第37話 パリで部屋探し完結⁉︎

文字数 1,400文字

 手詰まり。

 もうやれることはやった。詐欺師のような住居斡旋者にもあった。これ以上、どうしたらいいのだろう…と日本の本屋さんの掲示板を眺めていると、トゥールの夏期講習で一緒だった日本人に会った。

「久しぶり〜」と声をかけられた。
「久しぶり、元気にしてた?」
「うん、パリに来るの?」
「そうなんだけど、もうどうやっても部屋が見つからない…見つかった? 長期じゃないし、結構難しくて」
「うん。短期でも見つかるよ」
「え? どうやって」
「それはここに貼りにくる人をここで待つ。貼った瞬間に声をかけてみるのよ」
「え? そんなタイミングよく現れるかなぁ」
「絶対現れるから。頑張って」

 もうこれが最後の手段だった。探偵じゃないけど、私は覚悟を決めて本屋で張り込みをすることにした。しかしずっといては迷惑なので、何度も出入りして張り込むことにした。

(こんなんで見つかるんだろうか。…いや、諦めてはだめだ。もうこれしかない)

 そして張り込みしてその日の夕方、男女の日本人が掲示板に貼っている。空き部屋ありの掲示だった。

(ついに来た…)
 震えた。そして私は声をかけた。

「あの…この部屋って」

 突然声をかけられて、相手に驚かれた。それはそうだろうが、こっちは必死だったので、怪しいものではございませんを必死アピールして、どうにかこうにかその部屋を譲ってもらおうと思った。
 しかし貼りにきた人は貸主の友人で、しかも夕方から用事があると言うので夜に電話をお願いするということになった。私は携帯の電話番号を伝えて、そして必ず借りたいのでよろしくお願いしますと言った。

 そして嬉しさのあまり、うっかりしてたので携帯を地下鉄の駅の公衆電話で電話している最中に盗まれてしまった。(ちなみに携帯を持っているのに、なぜ公衆電話からかけているのかというと、プリペイドカードの電話を使っていたので、なるべく携帯では電話をしたくなかった)相手に携帯番号を教えたのに、これでは繋がらない。

 慌てたが、掲示板の紙を持っている。私はその番号に電話をかけて、留守電を残そうとした…。しかし、こちらの電話がなくなってしまい、向こうが折り返すこともできない。
 相変わらず私は親切な深井さんの家に泊まらせてもらっていて、深井さんに話をすると、
「うちの電話番号を教えてもいいよ。折り返しかけてもらったらいいじゃん」と言われた。
 本当にいい人で、深井さんには感謝しかない。
 そう言うわけで電話を盗まれたことと、折り返しは深井さんの電話番号を留守電に入れた。

 そしてその日の晩にとりあえず繋がって、翌日会うことになった。部屋の持ち主はフランス人でそれを借りている人が日本に一時帰国していて、その友人が手続きをするという少しややこしい話だったが、その友人、眞弓ちゃんとは今でも付き合いがある。
 二人ともピアノで留学しているらしい。

 携帯は失ったが、部屋はとりあえず確保できた。でもその部屋は小さな部屋一つで、智子と二人で住むには難しかった。

「とりあえずパリの部屋が見つかったからおめでとう」と言ってくれた。
「パリに来た時は寝泊まりはできるから」と言った。

 実際、智子が一番最初のこの部屋に泊まって、そして広げ方の分からないソファベッドが中途半端に斜めなままだったけれど、そこで快適に寝ていたらしい。

 とりあえず、これで残りのトゥール生活を落ち着いて過ごせそうだった。


 


 










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