第87話 スペインは美味しい

文字数 1,409文字

 スペインは日本人のお口に合うと思う。何よりお米を食べるし、魚も食べる。

 私が好きなのはイカ墨のパエリアだ。向こうでは「アロア ネグロ」という。アロアがお米で、ネグロが黒いという意味で、シンプルにイカ墨の黒いパエリアなんだけれど、それにマヨネーズにニンニクを加えたアリオリソースがまた旨味を増す。バルセロナの海沿いの観光地レストランで食べたものですら、美味しかった。大体観光地はそんなに美味しいものに当たらないのだが。そこでサングリアを頼んだけれど、その作り方が、大雑把だった。缶詰のミックスフルーツを氷入りカラフにどばーと液ごと注ぎ、そこに赤ワインをじゃぼじゃぼーと入れて、おしまいだった。それなのに、おいしかったから、そんなもんでいいんだろうな、と思った。

 ニンニクがよく聞いている料理が多いし、海鮮も豊富なので、絶対、日本人にはお口に合うはず。ヨーロッパで一番合うのではないか、と思う。ポルトガルも同じようなものらしいが、行ったことがない。

 アリオリソースはマヨネーズにチューブのニンニクをぶち込んで混ぜるだけで出来上がる。イカ墨のパエリアにもいいが、それでポテトサラダを作ってもまた美味しい。本当にシンプルな味付けなのに、美味しい。凝ったソースとかフランスとは違って、バターではなくオリーブオイルなので、さっぱりしているし、何よりお米を食べると言うのが一番日本人的には嬉しい。

 後、イカの唐揚げとか、本当にシンプルで、馴染みのあるものが多い。
 
 だたマドリードでオープンエアなカフェで注文した時、うっかり「シルブプレ」とフランス語を言ってしまい、店員の女性を激おこさせてしまった記憶がある。
「スペインに来てるのに、フランス語を使うな」と言われた。
(うううう。フランス語が入ると、英語が出て行ってしまったと言う私に、フランス語を禁止されて、何で説明したらいいっちゅうねん。日本語でええんかい?)
 うっかりやんか。
「ポルファボール」がお願いしますのスペイン語。
「ペルファボーレ」がお願いしますのイタリア語。
「シルブプレ」がお願いしますのフランス語。
 覚えて行ったはずなのに、うっかり出て、かなり激おこされてしまった。男性店員が「どうした?」と聞くほど、怒らせてしまった。
 私、フランスに留学してるからうっかり出ました、というスペイン語は分からない。もちろん翻訳機なんてないし、スマホも存在していない。
 そこで、激おこ店員によるスペイン語レッスンが始まった。
「カラマル フリドゥ ポルファボーレ」
(イカの唐揚げ ください) 
 を練習させられた。

 スペイン語はRが舌を巻くので、私はできないが、基本的に日本語と同じ母音は五個しかないので、発音は難しくない。
 しかし激おこなのにレッスンまでするというスペインは情熱の国。そりゃ、そんなことで怒ってたら、チュロスの店でも口論が始まるよな…と思いつつ、美味しいイカの唐揚げを頂きました。

 私は食べ物にものすごく興味があるので、なるべく現地の言葉を覚えたいと思うのだが、それの最たるものがタイ語。タイの屋台のものが食べたくて、ちょっとタイ語が(食べるシーンだけ)できるようになった。

 美味しいものを食べたくて、言葉を覚える。激おこされながらも、習得したスペイン語。スペイン語とイタリア語は本当に似てるから、通じ合えるんじゃないかな? なんて思ったりしてるんだけど。どうだろう。









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