第30話 事件について と パリの日本人

文字数 1,108文字

 都会が危険か田舎の方が安全かは一概では測れない。こんな怖いことがあったのも運としか言えない。どこに住んでいてもやはり危険なことはあるし、それには自分の努力で回避できない問題もある。
 フランスから帰国したとき、中東でボランティアをしていた人が捉えられて、解放された事件があった。背景に何があったかはわからないが「自己責任」という言葉が声高に叫ばれていた。自己責任という言葉に置いて、他人を責めているのを見て、私は悲しくなった。
 日本政府が何をしてくれたのかは分からない。ただ悪意を持って海外に出たわけではない三人をそこまで責めなくてはいけないのだろうか。怖い目にもあったと思う。無事に帰ってきてよかったねという言葉より、三人を責める声の方が大きかった。
 そこは心から残念に思う。海外で事件に巻き込まれた人に、あるいは国内でも、一定数の人間が「そんな時間に」とか「そんな格好で」とか責める人がいる。事件に巻き込まれたというだけで相当辛い思いをしているのだから、そんな言葉をかける気持ちの方が悪意を感じる。もちろん事件を未然に防ぐために要因を探すのは悪いことじゃないが、被害者にかける言葉は気遣いだけで十分じゃないだろうか、と思う。

 話はそれてしまったけれど、事件や事故に合うのは百パーセントではないが、運というものがかなり大きい要素だと思う。あの日、あの時、あの場所にいなければ…。

 その事件も真昼間の駅前で起こった事件だった。
 精神を病んだ男の事件だったらしい。

 私は無事だったが、そういうことがあると、陰鬱な気分になって、早くこの街から出て行こうと思った。今の語学学校が終わったら、パリに移る予定だったので、部屋探しを始めることにした。

 日本人留学サポートの人に「部屋がないか」ととりあえず電話してみたが、そう簡単には見つからない。見つからないが、「もう決まってるかもしれないけど、電話してみて」という電話番号をもらった。
(確実に既に決まっている)とわかっているけれど、私は電話をかけてみた。

 日本人の人が出て、やはり部屋が決まっているという。そしてついでに空き部屋の情報を聞いてみたが、もちろんそんなものは持っていないと言う。しかしその電話の人は深井さん(仮名)と言って、とても親切な人だった。
「パリに来るなら、うちで泊まったらいいよ」と言ってくれた。
 会ったこともない、初めての電話だけで、私を信用してもらったのは初めての経験だった。
 私はホテルをとって部屋を探す予定だったので、本当に助かった。これから週末のパリの部屋探しが始まる。

 パリの日本人は本当に親切であれこれ助けてもらった。ありがとうございます。







 



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