第77話 警察のお話

文字数 1,617文字

 前回はお腹を酷く壊していて、絵で誤魔化したのですが、(いや、どんな絵を描いていたか、気になると言うことを聞いたので。え? 言ってない? でもほら、絵が描ける、描けるって書いといて…、どんなのかって、文章化するの難しいので載せて見ました。写真まで乗せれてしまうという、素晴らしい、最近のネットエッセイは…)今回は真面目に描きます。

 パリの縦列駐車は前後の車にぶつけて、ぶつけて、隙間を開けて、無理やり停車する…。バンパーとは当てるための部分だから、傷がついたとてそれは気にならない…と言う話を聞いた。(二十年前の話ね)
 もちろん、話だけでなく、本当にぶつけているのを見た。なかなか激しい。ぶつけて、隙間を作る縦列駐車はある意味、難しそうだ。

 ある日、私はセーヌ側付近を歩いていたら、クラクションが激しくなった。そっちの方を見ると、信号が変わってしまった直後に、後ろの車が「行け」と言う意味で鳴らしていた。しかしもう信号は変わってしまっている。前にいた車は後ろの車が激しく鳴らすし、どうやら高級車のようだった。ノロノロと、前の車が出た時、ピピーとけたたましい警笛の音がする。
 本当に運が悪く警察がいたのだった。
(わ、可哀想。あんなにうるさくクラクション鳴らしてた人はどうするんだろう)と思って、見ていた。
 警笛を鳴らされた運転手は本当に可哀想だったし、それこそ「モンデュ」と言う気持ちだったに違いない。すると、後ろの運転席のドアが開いて、高級車にふさわしいイケメン男性が(パリのイ
ケメンは…以下略)出て来て、警察に「私のせいだ」と言っていた。
 まぁ、確かにあんたのせいなんだけど。逃げなかったのはすごいな、と思った。
 しかし警察がそれに取り合うことはなかった。なんと言う不幸…、とその運転手に同情した。
(ちなみに、それから約十年後に私も後ろからクラクションを鳴らされて、黄色信号から赤に変わった時に出てしまい、警察に止められると言う同じことをしたが、後ろの人は信号が変わったら、さっさと発進して行った)
 だから警察が取り合いはしなかっただろうが、そのやり取りを見て、少し、人間味があったな、と思っていた。

 後、地下鉄で花を売っている人たちがたまにいた。どこからか仕入れて、地下鉄の道で商売をしているが、もちろん違法だ。違法だけれど、お安い値段で売られている。
 フランス人はコンビニでケーキを買うように気軽に花を買って帰るので、地下鉄で売られていたら、間違いなく便利じゃないかと思う。
 ある日、私はその花を買おうと、一度は通り過ぎたものの、また戻った。その時、丁度、警察に摘発されていた。
 売人は捕まり、数人の警官が慌ただしく、違法花屋を片付けていた。
 私はそれを見て、花はどうなってしまうんだろう、と思った。地下鉄で許可なく商売しているのはもちろん違法だが、別に悪い物を売っている訳でもないのに、とちょっとかわいそうに思ってしまう。
 私がじっと見ていたのに気づいた警察が「何?」と聞いたから「お花…買おうと思ったんだけど」と言うと、怒ることもなく、そこの花束を「はい」と渡してくれた。
(知らない男の人に初めて花束をもらった)と言うアホな勘違いは置いておいて、私は喜んでもらって帰った。
 パリの警察はスマートだな、と思った。小さな花束だけれど、家に持って帰って、飾った。
 そういう懐の大きさをフランスで感じて、私は毎日が本当に幸せだった。それは私が外国人で、留学生と言う立場だったからかもしれない。
 でもフランス人は本当に人に親切をしようとする人が多い。お年寄りに席を譲るのも、ドアを次の人のために押さえているのも、フランスで当たり前の行為だった。そこで私も人にできる時は親切にしたい、と思うようになった。
 親切をするのにも勇気が必要な日本とは違って、ごく当たり前に、日常になっているフランスの生活ができて、よかった、と今でも思っている。







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