと校長に言われたんだよ」
「ときどき私もやっていましたよ」
「カアッときて、弁当も途中で飛び出してきたよ」
「冷静な金部先生らしくないですよ」
「生徒も以前の半分以下で暇なんだよ。人が少ないから立ち回る必要がないんだよ」

不満が貯まっているようだ。すでにおばちゃん先生一人で十分な生徒数のようだ。
今度は金部先生を追い出しにかかっている。
午後1時、近くのレストランで会うことにした。
「もったいないですよ、金部先生はファンがだいぶいるんじゃないですか」
「あの校長が、いちいちやることに口を出してくるんだよ」
「あの校長やりづらいでしょう。わかりますよ」
「早川さん、俺もそっちで一緒にできないかなあ」
桶川で教室をやるということを下田さんから多少は聞いているようだ。
「まだ、やるかどうかわからないんです」
現在の状況を正直に話した。
「いつでもいいから、始めるときは、仲間に入れてください」

あれ、そうすると。
鴻巣のパソコン教室の主要メンバーがみんなこっちに来てしまう事になる。
オーナーや石岡校長に校長にばれたら大変だ。
「金部先生。はっきりするまで、今のままで、いてくれませんか」
「・・・・・・・そうですか、もう教室には帰りづらいな」
「また、連絡しますから定期的に会いませんか」
そのあとしばらく愚痴を聞いていた。
「必ずこっちの進行状況を話しますよ」
やっと気持ちを落ちつかせて電話を切った。

だんだんメンバーが揃ってくる。不思議な感覚に襲われる。
吸い込まれるように必要な人が集まってくる。
無給の研修生として鴻巣教室に入ってからまだ1年も経っていない。
人材がぐんぐんこっちに引き寄せられている。
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