第65話 フランスと言えばフロマージュ

文字数 1,437文字

 フランス人は食後にチーズとワインを楽しむ時間がある。(あれはなんだろうね…)日本は早飯が推奨されるが、フランス人はゆっくり食事時間を楽しむ。トゥールでは牛小屋の味がするチーズを食べさせられた。ウォッシュタイプというらしく匂いが強烈だ。
 部屋を紹介してくれたMちゃんは好奇心旺盛でいろんなチーズを食べていた。

「これ、シーズンもののチーズ。食べよう」と言って、モンドールというチーズの蓋を開ける。
 そしてウキウキしながら「匂いがきついけど、味は最高らしい」と言っている。私は牛小屋を経験した女。あれ以上のものはない、と思うので、きっと匂いはクリアできるはず…はずだが…、あの体験が軽いトラウマとなっている。
 ウォッシュタイプなので匂いは本当に強い。もちろん牛小屋ほどではないが。味はまろやかなチーズといったところ。
 Mちゃんは「美味しい」と喜んで食べているが、私はやはり匂いが引っかかった。
「…まぁいける」

 またある日はブルーチーズのロックホールを買って来たから「食べよう」というのだ。本当に好奇心旺盛な彼女だ。またまたウキウキと食べようとする。
「わー、美味しい。ほら、食べてみて」と進められる。
「…(見た目よ、見た目)うん」
 よく見れば見るほど、青いもやもやが見える。ザ・カビだ。
 これとフグを初めて食べた人は本当に勇者だ。味は塩気があり匂いもきつくなく、美味しいのだが、これは私の妄想力が本当に働き過ぎているせいか、埃っぽいカビの味がする(気がする)。でも味は美味しい。これをぐるぐるハチミツと混ぜると美味しいらしい。

 コンテというハードタイプのチーズは旨味もあり、塩加減もよく美味しかった。多分癖もなく誰でも食べられるはず。

 カマンベールの上位機種? と教えられたブリドモーもMちゃんが嬉々として教えてくれた。まぁ、カマンベールなのだから食べやすく、僅かに癖があるかな? 程度のものである。

 さて、私のフロマージュは微妙な話をつらつら書いたが、ここで贅沢食いだが、とっておきの食べ方を記そう。
 それはトゥールの学食で見た食べ方だ。トゥール大学の学食は前菜、メイン料理、チーズか、デザートを選べる。そのチーズはカマンベールだったのだが、私はいつもデザートを選んでいた。
 ある日、カマンベールを食べているフランス人の食べ方に驚いた。彼女は白いカビ部分を切って、中のトロトロのところだけをパンに塗って食べたのだ。
 翌日、真似したのは言うまでもない。ただし、貧乏学生だったので、皮の部分はそれだけで別に食べた。でも中身だけをパンに塗って食べると、嫌なところが全くなくなるチーズパンの出来上がり。ぜひチーズが苦手な方はお試しくださいませ。

 フランスにはチーズ専門店がある。チーズはカビでできていて…なんというか、腐るという概念がわからなかった。もうカビが生えているのだから、消費期間とかあるのだろうか。いや、あるか…。
 ある日、専門店で消費期限を聞いた。
「イルニヤパ リミテ(期限はないわよ)」と言われた。
 衝撃だったけれど、想像していた答えでもあった。そして遊びに来ていた環にそう言う事言われた、と言うと「フランス人だもんなぁ」と彼女もまた納得していた。

 美味しく食べるにはきちんと保存方法を確かめて、ちゃんと保存したら保存食になるのかな? いやでもなかなか怖いな…と思いつつ。なるべく早めに食べました、とさ。

 私にとってフランスのチーズはなんだかおっかなびっくりな体験だった。







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