第72話 フランスのお菓子でございます

文字数 1,436文字

 フランスのお菓子は甘い。どストレートに甘い。パリでアンジェリーナのモンブランというのが有名だというので、食べてみようと思った。本店は混むと書いていたので、ギャラリーラファイエットのカフェで当時は食べれた。
 モンブランが驚くほどの大きさで、甘そうに見えたので、コーヒーにしたが、年配のお婆さまはそれにさらに甘そうなショコラショ(ホットチョコレート)を食べていた。
 甘さと甘さのガチンコ勝負だ。この甘さに初心者は耐えられない。大抵は白旗をあげる。こんな甘いものをあの大きさ…まさにモンブランを制覇するには並々ならぬ気合が必要だ。美味しいのだが、甘いのだ。
 日本のどら焼きとどっちが甘いのだろう。しかし大きさでモンブランの勝ちか…。アンジェリーナのモンブランを食べ終わると、お腹というより、胸がいっぱいになる。クリームと甘さで。私はまだ初心者なので、そこにコーヒーで収める。しかし上級者はさらなる甘味ショコラショとのマリアージュの向こう側に宇宙を感じるのだ。私はいまだにそこまでの境地には達していない。

 しかし恐ろしいもので、半年もフランスにいれば、いつしかあのモンブランが胸に迫ることはなく、きちんと胃の中に収納されてしまうようになる。
 なんなら、美味しいと思いながら、峠を越え、モンブランを制覇できるのだ。

 ケーキを選ぶとき「甘くないやつ、甘くないやつ」と心の中で唱えるが、その魔法は全く効果が現れない。
 だって、フランスのケーキは全て甘いのだから。
 私は日本こそ、美味しいケーキ大国ではないか、と当時思った。あの牛乳感たっぷりの甘さ控えめの生クリームが恋しかった。

 ウィークエンドというレモンケーキがある。これがレモン風味のグレーズがかかっているのだが、酸っぱいのと甘いのが極端で、それを中のスポンジが中和する。
 日本だった、もうお互いにいい塩梅でほんのりレモンの爽やかな酸味と甘味になるはずだが、どちらもガチンコで味をぶつけてくる。
 最初は「こない喧嘩するような味でのうても…」と眉をしかめているうちに、慣れて、甘味耐性がついてくるのだ。
 私は甘酸っぱさが止まらないウィークエンドが好きになってしまった。

 そしてマカロン。ラデュレのマカロンはとてつもなく大きい。しかしこればっかりは私の中では「日本の最中=フランスのマカロン」である。
 なんか、皮に包まれた甘いやつ、という認識で、マカロンにあまりときめかない。もちろん見た目は本当に可愛いのだけれど、口に入れるとモナカを食べた時と同じような気持ちになる。
「甘い…」

 残念ながらチーズ大国なのに、チーズケーキは食べたことがなかった。多分、あの頃はなかった。(今は知らない)

 後、ババオラムはパンのような生地にラム酒に浸されているのだが、本気のラム酒なので、日本のように「香り付」ではなく、本気で漬け込まれているので、辛い。パンチの効いたお菓子。これは絶対、お子様は無理。しかし酒好きはなぜだか口に運んでしまう不思議な魅力のあるお菓子だ。ちなみに私も好き。

 いろんなお菓子がパリには売られている。どれも相当甘いと思って、トライしていただきたい。最初は胸がつかえるような甘さに倒れそうになるかもしれないけれど、耐性ができて、越えられる日がくる。(いいのか、悪いのかは分からないけれど)

 せっかくのお菓子の国なので、ぜひ甘いもの苦手でなければ、試して欲しい。明日はチョコレートについて。色々思うことがあったので書きます。

 








 







 
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