第5話 学校初日

文字数 1,029文字


 最悪な初めまして、で始まり、「晩御飯食べてないの?」のマダムの一声に頷いたが、晩御飯は料金に入ってないのか…そう言えば分からないのだけれど、なんとか私の分もくれて、早々にシャワーを浴びて、寝ることにした。

 翌朝、マダムに起こされた。

 外国で、人の家でぐっすり眠れたのは雨戸が閉まって暗かったからだ。もちろん昨日の疲れもある。朝は簡単なご飯を頂き、準備をして、初日だけ車で学校まで送ってくれた。後はバス通学になる。

 学校には多国籍の人が集まっていて、最初にテストを受け、クラス分けをする。ここでいい点を取る必要はない。自分の実力に応じたクラスに入れられるだけなので、ありのままの実力で向かえばいいから、気が楽だった。

 説明会には日本人もいたが、明かに目を引く国籍不明な女性がいた。白人の人と楽しそうに喋っていて、目鼻立ちもクッキリしていて、なぜか私はその人に惹かれた。
 でも会うことはないだろうな、と思いつつ、分けられたクラスに行くと、その人がいた。

 そしてまさかの日本人だった。ペラペラ喋っていたのは英語だそうで、アメリカで働いていたらしく、生き生きとした女性、恭子さんだった。

 初級から二番目のクラスで日本人が四人、イタリア人も二人、スイス人一人、スペイン人一人、アメリカ人三人くらいだった。(正確な数は記憶にないけど)

 フランス人はHを発音しない。そしてR音が全然違う。らりるれろの音はRA=は RI=ひ RU=ふ  RE=へ RO=ほ に近い音になる。
 
 クラスに「ひろみ」さんがいた。彼女は「いほみ」または「いおみ」と呼ばれて、呼ばれたことも分からない。私も「はらだ」だったので「あはだ」になった。

 そんなこんなで、クラスの学習が始まったのだが、日本の文化を教えてくださいというので、その「ひろみ」さんが「畳、布団、ゴエモンバス(五右衛門風呂)」といきなり日本語をぶちかましてきた。
 それを初級フランス語で説明するの難しいって。
「朝ごはんは魚を食べます」と言うとフランス人の先生は「朝から」と驚いていた。
「味噌スープ、卵焼き、魚、ご飯」と伝統的日本食を紹介すると、フランス人にはコース料理に思えたらしく、「朝から…それは多すぎる」と真剣に驚いていたが、それを訂正するには初級フランス語では不可能だった。

 フランス語ができなくても、ひろみさんのナイスチャレンジのおかげで楽しく授業ができた。
 みんな明るくて、先生も気さくな女性で楽しいクラスだった。








 







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