第33話 死者の日

文字数 875文字


 語学学校で各国の料理を作って食べようという日があった。クラスの中のそれぞれの国の人たちが自分達で用意して他の国の人たちに紹介するという授業というかお楽しみだ。

 もちろん日本も用意したが、印象的だったのはメキシコだった。

 料理はあまり正直覚えていないが、その飾りが色鮮やかで、そして骸骨だった。蝋燭とご馳走と並んだカラフルな骸骨には目を奪われた。これはお化け屋敷なのか、何なのか…。
 綺麗だけど、怖い。怖いけど、綺麗。

 紙で切り取られた骸骨のガーランドが机にたくさん貼り付けられている。メキシコ人が一番張り切っているようだった。きっとその飾りもトゥールでは買えないだろうから、メキシコから送って貰ったのだと思う。

 骸骨がたくさんの中でのご飯はなんとなく食べ辛かった。

「これは…悲しいの?」

「悲しくないよ」

「メキシコ流、ハロウィン?」

「違う、違う。ハロウィンとは別」

「みんなで集まって、たくさんご馳走を食べながら、亡くなった人のことを思う日だから」

 なるほど、お盆と同じようなことか。お盆でも茄子を馬に見立てたりするけど、骸骨をこんなにカラフルにして飾るなんてさすが陽気なメキシコ人。日本のお盆を見たら、ひっくり返るかもしれない。

「とっても楽しい日だし、大事な日なの」と言うメキシコ人が印象的だった。

 陽気な国のメキシコ人ですら亡くなった人に思いを馳せるんだな…と不思議な気持ちになった。

 そしてカラフルな装飾のインパクトが凄すぎて、結局ご馳走がご飯が何だったのか覚えていない。ナチョスだったかもしれない。

 アメリカ人はほぼ神父の奥さんが用意したらしい、焼き菓子だった。アメリカ特有のご飯と言うのがあまりないらしく、よく作るお菓子を用意してくれた。

 韓国はキンパを作ってきてくれたが、他の国の人が「スシ、スシ」と言うのがちょっとかわいそうだった。そしてそこで初めてキンパを食べた。
「スシじゃなくて、おにぎり?」と言う感想だった。

 各国の料理を食べることで、その国の文化もしれて楽しい授業だった。用意する方は大変だけど。日本はおにぎりと卵焼きだったかな。












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