第79話 おまけエッセイ 海の都の宿探し1

文字数 784文字

 ベネチア宿探しの苦労談。
 え? 今時はネットの予約サイトが充実しているから、ブッキン@ドットコムかエク@ペディアに希望条件入れてサクッと検索すれば簡単だろうって?
 フッ、最初は私もそう思っていましたよ。
 だがしかし! アドリア海の女王、麗しき海上都市ベネチアの宿探しは、他の都市ではあり得ないような困難が待ち受けていたのでした……。

 作者が延々と苦労を語ってもつまらないので、ここは阿梨と勇駿に寸劇風にやってもらいましょう。
 なお、このエッセイは小説本編とは全く関係ありません。
 では、始まり始まり~。

「勇駿、『はねむーん』に行こう!」
 楽し気に声を弾ませる阿梨に、はねむーん? と訊き返す勇駿。
「西洋の習慣だ。結婚式を挙げたら二人で行く旅行のことらしい」
「それは面白そうだな。で、どこへ?」
「そうだな、海の都ベネチアなんてどうだ? 前から一度、行ってみたかったんだ」
「阿梨の行きたい場所でいいよ」
 勇駿は阿梨と一緒なら、どこへ行っても幸福です。
「よし、決まりだ。じゃあ宿を探そう」
 上機嫌でノートパソコンを立ち上げ、予約サイトを調べていく阿梨。
 そして三十分後。勇駿がお茶を持っていくと。
 さっきまでご機嫌だった阿梨のこめかみに青筋が……。すっくと立ち上がり、ノートPCを窓から投げ捨てようとする!
 勇駿はあわててお茶を脇に置き、止めに入る!
「待てっ、落ち着け、阿梨! そのパソコンは水軍の備品だ!」
 さすがは水軍の長、そこではっと冷静になる阿梨。
「いったいどうした?」
 阿梨はパソコンを机に戻すと、椅子にどかっと座って叫びます。
「どうしてベネチアの宿ってのは、数だけはやたらと多いくせに、高くて狭くてボロいんだ !?




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登場人物紹介

阿梨(あり)


羅紗国の王女にして水軍の美しき長。結婚して母となっても、変わらず颯爽と水軍を率いている。

勇駿(ゆうしゅん)


公私共に阿梨を支える夫。阿梨と子供たちをこよなく愛している。

梨華(りか)


双子の妹。母譲りの容姿と武術の才能を持つ。勝気な性格でいつも兄を振り回している。

勇利(ゆうり)


双子の兄。学問には秀でているが、ちょっと気弱。常に妹に押され気味。

勇仁(ゆうじん)


勇駿の父。以前は長の補佐として采配をふるっていたが、今は孫たちの教育がもっぱらの生きがい。

アディーナ姫


タジク国第一王女。二つの国の絆を深めるために海を渡る花嫁。金髪と緑の瞳の、美しく優しい姫君。

寄港地のフローレスでひと時の自由を願う。

ケイン


荒事屋。名の通り、目的のためなら荒っぽい手段も辞さない裏社会の人間だが、殺しはやらないのが信条。

ラルフ


ケインの相棒。孤児だった自分に手を差し伸べてくれたケインに恩義を感じ、行動を共にしている。

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