第42話 さよならメキヒコ

文字数 1,400文字

 同じ部屋にホームステイしているメキシコガール二人が先に帰ることになっていたのだけれど、部屋は一向に片付いておらず…。ついにお別れ会をする日になった。そして翌日二人は帰国の途に着くのだが…。
(いや、これ、帰国できるのか?)と思いながら横目で眺める。
 お別れ会は近くのバーでするらしいのだが、店は「決まっていない」らしい。さすがメキシコ。時間は夜の七時らしいが、主役の彼女たちは時間には無理だろうと思う。
 私は時間になったから、一応、声をかけたが
「無理に決まってるでしょう」と彼女たちは言った。
 待ち合わせ場所は家のすぐ裏だったので、ちょっと様子を見に行ったが、誰も集まっていなかった。
(時間…決める意味あるのか?)
 そんなこんなでちょくちょく見に行ったが、九時まで誰もいなかった。日本人から連絡があって、「一緒に飲まない?」と言われたが、「ホームステイのメキシコ人のお別れパーティなんだけど…でも誰も来ないしなぁ」と言うことで、メキシコ人はきっと、日本人が増えようが、気にしないだろう、と思って、メキシコお別れパーティだか、ただの日本人の飲み会だかになった。
 ちなみに九時半頃にたった一人だけメキシコ人が震えながら待っていた。メキシコ人は寒さに弱いらしく、イヤーカバーして震えていた。
「お店…知ってる?」と私が聞くと、その子も知らないと言う。
 しばらくして二、三人のメキシコ人が来たから、お店を聞いたら「寒いし、あそこにいつも集まるから」と言って、お店に入った。
 みんなが揃うまでここで飲んでいようということらしい。日本人にも連絡するとすぐに来た。
 結局十一時くらいにメキシコ人が集まり始めて、明日帰国する二人は十一時半だった。そして謎に日本人が増えているが、全く気にしないどころか、聞かれもしなかった。
 送別会だが各々好きなことをやっているようだった。結局トゥールに一軒だけあるディスコテークに行く。
 もう何が何だか分からないが、かなりアバウトな感じでお別れ会という名目の夜遊びだった。
 当時はスマホもないから容易に時間を潰すことはできない。それなのに適当な待ち合わせでよく待ち合わせられるなぁ、と感心した。
 まぁ、ほぼ待たない待ち合わせだったけれど。
 私は彼らの適当さは全く気にならなかった。そしてメキシコ人は本当にダンスが日常になっていて、ちょっとでも音楽が聞こえたら、すぐに体でリズムを取る。それが素晴らしく上手なのだ。

 付き合いもあっさりしてるし、でも情があるし…歌とダンス、楽しいことが大好きで、本当に一緒にいるのが楽で、楽しかった。映画もよく見た。一緒にタイタニックを部屋で見て、アメリープーラン、ハリーポッターは映画館に見に行った。
 落ち込んだ時も、楽しい時も、年が上だからだろうけれど、なんでも話してくれたし、語学学校までの短い道のりを一緒に歌ったのも楽しかった。
 翌日、彼女たちは大量の荷物を捨てていいから…と言って、出ていった。マダムはあんなに文句を言っていたのに、最後は送っていった。

 すごいゴミと荷物がそのまま置かれている。その部屋を翌日ハウスキーパーが来て、ものの見事に片付けていた。二人がいなくなって淋しい気がしたけれど、次は私が出ていく番だ。

 メキヒコはフランス語での発音。それにメキヒコ人は「違うー」と怒っていた。
 まぁ、日本も「ジャポン」だから全然違うんだけどね。












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