第86話 スペインでお買い物…できず

文字数 1,305文字

 そしてマドリードに行ったのなら、ついでにバルセロナに行こうと思っていた。ピカソ美術館があるのだ。そしてガウディの建築物。サグラダファミリアもある。
 バルセロナはそんなに治安が悪くないと聞いていたが、ピカソ美術館への小道で、注射器が捨てられていた。一体、それが何の注射器かは分からないが、パリではあまり見かけない風景だ。

 サグラダファミリアはまだ建設中で、私が小さい頃から、私が生きているうちには建設不可能と言われていた。中に入らずに外から眺めた。完成を目にするのは来世だろうか…。
 ガウディは不思議な建築である。建物なのに、まるで植物のような流線、スペインの眩しい太陽を反映したかのような鮮やかなタイル、ステンドグラスなどで作られている。
 建物がまるで生き物のように見える。独特な世界観。どうして今、それを他の人が作らないのか、とても不思議だ。ガウディ建築のホテルに泊まってみたかった。いいお値段がするのだろうけれど、予約でいっぱいだ。

 宿も決めずにバルセロナに来た。バルセロナは観光地だったので、安宿というものがあまりなかった。結局、綺麗目のホテルに泊まることにした。

 Mさんはバルセロナで生ハムを買うと言っていた。それも一本、丸ごと買うと言う。
「え? 本当に?」
「だって、スペインで買う方が安いから」と言う。
 それはそうかもしれないが、そんなに生ハムを食べるのだろうか。ということで、市場に向かった。いろんなものが売られている。もちろん生ハムも。
 確かに一つ75ユーロくらいだった。(記憶違いかもしれないけど)

「これ…本当に持って帰るの?」
 重そうだし、匂いもしそうだ。
「うぅぅぅ。確かに…重そう」
 かなり本気で買いたかったみたいだが、重さとそれを運ぶことが難しくて断念していた。
「あーあ。生ハム欲しい」と最後まで言っていた。
 見た目は可愛らしいピアニストMさんが心の底から生ハムを欲していたので、なんだかおかしかった。まぁ、美味しいけど、一本は流石に塩分取りすぎでは…と思いながら、市場を後にした。

 そして買い物といえば、私はシビラが好きだったので、スペインといえば、シビラ本店に行ってみたかった。(確かマドリードだったはず)
 シビラもデザインが植物的な曲線で、色は少し燻んだ色合いのものもあれば、原色もある。日本ではイトキンが展開しているが、まぁまぁお高い。スペインだと安いかもしれない、と思って、喜んでお店に入った。お店も素敵な雰囲気で、テンションが上がる。しかし値段を見て、驚いた。
 セールになっていたスカートが七万円を超えている。セール品以外は十万円を軽く超えていた。
(シビラは日本の方が安い…)
 せっかく本店に行ったものの、何も買えなかった。しかしお店の雰囲気は本当に素敵だった。スペインではシビラは超高級ブティックだったのだ。
 でも本当に素敵なブティックだったので、値段も分からないままだったからそれはそれで、臆せず入れただけでもよかった。本当に綺麗なお店だった。

 そんなわけで、二人ともお目当てのものが買えない旅行ではあった。

 しかしスペインは美味しい。次回はスペインの美味しいもの編。
 










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