第13話 出港
文字数 668文字
「姫さま、ここでお別れでございます」
陸路、姫を送ってきた護衛団の長、シクロ将軍が万感の想いをこめていとまを告げる。
アディーナ姫もまた、あふれそうになる涙をこらえて、別れの言葉を口にする。
「今までありがとう、将軍。世話をかけました」
とんでもございません、と首を横に振り、将軍は姫を見つめた。
「道中お気をつけて。どうぞ、おすこやかに……。姫さまのお幸せを心より祈っております」
それから阿梨の方を向いて、
「何とぞ姫さまをお頼み申します」
阿梨は胸にすっと手を当てて頭を下げる。
「では、今この時よりアディーナ姫の御身、わが羅紗水軍がお預かりし、責任をもってサマルディンの出迎えの部隊までお送りいたします」
出発の時刻が近づく。姫の乗る船には、緋色の地に金で獅子の刺繍の入った羅紗の旗と並び、緑の地に白い三日月と星があしらわれたタジクの旗が掲げられる。
「錨を上げよ! 出港する!」
阿梨の宣言で錨が上げられ、船はゆっくりと動き出す。
アディーナ姫は甲板から大きく手を振った。シクロ将軍を初め、タジクから付き添ってくれた者たちの多くとは、ここで別れなければならない。
空は晴れ渡り、順風に恵まれた、船出には絶好の日よりだ。
故郷と人々に別れを惜しむかのように、アディーナ姫は長いこと甲板に立ちつくしていた。
この時、婚礼を阻止すべく二人の男が寄港地に先回りしていることなど、船団では誰ひとり知る者はいなかった。
陸路、姫を送ってきた護衛団の長、シクロ将軍が万感の想いをこめていとまを告げる。
アディーナ姫もまた、あふれそうになる涙をこらえて、別れの言葉を口にする。
「今までありがとう、将軍。世話をかけました」
とんでもございません、と首を横に振り、将軍は姫を見つめた。
「道中お気をつけて。どうぞ、おすこやかに……。姫さまのお幸せを心より祈っております」
それから阿梨の方を向いて、
「何とぞ姫さまをお頼み申します」
阿梨は胸にすっと手を当てて頭を下げる。
「では、今この時よりアディーナ姫の御身、わが羅紗水軍がお預かりし、責任をもってサマルディンの出迎えの部隊までお送りいたします」
出発の時刻が近づく。姫の乗る船には、緋色の地に金で獅子の刺繍の入った羅紗の旗と並び、緑の地に白い三日月と星があしらわれたタジクの旗が掲げられる。
「錨を上げよ! 出港する!」
阿梨の宣言で錨が上げられ、船はゆっくりと動き出す。
アディーナ姫は甲板から大きく手を振った。シクロ将軍を初め、タジクから付き添ってくれた者たちの多くとは、ここで別れなければならない。
空は晴れ渡り、順風に恵まれた、船出には絶好の日よりだ。
故郷と人々に別れを惜しむかのように、アディーナ姫は長いこと甲板に立ちつくしていた。
この時、婚礼を阻止すべく二人の男が寄港地に先回りしていることなど、船団では誰ひとり知る者はいなかった。